【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

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第四章 式典祭に乗じて

121.式典祭1日目ー王族の晩餐会ー(レストラーゼ視点)

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 ☆      ☆      ☆      ☆      ☆      ☆(レストラーゼ視点)







 食堂では既に参列者が全員揃っておった。ほとんど王族じゃが、違うのは護衛を兼任しているサイノスや公爵本人とその息子のセヴィル。血縁ではあるが、正確には王族ではないからのぉ。

「これで全員ですわね」

 奥さんちょっと怒っとるのぉ。謝罪は後にすべきか聞かれてからにしようと、とりあえずは彼女の隣におそるおそる腰掛けた。
 食事はすぐに始まり、約一年ぶりに食すマリウスの料理はいつも通り美味いが……全体的に儂に視線が集まるから味が楽しめぬではないか。娘のグラウディアからは何故か好奇の目を向けられるが、儂何かしたかの?

「聞きたいことがあるならきちんと申してみよ、ディア」
「あら、わかりましてお父様?」
「バレバレじゃわい」

 露骨過ぎるくらいじゃが、そこは口にしないでおく。

「ふふ。もう気になりまして仕方がないですの。影を置かれるくらいにしてまで今日の式典を退席された理由を」
「そうさのぉ」

 どこから話そうか。
 じゃが、事情を知っているであろう孫達の前でどこまで語って良いものか。おそらく全員が儂が抜け出した理由くらいとうに知っているじゃろうが、あの子のことをここでとやかく言いたくもない。

「聞いておった限りの驚きを得たとだけ、とりあえず言えるかの?」
「まあ、それだけですの?」
「そう言いおって、大体はディオ達と見当がついておるじゃろうに?」
「たしかにそうですが、もったいぶらないでください父上」
「わたくしも知りたいですわ」
「…………ティナさんまでもか」

 奥さんのティナロッサまでもが怒っていたのを引っ込めて、いくらか興奮した様子でこちらを見ていた。孫達にはわかりにくいじゃろうが、無表情でいて結構感情の起伏が激しいんじゃよこの人。わかるのは儂や息子達以外じゃと側仕えの者達くらいかの?

「わざわざ、エディの式典の初日にですもの。余程のことでしたのでしょう?」
「いや、まあ、そうじゃが……」
「お教えくださいましな。件のお客人のことを。お会いしたのでしょう?」
「……やっぱりバレておったか」

 じゃが、無難なとこにまでしておかねば。
 何故かゼルがいつになく青ざめておるからのぉ。後で孫達は集める予定でいるからその時に聞くか。

「……うむ。あの年頃にしてはかなりの利発者であったぞ」
「エディ達からは80歳程と聞きましたが、本当でしたの?」
「ああ、それくらいじゃったな。周りの補助がいくらかは必要であったが、それでも成人の者達と変わりない動きであったよ」
「父上が認める程の調理人だったのですか?」
「うむ。見事じゃったな」

 機転も良く気配り上手で実にいい子じゃった。
 そこも言えば、娘達はますます気になってきたようで目を輝かせていた。

「やはり、ジャスティンが提案したように式典が終わってからお茶会に呼びましょうよ!」
「是非お会いしたいわ」
「お袋にディア叔母もダメだっつったろ⁉︎」

 娘と息子の嫁がはしゃげば、エディが半ばキレながら食ってかかっていった。別にそれくらい良いと思うのじゃが、あの子の場合必要以上に気後れしてしまうかもしれんのぉ。いくらか齢を重ねて容姿も変化したが、儂から見てもこの者達は見目が良い。特に好奇心旺盛なディアの胸などに抱かれては慌てるだけでなく窒息しかねん。

「あなたはわたくし達とお会い出来ないと思いまして?」
「……結構緊張はするじゃろうなとは思っとるよ」

 エディ達には慣れておっても、その近親者の儂達が同じとは限らぬ。特に儂や奥さんはどうも普通の老年の物と違って風格が凄いようじゃし。儂ら本人はただののんびり生活しとる爺さん婆さんなんじゃがな?

「残念ですわね。可愛いらしいと聞いておりましたのに」
「まだ来て間もないのじゃし、もうしばらく様子見させた方が良いじゃろうて」
「けど、明日もまた行かれますの?」
「……約束してもうたわい」
「はぁ⁉︎   爺様、また行く気か!」

 聞こえておったようで、エディがジャスティン達から視線を外してこちらを見てきた。その目には、扉前で待ち構えてたような不機嫌さがありありと現れておった。

「………………約束してしまったからの」
「先先代の自覚持て!」
「よぉ抜け出しておったお前さんに言われたくないの」
「あんただって人の事言えるか!   親父や叔父貴だってそうだろうが!」
「手厳しいね?」
「たしかに」
「……褒められたことではないが、父上」
「おや、ゼル。顔色が悪いね?」

 こうして大勢で騒ぐのも久方ぶりじゃな。
 アナやサイノスは呆れて見ているが、心情は同じかはわかりかねる。
 サイノスとは会っているかはわからないでいたが、口を挟まぬあたり既に対面は済ませておるじゃろう。あやつ、図体はあれじゃが子供好きじゃからな。あの子もサイノスの人柄を知れば懐いてるはずじゃし。
 逆にゼルは想像付かぬが。

「じゃが、エディ。あとでいくらか話そう」
「は?」
「ゼルとアナも……サイノスも来るかの?」
「必要なら行きますよ」
「うむ。儂と孫達だけじゃ、他の皆はすまんが席を外してくれんかの?」
「まあ、ずるいですわお父様」
「すまぬな」

 息子達にはまだ知られては困ることがきっと数多くありそうじゃ。
 儂が知ってよいものかもまだわからぬ。
 それを確かめるためにも、デザートと食休みを済ませてから集まる者達だけでエディの私室に向かった。

「さて、もうわかっとるじゃろうが」

 室内に完全に入ってから話を切り出す。
 孫達一同、いくらか険しい表情でいたが、そこまでの秘密があの子にはあるのじゃな?

「カティアちゃんは何者じゃ?   いくらフィーが連れて来たとは言え、あのような幼子を上層もじゃが中層や下層まで自由に行き来させるのはちと目立たぬか?」

 一気に言っても、皆無言。
 ティラミスのことは当然知っておるからシェイルの話してた評判も本人の噂も知っているはず。なのに無言を徹するか?

「……このままでは連れ出されかねぬぞ?」
「誰にだよ⁉︎」
「何故⁉︎」

 おや。エディは予想しとったがゼルまで反応を示すとは。聞いておった噂のひとつにもあった、『散歩』については本当のようじゃな?

「儂が変幻フォゼした姿で対処出来たが、国民の一部に問い合わせが殺到してな?   件の菓子の考案者を出せとまで若い調理人につっかかっておったわい」
「…………やっぱ、そう言うの出て来たか」

 エディもいくらかは予想しておったようで、ため息を吐きながら片手で顔を覆った。ゼルや他の二人も同じようでいた。

「暗部をつけさせますか、お兄様?」
「ダメだ。それならフィーのがいい」
「あ、そうでしたわ」
「いかんのか?」

 儂もアナのように提案しようとしたが、何故かエディが却下を出して代わりにフィーを推した。
 と言うことは、暗部にも知られてならぬことか。儂は、儂自身につけさせとる暗部に念波を送って会話が聞こえぬ距離まで気配を遠ざけた。

「そこまでカティアちゃんの情報は外部に漏れさせたくないと言うことか?」
「ああ。フィーの許可が降りたとしても、箝口令だけじゃ生温い」
「ほぉ……」

 暗部を遠ざけて正解じゃったな。こりゃ国家機密以上の案件のようじゃ。

「……儂にもか?」
「……爺様は会った時の感想とかは、婆様達の前で行ったのが本音か?」
「あれもじゃが、あの子は異常過ぎと感じたな。知識は調理に関してなら下手すれば儂以上、老年どころか大人顔負けの機転は舌を巻きそうじゃったわい。さっきは言わないでおいたが、かなり驚かされたぞ?」

 今日一日を振り返っただけで、いつもなら土産話として包み隠さず言ってしまうところを、あの子が秘密にしてほしいピッツァと言う料理のことを聞いてから考えは変わった。
 代わりに一挙手一投足の動きすべてを観察しておったが、動きに無駄が無さ過ぎだった。動きのぎこちなさが目立つ年頃なのに迷いがほとんどないでいた。最初に見せてもらったティラミスの盛り付けですぐにそれを感じ取れたしの?

「……ゼル、どーする?」
「………………言うならばすべてか」
「一旦フィーに聞く方がいいな。俺達から言ったのを事後報告したとしたら、あいつ怒るだけですまねぇだろうし」
「……ああ」
「なんじゃ、今はダメか」

 フィーが絡んでくるとなれば仕方ないが、少し残念じゃわい。
 じゃが、儂はこれだけは聞きたい!

「ゼル、さっきもじゃがカティアちゃんの話題となると異常に血相が変わっとるのは何故じゃ?」
「そ、それは⁉︎」

 ……………何故こんなにも赤面症の孫の姿を拝めることになったんじゃろうか?
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