【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

文字の大きさ
15 / 616
第一章 異界渡り

015.名前が決まる

しおりを挟む
「けど、家名とか守護名はどーする?」
「あ、そだねー?  セヴィルは覚えてるでしょ?」
「……あ、ああ。だが……本当に20なのか?」
「この子のいた世界じゃ寿命が短すぎるからね。こちらじゃ赤児でも向こうじゃ君達より100年くらい年下じゃないかな?」
「……そうか」

 フィーさんの説明に納得がいったのか、セヴィルさんは姿勢を正して僕らの方へ戻ってきた。
 途中手を広げ、あっと思った時には紙と羽根ペンが出てきて手の中に収まっていた。呪文も何も言わずに魔法って、やっぱり凄いなぁ。
 セヴィルさんは僕の前に立ってから紙に筆を走らせて何か書いていった。

「他はこれだけだったが……」
「どれどれー?」
「んー?」

 先にフィーさんとエディオスさんが覗きにいかれたので僕には見えず。ぴょんぴょん跳んだところで意味がないくらいタッパの差が半端無いもの。

「へぇー?  これねぇ?」

 やけに意味ありげに呟くフィーさんに全員が首を傾げるも、彼はまだぶつぶつと言っている。

「なんか他にも意味あんのか?」
「あー、うん。けどまだ憶測の域だからうまく言えないよ」
「お、おぅ」

 ビシッと指を立てられたフィーさんに、エディオスさんは口をつぐんだ。
 僕も気になったけど、フィーさんの言い方からしてまだ懸念材料が多過ぎるからと伺えたから黙っておく。

「でも、これが家名にはいいんじゃない?  それと、こっちのが守護名にはちょうどいいし」
「……なるほど」

 どうやら名字とかが決まりそうだ。
 セヴィルさんが紙にまた何かを書き込むと、僕の方に屈んできた。

「……読めるか?」

 僕の目の前くらいに、その紙を差し出してくれた。
 一応見てはみるけど……達筆過ぎてかえって読めない。
 ローマ字っぽいが英語とも言えない言語が書き込まれていたために、理解しようにも頭が拒絶してしまう。

「……読めないです」
「……そうか」
「セヴィルの字が綺麗すぎなのもあるんじゃない?  もう少し崩してあげたら?」
「……わかった」

 そう言って書き直してくれたのをまた見せられるがやっぱり読めませんでした。話すには問題なくても、翻訳は無理なのね。

「字は読めねぇのな?」
「しゃべるのは問題なし、か。ひょっとしたら、そこは泉の力かもね」
「泉?」
「えっとねー?」

 一人事情を知らないセヴィルさんに、フィーさんがひと通り話してくれました。
 泉の水の副作用については目を丸くしたが、エディオスさんの登場の仕方には思いっきり眉間に皺を寄せてから片手で彼の頭を殴った。
 今更だけど、この二人ってものすっごく親しいんだよね。けど、王様の部下さんなのに殴るなんていいのかな?   

「勝手に公務を放り出した上に、フィルザス神のところで馳走になっていたのか?」
「フィーからの依頼済ませたんだからいいだろ!」
「討伐依頼だけならばさっさと済ませて帰ってこい!   あれらが苦手なのは俺もだが、帰らせるのにどれほど苦労したことか……」
「無視しときゃいいだろ?」
「そうもいかないのをわかってて言うか」
「まあそこはいいから。セヴィル、カティアの守護名読んであげてよ?」
「……わかった」

 エディオスさんにもう一度睨みつけてから僕の視線に合わせるのに膝を折ってくれた。
 そうして僕の前に名前とかが書かれたらしい紙を見せ、一列に並んでいる箇所をなぞった。

「こちらがカティア。真ん中が守護名と言う守り名に使うものでお前の場合はクロノ。その隣が家名になるゼヴィアークと読むんだ」

 カティア=クロノ=ゼヴィアーク。
 守護名とやらはミドルネームなのかな?
 日本人じゃ馴染みがないからピンとは来ないけども。

(でも、これが僕の新しい名前なんだ!)

 名無し問題が解決してひとまずはほっと出来た。
 他の問題は全然だけど一歩前進だ。

「……そう言えば、俺は自分から名乗っていなかったな?」

 セヴィルさんは紙と羽根ペンをまた何も言わずに消してしまい、僕の前にきちんと跪いた。

「俺はこの国の宰相を務めるセヴィル=ディアス=クレスタイトだ。エディオスや一部の者はゼルと呼ぶから、お前も言い難いようならそうしていい」
「え、あ、でも……セヴィルさんって呼ばせてください」

 同意はしてないけど、婚約者さんだからきちんと名前は呼びたい。
 恥ずかしながらも答えれば、セヴィルさんは少し目を見開いたがすぐに柔らかく目を細めた。

「ああ、よろしくな」
「っ!」

 次第に形作られていく表情に、僕は目が釘付けになってしまった。
 だって無理がある。
 無表情か不機嫌か赤面だったのが、そのどれでもない綺麗な微笑み。
 あまりにも綺麗過ぎて目が離せないのだ。

「……これ夢か?」
「んふふ、これ本当にお似合いだねぇ?」

 横でふざけた物言いをされてるのも耳から素通りするくらい、僕はセヴィルさんから目が離せなかった。絶対今、僕の方が顔真っ赤だ。








 ◆◇◆







「では、また後でな」

 僕の顔の赤みが引いてから、僕らはエディオスさんの執務室を後にした。
 今日はもう遅いのと僕とフィーさんはしばらくお城に滞在してもいいとエディオスさんが提案してくれて、これからご飯をご馳走になることに。
 セヴィルさんはエディオスさんの私室の罠を解除するからと一旦別れることになった。
 マントを翻して颯爽と去っていく様は本当に王子様みたい。役職からどうも違うようだけど。

「んじゃ、行くか?」

 のんきに欠伸されてる方が王様なんだよね。

「食堂は久しぶりだなぁ」
「食堂?」

 行くのは王様が食事をする部屋じゃ?
 フィーさんの言葉におうむ返しで聞けば、彼はくすくす笑い出した。

「エディやセヴィルとかが食事をする部屋があるんだよ。そこを食堂って呼んでるんだ」
「なるほど……」

 とりあえず、歩きながら話すことになりました。

「しばらくは、俺の客人扱いでいいな?」
「そうですね」

 宰相さんの婚約者だって言われても誰も信じないだろうからその方がありがたいです。元の体に戻ったからって受け入れられるかは怪しいがそこは今考えないでおこう。

「けど、まさかあいつが先とはな?   従兄弟の俺より先ってのもちぃっと妬けるぜ」
「いとこ?」
「おう。あいつのお袋さんが親父の妹でな?   って、何間抜け面してんだよ」

 いやならない方がおかしいでしょ!
 王子様みたいと思ってはいたけど、まさかの血縁者⁉︎

「いいいいい、いいいんですか、僕みたいな他所者が婚約者になるなんて!」

 王家云々の血筋なら許嫁さんとかいたっておかしくないはず。
 いくら『みなて』とかどーのこーの事情があったにしたって、周囲が黙ってないだろうに。

「だから、この世界じゃ御名手の方が重要視されんだよ。身分とかそう言うのは関係ねぇな。俺のお袋だって元は商人の娘だぜ?」
「………え?」

 告げられた事実に僕は口をぽかんと開けるしかなかった。

「貴族間同士の差別とかはあんまりないよ?   セヴィルの親はたまたま王家と公爵家との成婚だったけどね」
「じゃあ、仮に僕がいても?」
「仮にじゃなくてほぼ決定なんだけど……まあ、そうだね。特に真名を開示出来たから証拠は揃ってるし、誰も文句言わないと思うよ?」
「どうやって証拠に?」
「僕は記憶を引き出して他者に見せることも出来る。司祭に見せれば……ってしなくても僕自身が証拠になるから言い訳なんてさせないさ」

 たしかに、神様だからそこはどうとでもなるよね。

「それにあいつがあれだけ気に入ってんだ。俺は王としてもだが、個人的にも良いと思ったぜ?   気にすんな」

 そうは言ってもはいそうですかと受け入れ難いのが本音だ。
 だって、彼氏いない歴歳の数。
 それがいきなり婚約者が出来たからってどうすればいいんだろう。
 でも、女子供が苦手らしいセヴィルさんは何も否定的なことは言わなかった。何故?
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

処理中です...