【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

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第五章 新たな一員

171.疑問に思う事(途中別視点有り)

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 ◆◇◆







 意識が浮上する。
 どうやらぐっすり寝てたようで、頭が少し重い。
 ぐらぐらはしないがゆっくり動けば起きれそうだったから、無理のないように身動いでから目を開けて体を起こした。
 体勢からわかってたけど、やっぱりセヴィルさんの腕の中じゃなくてお借りしてるゲストルームのベッドの中だった。枕横にはクラウがお口を大きく動かしながらぐっすり寝てました。

「あ、起きた?」

 声の方向を見れば、勉強机の方にフィーさんが椅子に座って分厚い洋書のようなものを読んでいらした。

「まだ寝て半刻も経ってないよー?」
「帰ってきてからですか?」
「うん、そう。出迎えに行けたのは僕だったんだけど、揺すっても何しても起きないから寝かせようって。セヴィルにはちょっと用事頼んだから」
「用事、ですか?」
「うん、ちょっと」

 内緒ね?って人差し指を口元に当てたから、ここは聞かないでおこう。
 それより、お出かけ着のままで寝かされてたからこれ以上シワが入らないように着替えることにした。

「あれ?    ちょっと待って?」

 急にフィーさんに呼び止められてしまったので立ち止まると、彼は僕の顔にキスでもするかってくらいに近づいてきた。
 実際は鼻がぶつかる寸前で止まってくれたが、改めてこの人は相当な美少年って実感しちゃう。
 まつげバッサバサだし、真っ黒い瞳は大きいし肌はセヴィルさん達に負けないかそれ以上に白くてつやつや。セヴィルさんが接近してくるのとは違った意味でドキドキするよ。
 それよりも、呼び止めたのはどうしてなのかな?

「ふ、フィーさん?」
「カティア、なんで封印が強まってるの?」
「へ?」

 封印が?

「つ、強くなってるんですか?」
「結構厳重にね。僕じゃ本当に手がつけられないくらい」
「えぇ⁉︎」
「ただセヴィルと逢引行ってきただけでしょ?    何があったの?」
「え、でも、会ったのはリーさんくらいで」
「リー?   あれが何したの?」

 あ、なんか地雷踏んじゃったかも。
 至近距離のままだから怒ってく様子が直にわかっちゃう。青筋が見えそうなくらい顔が歪んでいく。
 すっごく逃げたい‼︎

「え、あ、その」
「あれがそこまでいじれるはずはないし、僕に無断で兄様達が介入したわけでもないようだね」
「あ、会ってませんよ?」
「会ってたらセヴィルだって何かしら言うだろうしね?   で、リーとなんで会った……って、あの場所はあれの領域だったね」

 勧めたのはフィーさんだったのか。
 リーさんに会った経緯などなどを全部話せば、最初は呆れ顔だったのが次第に苦虫を潰したような顔になっていった。

「副作用抜いただけじゃダメだったのかぁ……神霊オルファが聖樹水を定期的に摂取してるから僕より熟知してるのは当然だけど、そこは抜かってた!」

 そして、言い切るとムッキーって言うのがわかりやすいくらいに地団駄を踏み出した。

「魔力の滞りがそこか!   抜くのを躊躇ったのがこの場合仇になってたなんて……身体はなんともないんだよね?」
「むしろ、すっきりしてます」
「それが封印の強化になるにしては、きっかけが弱いなぁ」

 これにはフィーさんもお手上げ状態だそうだ。
 とりあえず、着替えはさせてもらうことにして準備をしてから脱衣所へ行く途中にクラウを見たけどまだ眠っていた。
 いっぱい遊んだから疲れたのかもしれない。
 明日からまたお勉強だったりするけども、ちょっとだけは遊ぶ時間を追加しよう。中庭でも裏に近いところなら僕も行って大丈夫だそうから。







 ☆      ☆      ☆      ☆      ☆      ☆(セヴィル視点)






『エディの様子がちょっとおかしいんだー。カティアは僕が見ておくからお願い』

 帰城してもずっと覚めずに眠りに落ちてるカティアとクラウをフィルザス神に任せることになり、俺は奴の頼み事を聞くべくエディオスの私室に向かっている。

(エディオスの様子がおかしいのは、セリカの時以来か)

 式典中に抜け出した日には先先代を本当に影に仕立ててカティア達を連れ出したと聞いたが、真実を知ったのは戻ってきた後だったのでサイノスが制裁したのと同じ箇所に拳を突き立てただけで終わった。
 以降は、セリカを自身で迎えに行くために式典もだが一日休んでも構わないくらいに没頭していた。
 本当にそれ以来特に変化はないでいたので、予想がつきにくい。フィルザス神にも行けばわかるとしか告げなかったために俺も想像しか出来ない。

(執務が滞るほどとは一体……)

 サボりはするが、溜め込んでもこなすのがエディオスだ。
 在位は短くとも、王太子時代にもそうであったし体調を崩す以外早々になかった。
 奴の私室に着くと、暗部は控えてるだろうと思いきや気配を探っても誰もいない。人払いをさせたにしては、警護も置かずいいのかといささか不安になるが今呼んだところで同じだろう。
 昔だったら問答無用で開けるが、一応は神王故にノックすることにした。
 数度試みるも、やはりすぐには開かず。
 もう一度試みるかと思った時に、向こうから扉が開かれた。

「おい、エディオ……ス?」

 隙間から見えたエディオスの顔は、なんとも形容しがたいものだった。
 顔半分だったが、髪は掻きむしったのか綺麗に撫で付けていたのがぼろぼろ。目も泣いたのか腫れぼったく、顔色は最悪。
 ちょっとおかしいどころですまない。
 これを俺がどうしろと⁉︎

「……ゼル、か」

 声も掠れ切っている。
 俺は、初めて従兄弟に対して逃げたい気持ちに駆られた。
 だが、同時に何故サイノスやユティリウス達はこんな状態のエディオスを放置していたのか解せなかった。

「何があった」

 とりあえず入れろと無理に扉をこじ開けてでも入ろうとしたが、奴が拒むどころか割とすんなり中に入れてくれた。

「…………」

 部屋もなかなかに荒れていた。
 剣を振り回した訳ではないが、紙だったりベッドやソファのものとかが乱雑になって床に散らばっていた。
 こうも荒れるなど、セリカ捜索が難航した以外だと裏の連中どもの所業に腹わたが煮えたぎって物に八つ当たりしたくらいだ。
 だが、その両方以上に荒れまくった室内はなんとも言いがたい。エディオスはと言うと俺を入れた後ソファにぐったりと座り込んでいた。

「……話せる内容か?」
「……いや、正直お前が帰ってきてくれて助かった」

 どうやら話してくれるようだ。
 ただ、室内が見苦し過ぎるので魔法でいくらか片付けをしてから向かいの方に座ることにした。

「で、何があった」

 再度問うと、エディオスは大袈裟なくらいに深いため息を吐いた。

「……なぁ、ゼル」
「なんだ?」
「…………お前、カティアと引き離された後って諦めたか?」
「……………は?」

 聞きたい内容がよくわからない。

「……それとどう関係が?」
「……俺の問題にも共通点があんだよ」
「ん?」

 どう言うことか気になるが、とにかく答えろと睨みつけるくらいに見てくるので、羞恥を覚えながらも答えることにした。
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