【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

文字の大きさ
115 / 616
第四章 式典祭に乗じて

115.式典祭1日目ー神々の再会ー(フィルザス視点)-後編

しおりを挟む
「僕の封印への鍵を出したにも関わらず解放されてないなんて、変だね?」
「一切思い出せていないのか?」
「ぜーんぜんって感じだったね。思い出してたなら、あの子は僕とかに絶対言うはずだよ」

 それくらい素直な良い子だ。
 感情の起伏は結構激しい方だし、ここに来た最初はセヴィルの不機嫌さに当てられて泣きそうだったからね。
 隠し事も苦手そうだろうから態度だけですぐにわかるけど、そういった素ぶりも一切ない。

「うーん……なんでかな?   奏樹かなたの名前が出てきた時には、魂が抜け出さないように身体に繋ぎ止めておけるくらいはしたけど」

 必死に考えてる様から、本当に見当がつかないみたい。
 僕も頑張って考えてみたけど、全然思い当たらない。あとこっちで変わった事と言えば………あ。

「もしかして……クラウのせい?」
「なんだそれは?」
「何のこと?」
「えっとね……」

 二人にクラウの誕生までの経緯と、カティアの守護獣になったことも告げれば、レイ兄様の方は首をがっくしと折った。

「じい様の仕業か……」
「おそらく、僕以上に読んでたんだろうね?   そして、それを守護する存在も必要不可欠だったと」
「それで僕に預けたとしたら、とんでもないね?」

 二千年間もの時間をかけて成熟させるだなんて、どれだけ用意周到なんだろう。
 さすがは、世界創造主様だね。

「神獣のためか、奏樹のためかはわからないが……封印は下手に解かせない方がいいな。それと兄者」
「ん?」
「再構成させるなら元の成人のままでもよかったはず。だが、何故幼子にしたのだ?」
「あ、それ聞きたい!」

 そこは僕もずっと気になってた。
 それに、カティアを元の身体に近い状態にまで成長させてあげれば、色々出来ることが増やしてあげれるからね。セヴィルがどう反応しちゃうか予想し易いけど、この場合は無視しておこう。

「ああ、そのこと?   いやだって無理あるでしょ?  この世界の成熟期間の差と魔力に馴染ませるためには、僕とレイの一部をいくら与えたってそれぐらいが限界だよ」
「………………それだけ?」

 え、ほんとにそれだけ?

「せめて、レイの世界も寿命とか成長期がもう少しでも近ければ、フィーくらいまで出来ただろうけど」
「だが、神域の泉……聖樹水をかなり取り込んだようだが?   加えて、フィーが副作用を防止させるために物質変換もしたと言うのに」
「うーん。それも足しても補えなかったのかなぁ?   僕も今の奏樹に会わないとさすがにわかんないね」

 じゃあ、カティアは普通にこっちでの成熟期間に合わせてでしか、身体も成長出来ないかも?

(いやいやいや、ダメでしょそれは!)

 本人も不便がってるとこはちょこちょこあったし、何よりセヴィルが一番やきもきしてるはず。
 だって、最愛の者婚約者になった彼女をこれから何百年も共に過ごすにしたって、色々待てと?
 いくら冷徹宰相と謳われてたって無理無理無理。
 カティアの前じゃ、その異名も形無しなくらい絆されてるしねぇ?

「クロノ兄様!」
「どうしたの?」
「僕も全力で取り組むから、カティアを元の身体くらいにまで戻すのに協力してください!」

 ベッドから降りて、兄様の前に跪く。
 苦手とか言ってる場合じゃない。僕に出来ることは、カティア達にしてあげたいもの。

「フィー、お前そこまでして奏樹達に?」
「カティアは今僕の身内でもあるんだ。物質変換したからとかじゃないよ。あの子の事がエディ達と同じくらい愛しいと思ってる」

 神はすべてをいつくしむ最上位の存在。
 僕もその最下位だからって、変わりはない。
 カティアも、レイ兄様の世界の子だったからって差別などしない。
 あの子の笑顔が消える事態が起きる事だって、させたくないんだ。

「フィー、立って?」

 クロノ兄様が、そう言った。
 顔を上げると、僕と同じ顔が慈しみの表情でこちらを見下ろしていた。

「変わったね?   この世界を任された時は自分本位だったのに」
「……嫌なこと思い出させないでよ」

 こんな時に僕の黒歴史を掘り出さないでほしいな……。

「けど、奏樹のことは僕も導いた者として協力は惜しまないよ?  ただ、一度じい様と掛け合わないとね」
「会えるのか?」
「無理にでも会わないと。じい様だって当事者の一人なんだから」

 そう言ってもらえると非常に助かる。
 今の僕は勝手にじい様に会いに行ける立場じゃないからね。向こうから来ていただかないと。

「あ。あと、魔力の保有量がかなり低いのも馴染んでないせいかな?」

 それも一向に増えないんだよね。戦闘経験は出来るだけさせたくないけど、護身くらいは身につけさせなきゃ万が一の時に対処出来ない。
 今は料理に多少使う程度で済んでても、城から出ないことなんてないからさ。

「どの程度?」
「今の外見……80歳よりも幼いくらいだね。兄様達の一部を補填させてる割には、微々たるものでしかないよ」
「それも改めて調べた方がいいな」

 それはレイ兄様とカティア会わせる時でもいい。
 加えて、もう一つ。

「身体の一部の色彩を変えさせたのは、なんで?」

 眼の色は、納得がいったけど。
 クロノ兄様の名前の一部を真名に組み込ませていることで、身体に現れたんだと思う。
 ただ、髪色まで変わってるのが不思議だったんだよね。

「……今どんな感じになってるの?」
「兄者、先読みしてないのか?」
「読めたのは、転生させてあげるところまでだね。その先を読むには間を置かなきゃいけなかったから、それ以来読んでないけど」

 と言うことは、相当の神気をカティアに使ってあげたんだね。仕事の一端とか口では言ってても、クロノ兄様はなんやかんやで人の子には甘いから。
 僕もあんまり他人事じゃないけどね?
 とりあえず、僕は塵を使ってカティアの今の姿の幻影を創り出した。
 服装は、この世界に来た時に着ていた青い服だ。

「こっちの神霊オルファと勘違いさせちゃうくらいの色でしょ?   これどう言うこと?」

 今は上層でも調理場やごく一部の子にしか見せてない。今日からは中層や下層に行くから、念入りに変幻フォゼさせてるしね。

「……………これって」
「心当たりがあるのか?」
「いや、もしかしてなんだけど…………」

 歯切れが悪いね?
 言いにくいことなのかな?
 すると、

「…………多分、じい様の力が反映されてるからじゃ」
「「は?」」

 あれ?   あの人の髪色ってどんなだっけ?
 二千年前以来、僕はほとんど会ってないからすぐには思い出せないよ!
 うーんうーんと首を捻っていたら、レイ兄様が大きく息を吐いた。

「そのせいか。なら、加護は絶大だな?」
「え、じい様ってこの色だった?」
「お前はほとんど会えてないせいで覚えてないのも無理ないな。俺も兄者に言われるまで忘れていた」
「それでも、魔力の潜在量が低過ぎるのはやっぱり変だね。そこも含めて聞いてくるよ」
「うん」

 クロノ兄様とも会わせなきゃならなくなってきたけど、仕方ないよね。カティアだって、きっと疑問に思い続けてるはずだから。
 同じように転生してきたミーアは、わけは聞かなくても気にかけてるだろうし……あれ?

「もう一つ忘れてた……」
「何が?」
「レイ兄様の世界からもう一人転生してる子がいるんだよ!   しかも、今は王妃の一人だし!」
「………………………なんだと」

 僕もカティアのことばっかり考えてたから、すっかり忘れてたよ!

「兄者、奏樹だけではなかったのか⁉︎」
「え、いや?   僕は知らないけど?」

 レイ兄様に詰め寄られても、本気で初めて知ったように顔をしかめている。
 これは、演技にしては無茶があるね。
 レイ兄様にもわかったようで、大きくため息を吐いた。

「やっぱり、こちらでの異変のせいか……」
「何があったの?」
「原因は不明だが、セヴィルの時以上に歪みやらが生じ過ぎて異界渡りや転生が激しいんだ。父上達にも願い出ているが未だ落ち着いていない」
「「えー……」」

 クロノ兄様とハモっちゃったけど、無理もない。
 この黑の世界じゃセヴィルとカティア以外なかったけど……ミーアはそれに巻き込まれたのかな?
 詳しいことは記憶をそこまで辿ってないから今は知らないけど。
 だからって、こっちの時間軸で350年くらい前ってのは変だなぁ?   カティアとほとんど同じ時間軸で生活してたらしいし。
 これも調べなきゃね。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

処理中です...