【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

文字の大きさ
90 / 616
第三章 交わる記憶

090.中層にてLETS!-①

しおりを挟む
「あのやり方じゃ、保温の結界はかけれても状態維持までは無理だわな。それこそ、時間操作が必要だろ」
「一品だけそうしたら、他もしろとかうるさくなるな……」
「と言うことで、よくても注文制にした方が無難です。あと、パンよりだいぶ薄いんで具材が落ちて服に汚れがつくことも考慮しなくては」

 ピッツァの欠点はそこだ。
 僕の作り方だと時間が経つとソースと具材が独立しちゃって、べちゃっと落ちちゃうんだよね……特にトマトソースが。

「注文制か……となると有利なんは下層だな。ああ言うのを爺共にいちいち確認取りながらやるには、うちじゃ人手が足りねぇ」
「中層の方がいらっしゃる人は少ないように思うんですが?」
「こいつみてぇな輩とかが際限なく食うんだぞ?   だったら、ある程度用意しとけば差し替えしやすい」
「……否定出来ねぇな」

 イシャールさんが親指をくいっとすれば、サイノスさんはぽりぽりと指でほっぺをかいた。
 まだそんなに見てないけど、サイノスさんも結構な大食らいみたい。

「つーわけだ。カティアの勉学の邪魔したな」
「あ、いえ」
「いーいや、そんでもいっぺん見てみてぇよ!  こいつもだがユティやエディまで魅了したピッツァを俺も食ってみてぇし、作ってみてぇ‼︎」
「……い、今からですか?」

 現在お八つ時目前、夕飯までは数時間程度。
 生地の時間操作なんて僕出来ないから、無理だ。

「カティア、無理ならちゃんと言えよ。こいつのワガママに付き合ってちゃ、そっちの夕餉に間に合わねぇぞ?」
「うぇ」

 そうだ。言う時ははっきり言わなくっちゃ。
 僕見た目はお子ちゃまでも、中身は大人。流されちゃいけない。

「無理じゃねぇだろ?   時間操作は俺がなんとかするしよぉ?」
「ふゅ?」

 ちょっぴピンチです。
 クラウ抱えられたままと言うことは、人質に取られているとも同じ!

「お前も食いたくねぇか、ピッツァ?」
「ふゅゆゆゆゆ!」
「クラウ……」

 食べ物につられちゃって!

「……止められないか?」
「クラウに関しては無理ですね」

 この中じゃ一番の食いしん坊ですから。
 ここは観念しますか。







 ◆◇◆








 材料調達については割愛。
 と言うのも、

「急にいなくなったと思えば……カティアちゃんのお部屋に押しかけた挙句、守護獣ごと連れてくるなんて何しやがってんですか!」
「しゃ、シャルロッタさん……僕は大丈夫ですから」
「カティアちゃんの優しさに感謝するんですね!」

 シャルロッタさんが激おこでイシャールさんを完膚なきまで叩きのめしたからです。
 サイノスさんはさすがにお仕事途中だったからと退場されてます。

「ふゅ……ふゅ?」

 クラウは床に倒れてるイシャールさんの赤髪をペチペチ叩いてる。けど、実際大した威力もないからイシャールさん無反応。
 体格差とか諸々考えてもシャルロッタさんの方が小柄だし、腕も細いのにすごい。

「ちんまいなぁ?」
「可愛い!」
「生まれて間もないのかな?」
「ふわふわ!」
「ふゅ?」

 クラウはどこに行っても人を魅了しちゃうみたい。超絶可愛いから否定しないけどね。

「それで、カティアちゃんはいいの?   何かしてたんじゃない?」
「お勉強はひと段落してたんで特には」

 変装の練習してたなんて言えない。
 イシャールさんにはバレてても、ここの人達には知られちゃ大変だもの。念の為に変幻フォゼはサイノスさんが重ねがけしてくれてます。

「けど、ピッツァって量が多いんでしょう?   カティアちゃん食べてたら夕餉が入らないだろうし……うちのまかないにさせちゃおうかしら。メニュー変更はまだ効くし」
「それでこそのシャル!」
「あんたが余計な事増やすからでしょーが!」
「ごふ⁉︎」

 復活されて、またアッパーで沈むイシャールさん。
 そして、何事もないようにコックさん達はクラウをあやしたり仕事されてる様はシュール。
 よくある事なんですね。承知しました。

「じゃあ、材料は揃ったんで分担して作業していきましょう」

 ソースとチーズの下ごしらえはコックさん達に。
 イシャールさんとシャルロッタさんと僕は生地作りに。
 クラウはあやされて満足したのか僕の頭の上に。

「材料を混ぜてまとめるのはパンと同じでいいと思います」
「けど、リンネオイルも入れんのか?」
「意外とべちゃっとなりませんね」

 ここは三人で仲良くこねこねです。
 まとめ方も伝授しますよー?

「うわー、しっとりしてきます……」
「まだだめか?」
「んー、もうちょっとですね」

 出来上がれば、ソースを仕込むまでは普通に発酵タイムにさせるよ。
 ここからは、マヨネーズはシャルロッタさんで僕はイシャールさんとトマトソース作りに。

「このソースが一番ダレやすいのが問題点です」
「たしかに、とろみもまとまりもねぇんじゃ汚れはつきもんだな」

 ただいま、潰したトマトを入れて調味料を加える段階。
 これは沸騰して煮詰めれば終わり。量はここで食べ切れれる量に調整はしてますよ?

「最後はヘルネのソースです!」
「用意はしたが、こんなにも使うのか?」
「これ彩りや風味づけなどで、お魚料理にも使えますよ?」
「わーった。作り方教えてくれ」
「はい!」

 なので、フードプロセッサーよろしく風の魔法とドーム型の光の魔法を組み合わせてジェノベーゼを作ります。
 当然のことながら、いくらイシャールさん達でもドン引きされました。

「これ食えんのか?」
「熱を加えれば、ヘルネのいい香りがしますよー?  麺料理にも出来ますし」
「……想像がつかねぇ」

 美味しいのに、ジェノベーゼのパスタ。
 他の具材の仕込み等々も並行していっても生地の発酵時間には追いつかないので、イシャールさんが時間操作を施してくださることに。

「久々に使うがどうだか………狭間の時、幾許かの時、閉ざせ広がれ我が手の内にーーーー【時間不動リザ・クレイム】」
「ふぉおお」

 ファルミアさんの時は無詠唱だったけど、詠唱があるのは初めてだ。
 なんとも見えなかった生地がぷくっと膨らんでいき、適度なところで止まった。これを三つとも全部繰り返していきます。

「じゃあ、膨らませていただいたところすみませんが。思いっきり潰します!」

 問答無用、と僕は自分のボウルの中で生地を潰してまとめ、ある程度のつやつやが出たら仕分けをしていく。

「これで生地の下ごしらえは終わりです」
「結構、大胆ですね。でも、それなら私達もしなくては」
「だな」

 お二人が生地をまとめてる間に、僕はトッピングの準備をしておく。

「あ」
「どーかしたかい?」

 準備途中でピールがないことを思い出したら、近くにいたコックさんが声をかけてくれた。

「え、えーと……スコップみたいなおっきいヘラってないですかね?」
「……ごめん。どう使うのそれ」

 やっぱり、普通はないか。
 イシャールさん達にも確認取らなくっちゃ。

「でっけぇヘラ?」
「んー……パンに使うのじゃだめかしら?」
「あれじゃ、多分横幅が足りないと思います」

 薄い生地だから引き出すのが難しいと思う。
 それも念の為にさっきコックさんが見せてくれたけど、普通のピールに比べれば小さいし木製だからだめです。

「上層ではどうしてんだ?」
「フィーさんが魔法で創ってくださいました」
「フィルザス神様なら納得がいくわ」
「僕がなにー?」
「だから……って、フィー⁉︎」

 僕もいつものことながら驚いちゃうよ。
 神出鬼没過ぎだなぁ、この人!   いや、まさに神様なんだけど。

「お久ー、イシャール」
「な、なんでお前が中層に来るんだ?」
「サイノスとすれ違って、カティアの事聞いたから」
「……そうかよ」

 これは言い訳出来ないぞ?
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

処理中です...