155 / 616
第五章 新たな一員
155.セヴィルの守護獣
しおりを挟む◆◇◆
翌日、デート実行日。
実行って単語はおかしいかもしれないけれど、今日のも外部からの計略?によって決行しちゃったものだから間違ってないと思う。
セヴィルさんは宰相さんのお仕事で忙しいし、僕だって進んでお誘いするタイプじゃない。
どっちもこう言うことに関しては消極的だから、周りにはやきもきさせちゃうんだろうね。
前置きは長くなったが、現在自分の部屋で待機中です。
朝ご飯はいつも通り皆さんと食べたけど、その後すぐにファルミアさん達によって全身コーデとマッサージにメイクを施されてからクラウと自室でぽつねんとすることに。
前回はお城の中だったからクラウの同行はしなくてもよかったが、今回はお外だから守護獣は連れてかないと万が一の時の対処が予測出来ないんだって。
「セヴィルさんまだかなー?」
「ふゅぅ」
獣舎に直接行くと、目立つ上に飼育員さん達の質問攻めにあうからとセヴィルさんがお迎えに来てくれるのを待ってるのだ。
コンコン。
クラウと頷きあってた時にノックが。
すぐに返事をして扉に向かえば。
「……遅くなった」
「い、いえ……」
扉を開ければ、たしかにセヴィルさんがいらした。
いやそれは当然なんだけど、恰好です恰好!
いつもの宰相さんの出で立ちじゃなく、前の黒王子様とも違うもっとラフな恰好に目が釘付けになってしまったのだ。
ラフでも遠出で万が一のことが起こっちゃいけないから、簡易的な防具は身につけてるけど……エディオスさんが着てたような騎士服とも違う冒険者さん風だ。
セヴィルさんがこう言うの持ってたことがちょっと意外でした。
「ふーゅふゅぅ!」
クラウは僕の腕から飛び出さんくらいにバタつくので、押さえ込むのにちょっと大変に。
セヴィルさんに抱きつきに行こうとするのは少し珍しいが、セヴィルさんそう言うのは苦手そうだからクラウには我慢してもらったよ。
「では、行くか。……………その」
「はい?」
さあ行こうと部屋を出ようとしたところで、セヴィルさんが少し言い淀んだ。
と同時に僕の目線までしゃがんで来て、
「……その装いも……似合って、いるな?」
「そ、そそそうですか……?」
わざわざしゃがんでから言うなんて、この人はずるい。
しかも、ちょっと照れ臭い表情を隠しもせずに口元を緩めるなんて、こっちまで恥ずかしくなってしまうのに。
(心臓に、悪いよ……)
けど恥ずかしがってちゃ時間も過ぎるので、セヴィルさんに転移の札を使ってもらってから獣舎へ瞬間移動。
到着すると、鼻にぷんと獣臭が漂ってきた。
ディシャスのいたところも臭ってはきたけど、ここみたくわかりやすい独特の臭いはしてこなかったから。なんと言いますか、毛が凄いあるような犬とかの臭いや鳥とかに似てるような……?
「俺の守護獣を見せるのは、初めてだったな?」
来い来いと手招きされたので、置いてかれないようについて行く。
途中で獣の大きい鼻息とか唸り声とか色々色々聴こえてきたけれど、すべて無視してセヴィルさんについて行く。でないと怖いだけで済まないから。
「フェルディス」
おっきな柵の前で止まると、突如風が強く吹いてきたので地面で踏ん張るのが大変だった。
セヴィルさんは普通だったけど、僕やクラウは体が吹っ飛びそうだったんでとっさにセヴィルさんのマントを掴んでしまう。彼は気にせずに呼んだ何かに向けて止めるように言うと、風が徐々になくなっていった。
「興奮するのは構わないが、落ち着け。今日一緒に行くことになったカティアとクラウだ」
「くぅるぅうううう!」
ディシャスに負けないくらいの大っきな鳴き声。
ひと声鳴いてからどしんどしんと足音を立ててきて、柵の前に少しずつ姿を見せてくれた。
「……これって」
ワシのような獰猛な顔つき。
でも体はディシャスより少し小さくても巨大な鳥の羽に覆われたライオンの胴体。背にはクラウとは比べものにならないくらい立派な翼。
映画やゲームで二次的に見ることはあったが、現実でお目にかかれるとは思わなかった幻獣だ。
「鷲獅子のフェルディスだ。蒼の世界ではいないはずだが……」
「ディシャスの竜と同じで、架空の幻獣としては有名ですね」
「そうか。今日はこいつに乗って目的地まで行く」
「はい」
「ふゅ!」
ここで転移するかと思いきや、飼育員さんがすぐにやってきたので彼が柵を開けてフェルディスを出してから浮き島が降りてくるとこまで誘導してもらいました。
そこまでは徒歩だったけど、出来るだけセヴィルさんがゆっくり歩いてくださったので置いてかれることはなかった。
「お気をつけてー」
飼育員のお兄さんがそう言ってくれたので、僕とクラウは軽く手を振ってお礼代わりにした。
すると、お兄さんははにかんで笑ってくれたんだけど、よっぽど嬉しかったんだろうか?
「……降りてくるな」
その言葉とほぼ同時くらいに、浮き島の一つが地面に降りてきて止まった。
それまで歩いてたフェルディスは軽く嘴を上下させてから、翼も使わずに跳躍だけで浮き島の岩に飛び乗っていく。
ライオンってネコ科だから体が大きくても身軽なんだと関心。
ただここで、僕の体が急に宙に浮いて『え? え?』と驚いたが。
「お前じゃ、あそこまで行けないからしっかり掴まってろ」
セヴィルさんにお姫様抱っこされちゃった模様。
声を上げる暇もなく、たんったんっと跳躍するセヴィルさんがあっという間にフェルディスの翼の間まで跳んでしまうから、ぽかんとしてるしかなかった。
「……エディオスと幾度か出かけたと聞いていたが、慣れてなかったか?」
「お、驚きますよ……」
セヴィルさんがだからとは恥ずかしくて言えないが、文系のイメージしか持ってなかった彼への意外な身体能力を目の当たりにしたら驚かないわけがない。
お城に来たばかりの時にエディオスさんが珍しくないと言ってた意味が少しわかったかも。女性はわからないが、男性のほとんどが普通となるとコックさん達でも同じなのかなと少し現実逃避。
だって、少しでも意識してる人にお姫様抱っこって、二度目とは言え緊張しないわけがない。
(一度目は気を失ってた時らしいけど……)
なんか慣れてないだろうか?
皆さんからは女性や子供が苦手にしてると豪語してたのに、この安定感はフィーさんやエディオスさんとあまり変わらない。
けど、気にしてる間に今度は彼の脚の間に降ろされてしまって慌てる気持ちがぶり返してきた!
「え、え⁉︎」
「出来るだけ速度は落とすが、竜と鷲獅子では揺れが違うからな。クラウはしっかり抱えててくれ」
「あ、は、はい!」
とは言っても、僕がクラウを抱っこしてる下辺りに片腕を回してるから落ちる心配はないと思う。
それより密着度が!
背中に鎧の感触が伝わってくるくらい近い近い近い⁉︎
「ふーゅゆぅ!」
クラウは相変わらず呑気に手足をばたつかせてるだけだった。
「……そうだ。忘れていたな」
手綱を持ってから、セヴィルさんが何かを思い出して懐を探り出した。
そうして見つけたモノを僕の前に差し出してきた。
「……飴?」
ルビーのように真っ赤で宝石にも見えるが、飴独特の光沢具合がすぐに見えたのでそう呟く。
数は何故か二個だ。
「俺達のように慣れた者はいいが、初めのうちに使う薬飴だ。酔いやすい体質の者も使うことは多いが」
「薬、ですか?」
「クラウも大丈夫そうだと聞いたが、距離はシュレインより更に遠いからな。念の為食べさせてやってくれ、二人の分だ」
「いただきまーす」
「ふゅぅ?」
酔い止め薬なる飴の味は、さくらんぼ味でも酸味の強いものだった。
クラウには飲み込まないように注意してから口に含ませてあげた。
21
あなたにおすすめの小説
幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!
現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
別作品も掲載してます!よかったら応援してください。
おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる