【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

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第二章 交わる会合

075.新しいデザートピッツァ

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「……あれ?   もうない?」

 クラウを除いて話し込んでたはずなのに、もうピッツァが残りわずか。

「それは、神獣……クラウ殿が飛びながらあちこちの皿に行って食い漁っていたからか」
「え⁉︎」

 檮杌とうこつさんが教えてくれた事実にびっくり。

「クー?   そんな汚い食べ方を教えたことはないんだけどぉ?」
「ふ、ぶゅ⁉︎」

 今更後悔したところで遅いよ。なので、ちょっとばかし痛いくらいにこめかみ辺りを拳でぐりぐりと押し付けた。

「ぶゅゆぅ⁉︎」
「デザート作る予定でいたけど、クラウの分は抜こうか?」
「ふゅぅ⁉︎」
「じゃ、僕が取り分けるまで待ってられる?」
「…………ふゅ」

 いい子に出来るならよろしい。
 僕もそんなに鬼じゃないしね。

「カティア、お前さん昨日からそのクラウの主人になったんだよな?   なんか躾に手慣れていないか?」

 サイノスさんがお話から離れて僕らのやり取りを見てられたようだ。

「えーっと……昔の杵柄と言いますか、お世話してた動物とか年下の子に注意する感じですよ?   躾になってるかは自信ないんですが」

 ペットなんて飼ったことないから、よくはわからない。うちは共働きだったからペットなんて実質無理だったもの。クラウはペットじゃないけども。

「しっかし、まあ神獣をそこまで手懐けちゃってるのもある意味凄いよ?   僕は神だから必然的に配下に加わるから当然だけど、異邦人の君にそんな素質があるなんてさ」

 と言いながら、フィーさんは残ってたマルゲリータをもしゃもしゃ食べていた。
 言ってる事の言葉の重みが感じにくいですよフィーさん……。

「カティア、お前はあまり食べてはいないが大丈夫か?」
「大丈夫ですよー?」

 セヴィルさんに心配されましたが、僕の体は現在8歳児程度。胃袋とは相談しつつ食べてますとも。

「それにデザートピッツァもあるんで、そっちでカバーしますよ」
「そうね。デザートは別腹とも言うけど、何を作ろうかしら?」
「カッツクリームも使ってティラミス風なんて言うのは考えてたんですけど」

 マスカルポーネのようなチーズはないから代用だね。
 生クリームにクリームチーズを混ぜて生地に塗り、仕上げにココアを振りかけるだけのシンプルなものだけどこれ美味しいのだ。
 説明すると、セヴィルさん以外の皆さんはごくりと唾を飲み込まれた。

「カティ、さくっと作りに行きましょう!   フィー、障壁に入り口をお願い出来る?」
「じゃ、君達が通過しやすいようにしておくよ」

 フィーさんが指鳴らしされても壁に変化はなかったっけど、僕はファルミアさんに手を引かれて壁に向かえばすり抜けがらくらく出来ちゃった。

「あ、妃殿下。お飲み物はよろしいでしょうか?」

 ずっと待機していたらしい給仕のお姉さんがファルミアさんにそう聞いてきた。
 そろそろお水は欲しいかもだしちょうどいいかも。

「ああ、そうね。ちょっと待っててちょうだいな」

 と、ファルミアさんは壁にバックターンしたがすぐに戻って来られました。

「今から八半刻は通れるようにしたとフィルザス神が仰ったわ。私はコフィーのお代わりをお願い。カティはどうする?」
「じゃ、僕もコフィーでいいです」
「畏まりました」

 厨房に戻ったら、コックの皆さんがちょうどまかない用に置いておいたピッツァを召し上がられてるところだったよ。

「あ、妃殿下、カティアちゃん!」

 僕らが戻ってきたらライガーさんがぶんぶん手を振ってくれた。
 それにつられて他の若いコックさん達も手を振ってくれました。マリウスさんは気づくとこっちにやってきた。

「妃殿下、カティアさん。新しいピッツァは皆にも好評です」
「それは良かったわ。私は手伝いしか出来ていないけど」
「ファルミアさんがいなかったら、ここまで種類出来ませんでしたよ?」

 ツナマヨしかり、サラミなんかの燻製肉オンパレードしかり。こっちの世界で長く生きてるから食材に関して詳しいのは当然だものね。

「あら、カティがいたからこそ私もピッツァ食べれたもの。いくらでも協力するわ」
「それで、今からですとデザートピッツァをお作りになられるのですかな?」
「ええ。けど、カッツと蜂蜜のはさっき作ったし……カティ、カッツクリームとコパト以外はどうするの?」

 マリウスさんの前だから蒼の世界用語が使えないのはわかるけど、ニュアンス的にココアのことかな?

「そうですねー。この前は生クリームと果物にココルルソースでしたけど」
「果物と生クリーム?   いいわね。リースや四凶しきょう達がいるから誰も残さないでしょうし、ケーキみたいな感じで作っていきましょう!」
「はーい」

 それと、手早い方がいいのとまかない用にほしいからとマリウスさん始め、コックさん達が生クリームやクリームチーズの用意はしてくださいました。

「……こうなったら、クレープの要領で作りたくもなるわ」

 果物を洗ってる最中、ファルミアさんがこそっと言ってきた。

「こっちにはクレープってないんですか?」
「フランス料理のようなガレットならあるけど、クレープは見かけたことはないわね。屋台だとむしろサンドイッチやホットドッグ的なのが多いわ。デザートだとほとんど揚げドーナツね」

 庶民にはドーナツがおやつと言うのが定番らしいです。

「ん?   そうよ、思い出したわ。このフェイ……ブルーベリーとクリームチーズを使えば」

 ファルミアさんが何やらぶつぶつ言い始めちゃった。
 何だろうと僕はりんごを洗いながら聞き取ろうとしたけど、途中でだんまりになったから集中して考え込んじゃったみたい。
 なので、僕は先に生地を伸ばして数枚は焼いてから冷ましておいたよ。

「うん。そうね!  カティ、生地は全部焼かないでおいてちょうだい」
「ほえ?」

 けど、ファルミアさんの思いつきにハズレはほとんどないから僕も興味が湧いてきた。

「何を試してみるんですか?」
「カッツクリームとフェイでね?」
「??」

 クリームチーズとブルーベリー?

(いや待てよ?)

 僕もファルミアさんが作ろうとしてるのがわかってきたかも。

「それって少しだけ砂糖をまぶします?」
「あら、さすがはカティね。ええ、とりあえず一枚伸ばしてもらえるかしら?」
「はーい」

 作り方は簡単だった。
 生地を伸ばしてソースがわりに均一に塗り、少量の砂糖を振りかける。その上にブルーベリーをたっぷり乗せて、また少量の砂糖を。
 これを普通に焼いたら、生のブルーベリーを散らしてカット。
 ブルーベリーの焼ける甘酸っぱい匂いがたまりません!

「これに好みでまた砂糖を振りかけるのもいいけど、ゼルもいるしそれはやめておきましょうか?」
「そうですね」

 それからは以前作ったものに加えてティラミス風ピッツァも作りました。
 まかない用にも用意したら、特に女性のコックさんと給仕さんの目がキラキラ輝き出したんだよね。

「綺麗すぎる!」
「「「食べるのもったいなーい‼︎」」」
「これはフェイ?   焼いてあるようだけど、いい匂い……」
「妃殿下、カティアちゃんありがとうございます!」
「どういたしまして」

 感想は後日教えてくださいとお伝えしてから、僕らはまたワゴンに全部乗せてから食堂に戻りました。

「ふゅゆゆ!」
「わ、クラウ⁉︎」

 僕らが黒い壁の中に入ったらクラウがこっちに向かって飛んできた。
 そして、僕の頭の上にちょこんと乗っかられちゃった。

「待ちきれなかったみたいだぜ?」

 疑問に答えてくれたのはエディオスさん。

「フィーやユティが構ってやってはいたが、やっぱ主人のお前の方がいいみたいでな?  それと、さっきの自分の爆食い反省してたみてぇだ」

 そうなの?と、クラウを下ろして顔を覗き込めば、お目々が垂れ下がってしょんぼりしてた。

「クー?   もうしない?」
「……ふゅ」

 こくこくと頷いてくれたので、僕ももう怒ってないことをわからせるのに頭を撫でてやった。
 そうすれば、水色オパールの瞳がキラキラ輝いてきた。

「じゃ、デザート食べよ?」
「ふゅ!」

 ぴこっと右手を上げて、クラウは意気揚々に答えた。
 なので、クラウを頭に乗せてからピッツァの大皿をテーブルに乗せていきました。

「これもピッツァなの?   なんかケーキみたい」

 ユティリウスさんが興味津々にベリーミックスピッツァを覗き込んでた。

「甘さ控えめの生クリームに果物とココルルのソースをかけただけですが。奥の茶色いのはさっき説明したカッツクリームと生クリームのです」
「こう見ると綺麗なもんだな?」

 サイノスさんも褒めてくれたけど、観賞時間が長くて皆さんなかなか手を出し辛いようです。
 例外はフィーさんとエディオスさんで、既にティラミス風ピッツァを食べてたけど。

「甘過ぎなくて、コパトの苦味もあるからかくせになるね!」
「予想以上にうめぇな!」

 ひょいぱくひょいぱくって食べ進めてるよ。
 僕もなくなる前にクラウと分けっこして口に入れれば、ちょっと酸味のある生クリームにココアパウダーの苦味がベストマッチして美味しい。
 コーヒーを生地に塗ろうか悩んだけど、ない方が正解だったかも。
 お代わりの温かいコーヒーと一緒に食べればちょうど良かったからだ。

「……これは、食べやすいな」

 セヴィルさんが食べてたのはブルーベリーとクリームチーズの。
 僕もさっき食べたけど、フレッシュと焼いたブルーベリーの食感と甘酸っぱさにクリームチーズがまろやかでやみつき確定だと舌がうなりました。

「フェイを焼くなんて発想はあまりなかったな?」
「ジャム風で美味しいですねー」
「カティアが作ったのではないのか?」
「これはファルミアさんの案です」

 レアチーズケーキにブルーベリージャムの発想はあったけど、それをピッツァには思いつきもしなかったもの。

「あら、カティがプチカ達を生クリームと組み合わせるんで思い出しただけよ。たまにレアチーズケーキ作るの」
「おお」

 けど、そう言うお約束は昨日エクレアでしたから別の機会だね?
 そうこうしているうちにあれだけ作ったピッツァは綺麗になくなり、クラウも満足したのかお腹をぽんぽんと手で叩いていた。

「ふゅぅ」
「いっぱい食べたねー?」

 僕の三倍以上食べたよね?
 僕もデザートは多めに食べたけど、それでもお子様な量でしかない。

「作ってくれてありがとうカティ。何かお礼しないとね?」
「お礼なんていいですよ」

 美味しいって言ってもらえただけで充分ですとも。
 けど、ユティリウスさんは納得されてないのかうんうん唸ってしまったよ。

「あ、そうだ。それならゼルと散歩に行ってきなよ。クラウは俺とミーア達で預かるからさ」
「……………はい?」
「は?」

 何がどうしてそう言う提案に?
 僕は思わずセヴィルさんと一緒にぽかんと口を開けてしまったよ。

「まあ」
「あら、いいわね。私もリースに賛成よ?」
「執務は気にすんなゼル。今日くらいいいだろ?」
「俺も手伝うしな」

 外堀がどんどん埋まっていくよ。
 フィーさんはと言うと口笛を吹いて僕からクラウを取り上げた。

「ふゅぅ?」
「君はこーっち。いいじゃん。全然カティアを案内出来てないし、逢引兼ねて行ってきたら」
「えぇええ‼︎」

 昨日言ってたデートを今日実行ですか⁉︎

「なななな、なんでデートを⁉︎」

 じたばたと手を振っていると、まだ後ろにいたフィーさんにぽんぽん頭を叩かれた。

「僕らのせいと言うか、君をここの区画しか説明してないしさ?   セヴィルに案内も兼ねて話し合ってきなよ。積もる話もあるようだしね?」
「え、えーっと……」

 僕とセヴィルさんが初対面じゃないことだよね?
 セヴィルさんが忙しいを理由にここ一週間話し合わずじまいだったけど、それって結構重要なことだったよ、忘れてた。

(あ、あと、僕がセヴィルさんの『初恋』じゃないかってことも)

 ちゃんと確認しなきゃいけない。
 僕だって、あやふやなままで置いておきたくないもの。
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