【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

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第一章 異界渡り

026.ピッツァへLETS GO!-①

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 ◆◇◆










「……しかし、こんなにも使われるのですか?」
「皆さんにも食べてもらいたいですし、一枚でそこそこ乗せますからね」

 調理台に乗ったチーズの塊達は圧巻だった。これを今から削らなきゃいけないんだけども、それはコックさん達がやってくれることになりました。
 コックさん達もピッツァに興味津々で、今日のまかないで食べられるのだとわかればすっごくうきうきしてくれている。腱鞘炎にはならないでください。
 ゴーダっぽいこの塊削るのには根気がいるもの。
 昨日のフィーさんのとこで使わせてもらったナチュラルタイプはなかったからしょうがない。それでも、熟成チーズが使えるだけ感謝しなくっちゃ。普段僕とかが使うのでも要冷蔵のシュレッドタイプだしね。
 後、個人的にはモッツアレラっぽいフレッシュチーズが使いたかったけども、クリームチーズもなさそうなこの厨房では断念せざるを得ない。
 さて、時間も限られてるからいよいよ生地作りだ。
 強力粉はたくさんありました。今朝食べたフランスパンっぽい丸パンちゃん用に使われてた粉が別の貯蔵庫にこれまたずらりと。紙袋に入ってたのには驚いたけど、一袋2トンサイズのが並んでる姿はこちらも圧巻。

「どれくらい使われますか?」
「えーっと……皆さんのも合わせるとこの一袋の半分は最低だと思いますね」

 コックさん達は全員で10名くらいだけども、せっかくだから給仕のお兄さん達にも食べてもらえれたらなと思いまして。そっちの人数も聞いたら男女合わせて10名くらいらしい。僕達入れて約30名くらいだけど、一人最低1ピースでいいんだってさ。
 こっちでは急に決まっちゃったし、今日出すまかないの仕込みも準備されちゃってるらしいからね。それでも、エディオスさんやフィーさんがたくさん食べるから多めに用意はしておかないと。
 袋はライガーさんが担いでくれました。見た目優男な感じですがやっぱりそこは男の方ですね。

「それとサルベでしたっけ。僕が探してきますから先に初めててください。カティアちゃん、どれくらい必要かな?」
「そうですね。乾燥してるのと瓶で貯蔵してるので違ってきますが……」
「どっちもあるよ?」
「じゃあ、乾燥してるのでお願いします!」

 生イーストやドライが本当は望ましいけども、もしここで作ることになるなら普通の天然酵母よりも乾燥したのがいいと思うのね。作り置きを先に使うのがローテーションに作られる酵母を使いきるのにもいいし、パンの方にも比較的新しい酵母を使う方がいいからです。
 ライガーさんが取りに行っている間、僕らは手を洗って計量をやります。

「とにかく大きいボウルと仰いましたのでこちらですが……」

 僕の目の前にはピッツァ生地を仕込むのに充分な大きさのボウルがあります。
 フィーさんの小屋じゃ適度な大きさだったけど、こっちじゃ量が格段に違うからかなり大きくてはいけない。
 ちなみに僕は木箱の上に乗っております。大人サイズの調理台じゃ顔がせいぜいですもの。

「じゃあ、僕が合図するまで粉を入れてください」
「わかりました」

 マリウスさんも結構な力持ちで、ひょいっと持ち上げて封を開けてしまいます。覗いて見える強力粉の滑らかさ。これ一級品だよね?
 エディオスさん達が食べるのにしか使わないって感じだけど、ここはご好意に甘えて使わせていただこう。フィーさんはその間に砂糖やお塩を計っていただいてます。

「こっちは終わったよー?」
「ありがとうございます。……あ、マリウスさんそれくらいで大丈夫ですよ」
「はい」
「サルベ持ってきましたー」

 粉がちょうどいいところでライガーさんが戻ってきた。ならば、次はぬるま湯とオイルですな。
 あらかじめ大きめの鍋に湯を沸かしておいてもらい、それを適度に水と混ぜて温度を調節。だいたい40度から44度くらいだから手を突っ込める温度でなくてはいけない。酵母(サルベ)に使うのはもうちょっとぬるめの方がいいかな。
 それぞれを手際良く準備している間に、マリウスさんに使うオイルを持ってきてもらいます。
 すべてがそろい投入し終えると、僕は袖をまくってボウルの中身をこね出します!

「よいしょっ、と」

 最初はぐちゃぐちゃ、次第にまとまりが出てくると傍観してたマリウスさんやライガーさんがしげしげと眺めてきました。

「パン生地にぬるま湯とオイルをか……?」
「考えもしなかったですね?」

 という呟きは横に流し、僕は昨日よりも多い生地を真剣にこねます。この身体じゃ、いくら補填があっても一苦労だもの。とにかくもっとまとまるまでこねていきますよ。

「……よし。あ、すみません。台に少しだけ粉を振ってもらえませんか?」
「ああ、いいよ」

 まとまってきたところでライガーさんに頼むと、横の台に粉を振ってくれました。そこにまとまった生地を乗せて昨日同様に更にツヤが出てくるまでひたすらこねます。

「カティアー、僕その間にマトゥラーとかやっておこうか?」
「あ、探してくるだけで大丈夫ですよ?」
「そだね。僕ソースの方はそんなに作るの見てなかったし」
「では、私も行きますね。ライガー、お前は見させてもらいなさい」
「そうさせてもらいます」

 それぞれ分担して作業に取り掛かってくれました。
 ありがたいことです。その間に僕は大きな生地を一生懸命にこねていく。
 こねて伸ばして折り曲げてを繰り返し、大きな生地の表面にもちっとしたツヤが出てくる。それを半月状にまとめてボウルに戻す。

「これでボウルいっぱいに膨らむまで放置です」
「ああ、そこはパンと一緒だね?」

 けど、ラップがないので濡れ布巾をかけておかないといけない。なので、ライガーさんに教えてもらって手拭いを2本貸していただきそれを濡れ布巾代わりにボウルに乗せます。
 今日は生地が大きいから3時間くらいかかるだろうから、その間にソースと具材を手早く仕込まないとね。

「あ」
「ん?   どうしたんだい?」
「あ、いえ。大丈夫です」

 危ない危ない。うっかり口に出すとこだった。
 と言うのも、僕はほとんどこちらの食材名を知らないのだ。さっきフィーさんが探しに行く前に呼び止めておくべきだったかも。
 それならば、こっちは手早く出来るマヨネーズソースを仕込むことにしよう。

「ライガーさん、卵やお酢とかお借りしていいですか?」
「え、それって具材に使うのかい?」
「ソースの一つに使います!」
「ソース……ああ、オーラルソースみたいなのかな?」
「え……っと、そうです」

 マヨネーズって言わなくてよかったです。
 僕が手を洗っている間に、ライガーさんが材料を用意してくれることになりました。

「いつも使う材料も持ってきてみたよ」

 揃いましたのは、有精卵っぽい赤い卵にお酢や砂糖、菜種油っぽいオイルにお塩。基本的なマヨネーズを作るのに必要な材料だ。

「ありがとうございます」
「どれくらい作るのかな?  分量教えてくれたら僕が混ぜるよ」
「お、お言葉に甘えさせていただきます……」

 ミキサーや電動のホイッパーがないから、今の僕がかき混ぜてたら1時間以上かかるもの。頼れるとこは頼らせてもらおう。
 分量を教えると、オイル以外の材料をボウルに投入してホイッパーでかき混ぜるお姿はさすがはベテラン料理人だと思いました。力まず余計な力を入れずにホイッパーをくるくる動かすのは様になってます。
 僕が時折オイルをちょびちょび足していくと、マヨネーズ特有のどろっとしたソースが出来ていきます。

「持ってきたよー」

 最後のオイルを足したとこでフィーさんとマリウスさんが戻ってこられました。
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