【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

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第三章 交わる記憶

077.逢引は注目の的に(途中別視点有り)

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 とりあえずゲストルームの扉を閉めてから、僕とセヴィルさんはまた大きくため息を吐いた。

「……あいつらの提案に巻き込んですまないな」
「いえ……」

 あれ絶対ユティリウスさん辺り事前に計画してたと思うよ。でなきゃ、エディオスさんが特に反論なく嫌いな執務を積極的にしないもの。
 サイノスさんだって、絶対グルだ。

「このお城を散歩ですか……」

 行っちゃったらマズイ場所もあるそうだから、無闇に我が儘なんて言えない。恰好もドレスだし。

「……カティアはここと食堂以外はほとんど知らないでいいか?」
「あ、はい。初日はエディオスさんとフィーさんと裏口から入らせてもらったんですが」

 とにかく角曲がったり階段登ったりで経路把握する間もなかったから、あそこはあまり覚えていない。

「そうか。とりあえず、俺が案内しやすいところからでいいか?」
「お任せします」

 立ち止まっててはなんだろうと僕らは歩き出しました。セヴィルさんが僕に歩調合わせてくれてるから、ゆっくりと歩いています。

「この辺りは最後がいいから、下から行く。転移で移動してもいいが道がわからなくなるから今日は使わないでおくが」
「大丈夫ですよ?」

 ペタンコパンプスのおかげで足がそんなに痛くならないだろうから、ご心配には及びません。
 その旨を伝えれば、とにかく下の階に降りていきます。
 この時間はお仕事の仕上げが多いのかあんまり他の人とは遭遇しませんでした。
 ただ、会ったら会ったで皆さん一様に目をぱちくりさせてから脇に退いて腰折っちゃうけど。

「すまない。悪目立ちしているだけだな」
「いえ」

 やっぱり宰相って役職もだけど、お貴族様だもの。お父さんが王家の縁戚でお母さんがエディオスさんのお父さんの妹さんだからか、ほとんど王族の一員と変わりないらしい。

(僕平々凡々な一般ピーポーだけど、一緒に歩いてて不自然に思われないかな?)

 あ、でもアナさんのお下がり着てるからそこまで不釣合いには見えないかも?   それ込みでエディオスさん着替えさせたのかな?
 しかし、セヴィルさんのマントのはためき具合はかっこいいです。床も下に行けば行くほど絨毯の質が変わってくるけど、気にならないくらい堂々と歩いている様がやっぱり王子様に見えちゃう。
 コロネさんみたいな侍女さん達と会えば、お姉さん達一瞬見惚れちゃってるけどすぐに職務を思い出してささっと行っちゃうくらい注目度高いです。
 おまけのお子ちゃまの僕が居て申し訳ない。

「カティア、まだ中層区画だが疲れてないか?」
「無理はしてないですよ?」
「まずは中庭に向かう。お前とクラウが行くにはいいところだと思うが」
「お庭ですか?」

 絶対超広くて迷子なるの確定な予感しかないけど、庭師さん達に手入れされたところって興味あるもの。







 ☆   ☆   ☆   ☆   ☆(セヴィル視点)







 ユティリウスの提案と言う名の画策により、俺は今カティアと城内の案内を兼ねた散歩に出ている。

(もう少し時間を作ってから誘うつもりでいたのだが……)

 俺としてはせめて半日以上時間をとり、カティアも特に何もする予定でいない日取りを見て誘う予定ではいた。
 きっかけは昨夜のファルミアの発言だったが、俺抜きにしてもカティアをほとんど案内していないのはさすがに焦った。
 面識があるらしいコロネやサシャなどの女中らに任せても良かったが、生憎とこの時期は俺達のような役職持ちの式典用の衣装準備が忙しいらしい。
 と言うのは、半分本当で半分は建前だろう。
 でなければああも生暖かい視線で見てくるか。あの二人だけは例外に俺とカティアが御名手同士であることを知っている。

(それにしても……)

 とことこと俺の隣で歩いているカティアの姿を見て、俺はまた顔が熱くなるのを感じた。

(……似合い過ぎている)

 その一言に尽きる。
 昨夜は宝石類や髪型で一段と輝いていたが、今日は控え目で落ち着いた雰囲気だ。
 ただ、外見が幼子なので愛らしい印象を受けるが、化粧を抜きにしても俺は美しいと思う。アナとファルミアには少しくらい感謝した方がいいか。
 フィルザス神の変幻フォゼによりいつも輝いている虹の瞳はなく海の底のような蒼だが、それでも好奇心旺盛な光は失われていない。
 俺の隣を歩きつつも周囲の景色を飽きもせずに見ていた。あとは、今から行く予定の中庭への経路を覚えるためだろう。
 見た目だけは幼子だが、カティアは成人している身だ、時折それを忘れそうになる。
 俺達が通る度に腰を折って脇に避けた輩達も、カティアが成人しているとは思わないだろう。
 むしろ、稀有な金の髪と愛らしい顔立ちに釘付けなのが老若男女問わず。

(……80歳程度だから、大丈夫だとは思うが)

 俺のように惹かれる者が出そうで危うい。
 特にこの区間に来れば小姓や新人の若い兵士達も多いから、自身の妹と差異ない年頃のカティアに変な気を起こしそうなことはないとは思うが。
 ちらっと目線だけでそう言った者を見遣れば、脇に控えるのも忘れてカティアに見惚れてる若い者が数名既にいた。
 これはもう中層下層で噂が立つこと間違いない。

「皆さんセヴィルさんの恰好にびっくりされてるんでしょうか?」

 当人我関せずと言うより自覚が全然ないでいるらしいカティアと言えば、俺のことを気にかけてくれていた。
 俺は滅多にではないが今みたいな恰好もしなくはない。若い兵士達はたしかに知らないでいる者の方が多いのは合っているが。

「カティアに注目が向いてると思うが?」
「僕ですか?」

 本当に自覚がないでいる。
 そんな風に首を傾げるな。視界の隅で鼻を押さえてる若い衆が一人や二人ではない。
 見るな寄るなと睨みを効かせればあっと言う間に霧散していった。

「こんな恰好しているからでしょうか?   僕なんかに似合わないと思うんですけど」

 あの頃は年相応だったせいかこんな発言は特になかったが。

「そんなことはないぞ」
「ほぇ?」
「似合っている」
「え」

 俺がそう言うと思わなかったのだろうか。
 つぶらな瞳が一段と大きく見開かれて口がぽかんと開いた。

「何かおかしなことだったか?」

 俺としては思ったことを言っているだけだが、カティアの顔が首元から順に赤くなっていく様がなんだかおかしくなってくる。

「にににに似合うだなんて、ここここんな公衆面前で!」

 余程恥ずかしくなったらしい。どもってしまう様もなんだかおかしくて可愛らしく見えてしまう。

「人もまばらだから構うことはない」

 俺の睨みで大抵の輩は退散していってるしな。
 と思って周囲を見渡したが、意外にもいた。
 そして、この世のものでないものでも見たかのように一様にして目を見開いて。

(…………これは、さすがに俺らしくない所業をしたか?)

 だが、本心ではあるし今更訂正も出来ない。
 ひとまずカティアを落ち着かせてから、俺は中庭に続く回廊を目指した。

「中庭に行くには、この回廊を使うのが一番近道だ」
「お庭ってそんなに広いんですか?」
「裏も含めれば敷地の大半を埋め尽くしてるな。奥に行けばサイノス達が訓練に使う演習場もあるぞ」
「訓練って、魔法や武器とかを?」
「大雑把には合ってるな」

 俺もたまに体を動かすのに使うことはあるが、宰相になってからは滅多にない。
 近習達にも任せてはあるが、隙あらばエディオスが執務から抜け出そうとするからな。
 そう思えば、仕事以外で城内を歩くのも随分久しい。
 今頃あいつはきちんとこなしているだろうか?
 フィルザス神が俺の代わりに目付けとして控えてきくれると言っていたから抜け出すことはないはず。それと、ユティリウスやサイノスと話し合ってまで俺とカティアを一緒にさせたしな。

(……そうか。フィルザス神が言ってたようにいい加減打ち明けねばならないな?)

 ファルミアが吐露した方ではなく、ここにきた当初うやむやにしてしまってた方だ。
 俺とカティアが初対面ではないと言うこと。

(だとすると、あれも告げなければならないか……)

 フィルザス神は記憶探査でも読めなかったと言う、おそらく俺だけが知っている事。
 それを伝えるべきかどうか躊躇われる。
 何せ、カティア自身にその封印がまだ何者かの手によって施されているからだ。
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