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第四章 式典祭に乗じて
138.式典祭3日目ーおじさんの正体?ー
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僕らはセリカさん特製のジャムクッキーを多めにいただいてからお店を出ることにした。
「金払うって言っただろ?」
「いいんですよ」
「うちの人をあれだけ元気付けてくれたし、食材まで教えてくれたんだ。お礼くらいさせとくれよ」
店長さんが元気になったのと、僕が教えた料理をただにしておくのはいけないからと女将さんがクッキーの代金がわりにさせてくれと申し出てくれたのだ。
本当は持ち帰り用の料理か何かを持たせようとしたんだが、そこは丁重にお断りしました。
「じゃ、またな」
「次は15年後とか勘弁しておくれよ?」
「多分、な」
今年中にもう一回は難しいでしょうが、来年もどうなるかわからない。
とりあえずは、言葉を濁すことしか僕らは出来ないのだ。
「ふゅ、ふーゅゆぅ!」
「クラウちゃん、ばいばい」
クラウはセリカさんに元気いっぱいに手を振っていた。よっぽど好きになったみたいだ。
セリカさんも元気いっぱいではないが、少し強めに手を振ってくれました。
「お世話になりましたー」
そして僕とクラウは安心?のエディオスさんの肩にまたもや座ってる状態です。お昼は過ぎてても式典祭でまだまだ人は溢れかえっているからだと。
ミービスのバルを後にして屋台前の人混みに戻り、さあどうするかとエディオスさんに聞こうとしたら……何故か全然違う脇道に入られちゃった。
しかも、人通りのほとんどない奥の方へ。
「エディさん?」
「ちょっと静かにしてろ」
「ふゅぅ?」
「お前もだ」
何だろう?と首を傾げていると、エディオスさんは指を鳴らして少し待つ態勢に。
言われた通り静かにしていたら、ほんの数秒後に黒い大きな影が上から降りてきた。
「よっ!」
「え⁉︎」
「ふゅ!」
降りてきたのは、さっきバルで別れたはずのフォックスさんだった。
「説明は一緒にしてやっから、少し待ってろ。で、どうだった?」
「あー、まだ半信半疑なとこは多いがほぼ正解だ。陛下」
「え、えぇ⁉︎」
タメ口のままだけど、エディオスさんが王様なのを知ってる⁉︎
「やっぱ当たりか? 引き続き調査は頼んだ。本人が覚えてねぇようじゃ、証言もねぇしな」
「あいよ。って、もう説明した方がいいぞ? カティアちゃんの顔、盛大に面白くなってっし」
今僕の顔がどうなってるかわからないが、間抜け面だとは思う。開いた口が塞がらないもの!
「改めて、自己紹介だな? 表向きはギルドの副ギルマスだが、本職は王家直属の暗部が一人ってとこだ。先代から仕えてっから、陛下が王太子時代からの付き合いで私用ん時はこんなんだよ」
「暗部って……」
ファルミアさんのご実家のご職業でもあったような?
実際にお仕事してる人を見るのは初めてだけど……随分普通の人?の恰好だ。
(あ、でもスパイ行動するから逆に普通?)
普段のお仕事も別で持ってるから余計かもしれない。
ただ疑問が一つ。
「はい」
「どーぞ?」
「なんでバルでエディオスさんを見かけた時に攻撃?したんですか?」
事情を知ってる以上の関係でいるなら、ああする必要はないと思うが。
「あー、あれ? 暗部としてはほぼ毎日顔合わせてても、ギルド側じゃマジで15年振りだったからな? そこはそこってやつだ」
「だからって、加減は考えろよな?」
「へいへい」
なんだか不思議な関係だ。
でも、そこはお仕事だから深くは聞かないでおこう。
「それとは別だが、カティアちゃんの事情も少しは聞いてるぜ? 安心しな、城で広まってる噂以外で知ってんのは俺だけだ。フィルザス神様に誓って言いふらさねぇよ?」
少しは予想してたが、やっぱりこう言う職業の人は知ってましたか。
でも、口外することはないようだから、僕はこくりと頷いておくだけにした。
「っかし、直接見るとほんとちんまいのな? これが閣下のねぇ?」
「そこも絶対言いふらさないでください!」
「そりゃ勿論」
セヴィルさんとの婚約関係も知っててもおかしくなかったが、体に関してのことも多分知ってるだろう。
なのに茶化すのは少し不愉快です。……不愉快?
前はこんな風に感じたことないのに、あれ?
「あ、ごめん。そんなショックだった……って、中身がセリカ嬢くらいだったな。悪い」
「あ、いえ……」
結構細かく知ってるんだ。
少しって情報じゃないけど、言わないでおこう。
「ゼルとのことは色々あっからな。さっきの件については出来れば今日中に洗ってくれ。つか、お前俺以上にあそこの常連なら気づいてただろ?」
「暗部側としちゃ確定したかったが、あくまで俺は草の者だしな。式典が近いおっ前に告げて探しに来させるのを防ぐためでもあった。まーさか、予想してたうちの一つが当たって式典抜けてくるって荒業しでかすから先回りしてたんだよ」
「いーだろ、一日くらい?」
「影にあの方置けれるのおっ前くらいだろ? はぁー」
誰のことを言っているのかわからないが、お仕事のことだからこれにも口を挟まないでおく。
クラウはちょっと飛びたがってたが、今僕は自由に動ける態勢じゃないから我慢してもらうのに強く抱っこした。
「とりあえず、私用側として言うがさっさと帰れ! 今日はまだ観劇行列とかねぇから別にもう回るとこねーだろ?」
「あともう少しぶらついてからな?」
「……俺達の仕事増やす気じゃねぇだろーな?」
「暗部特務長を引き抜いて来ただけでじゅーぶんだろ? 半分は、カティア達の気分転換と観光兼ねてだしよ」
「いや、無理に誘ったのは見てたから」
「う」
どこからどこまで見てたのか気になるが、僕としてはエディオスさんが案内してくれないと見に行けれるものもないから特に気にはしてない。
催し物も特にないようだから。
「帰ります?」
「言ってくれ言ってくれ。俺はまだ残んなきゃなんねーから一緒には帰れんがな」
本当に帰したいようで、シッシと手を振っちゃうフォックスさん。
付き合いが長いせいで上下関係はプライベートじゃ無視のようだ。半分お仕事中ではあっても本音は隠さないみたい。
「ふゅふゅぅ、ふーゅぅ!」
クラウとしてはまだまだ帰りたくなさそうだが、ここはしっかり言おう。
「美味しいものいっぱい食べたでしょ? 聞き分けの悪い子は、帰ってもご飯無しだよ?」
「ぶ、ぶゅ⁉︎」
ご飯の単語を出しただけで効果覿面。
一気にシュンと翼と耳がしょげちゃった。
「……しゃーねぇ、あいつにも知らせた方がいーから帰るか」
「そーじゃなくても、おっ前一応国王だって忘れんなよ。冒険者エディは半永久的に休業なんだからな?」
「たまにゃいいだろ?」
「良くねぇ」
とかなんとか数回軽口のような言い合いが続き、終わってからフォックスさんは来た時と同じように素早く上に跳び上がってどこかへ行かれてしまった。
目で追ってみようにも、速過ぎて全くわからなかったです。
「んじゃ、帰るか」
有言実行してくださるようで、人混みに戻ってゆっくり歩き、最初に来た門のところまで戻りました。
対応してくれた兵士さんはさすがにいなかったが、エディオスさんとお互いに軽く挨拶してから出たよ。
「次も早いうちに来いよ!」
「多分な」
兵士さん達もエディオスさんが来てくれるのは嬉しいようで皆さんそう声をかけてくれましたが、やっぱり約束は出来ない。
僕は一個人として来れなくもないが、エディオスさんは別だもの。
しばらく街道沿いに歩き、ある程度人もいなくなったところで道を抜けて森に入り、奥へ奥へと進んだ。
「変幻解くのは帰ってからでいい」
そう言ってから、エディオスさんは懐から犬笛のようなものを取り出した。
吹けば、音はやっぱり聴こえなかったが……ものの数秒足らずで僕らの頭上に黒い大きな影がやって来た。
見上げれば、赤い大きな竜。
ディシャスのご登場だ。
「このまま跳ぶから俺の首に掴まっとけ」
「あ、はいっ」
返事をすると同時に体が浮き上がったので、慌てて片手をエディオスさんの首に、もう片手はクラウをしっかり抱き込んだ。
怖くて下は見れないから、代わりにクラウを見たけど楽しそうにふゅふゅ鳴いてるだけ。この子の苦手なものって食事抜きくらいしかないのかな……。
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