【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

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第五章 新たな一員

172.打ち明けた事(セヴィル視点)

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 ☆      ☆      ☆      ☆      ☆      ☆(セヴィル視点)






「そうだな。正直言って諦めていた」

 なにせ、異界同士の恋など叶うわけがない。
 エディオスにも相談出来る内容ではないと、ずっと胸に秘めておくことにした。その事を40年前のヴァスシードに訪問した際に、うっかりファルミアに知られることにはなってしまったが。

「……んで、偶然とは言いがたいがフィーの神域に落ちたカティアを俺が連れてきた時は?」
「…………手放せない、とは思ったな」

 今も変わらないでいるが、色彩が違う以外ほとんどあの頃のまま。
 記憶がないのに心が傷まなかったのは嘘になるが、それを凌駕する程の耐え難い己の気持ち。
 もう二度と、カティアを手放したくないと断言出来る程だった。

(今日、やっと告げれた通り、俺の想いはあの頃以上だ)

 日々を重ねるごとに、カティアが殊更愛しく思えてしまう。
 食事と言うわずかな時間でも、カティアが生き生きとしてる姿は眩しい。それに、俺のためにも甘い物でも食べやすくしてくれる気遣い。マリウス達なら好物の辛い物に差し替えるなどで極力出そうとしないが、カティアとしては『苦手なら食べやすくして克服しましょう』と今日も言ってくれた。
 無理に押し付けるのとも違う気遣いが、俺にとっては新鮮でかつ嬉しく思えた。

「……自分で聞いといてなんだが、お前気持ち悪りぃくれぇにニヤケてんぞ」
「……そ、そうか」

 やはり、カティアが関わると鉄仮面と称される表情が過剰に崩れてしまうようだ。
 エディオスも、これでもかと言うほど引きつった表情でいた。

「で、俺とカティアのこととお前のその状態がなにに共通するのだ?」

 暗部を警護に置けないのも無理はない。
 神王の荒れ狂った状態でなど、フォックスでさえ止めれるかどうか。奴は、セリカの件もあって警護の任から一時的に外されているが。

「……あー……それ、なんだが」

 言うのは決めたようであっても、少し言いにくい内容ではあるのだろう。
 そうでなければ、奴と部屋の惨状の説明がつかない。
 俺は特に急かさずに待つことにした。
 こう言った態度もカティアと過ごせてることで余裕が持てたのだろう。
 それよりもエディオスだ。
 何故か、急に頬を紅でもつけたかのように紅くさせて、目線が泳ぎ出した。

「……なぁ、ゼル」
「ああ」
「…………俺…………セリカに惚れてたっぽい」
「ああ………………は?」

 最後の言葉に頷こうとしたら、耳でもおかしくなったかと疑うくらい魔抜けた声を出していた。

「お、お前が、セリカに……?」

 だが、こいつは先に共通点があると言っていた。
 隔絶された環境。
 叶うはずのなかった想い。
 それが再び巡り会い、側に居られるようになる。
 これらを合わせれば、今エディオスが言ったことと合致した。

「…………だが、何故今日だ?」

 エディオスがセリカと再会したのは式典の三日目。
 セリカが戻ってきたのは式典最終日の翌日。
 それからまた数日経っているのに、今日になって気づくとは不自然だ。が、俺の恋愛経験が低過ぎるので他人事ではないが。

「───────…………サイノスのからかってたら、あいつに言われた」
「あいつの?」

 懸想してる相手がいるのは珍しくもないが、御名手みなてかどうかわからずやきもきしているはず。俺も含めてだが、王家と縁戚関係のある輩は何故か御名手が見つかりにくい。俺は異界の者だった故に当然だが。

「誰なんだ?」
「……お前知らなかったか。アナだ」
「……あれ、か」

 悪くないが、一体いつから想っていたのかわからない。俺も他人の事は言えないが、歳の差としてはそう珍しくもない。アナ自身はどうだか俺は知らないが。

「ユティとからかってたら言われたんだよ。俺だってそうだろうって」
「それがセリカか?」
「最初はよくわからんかったが……時間置くと、そうも言えんくなった」

 徐々に赤みが頬から顔全体、耳、首元とわかりやすく広がっていく。
 カティアから今日聞いたが、俺の表情が激変する時はそうなっていくと言っていたがこうなってしまうのか。ユティリウスが晩餐の時に驚いて聞くのも納得出来た。

「その様子だと自覚したのか?   それで、気持ちと頭が追いつかずにこの部屋とお前のその有様か?」
「ああ、そうだ‼︎     つか、これ御名手かどうかわかんねぇから質悪りぃ……」

 いきなり立ち上がったかと思えば片手で顔を覆い、またソファに腰掛けながら天井を仰いだ。

(まあ、わからんのも無理もない……)

 御名手の神秘性とやらも年々希薄になりがちでいる。
 確実に見つかる相手と言うとそうでもなく、だが一目でわかる相手もいるので否定もし難い。
 それ故に、市井の者達は自由恋愛の傾向が強い。
 セリカ自身はどうかわからないが、あれが行方不明になる前はどうだったかと思い返すも彼女ですら敬遠とした距離感でいたからよく思い出せない。
 アナの方も、今は仕事を共にする関係であるから無碍にはしないが彼女も誰かを想っていると言うのはよくわからない。カティアが来るまでは完全にカティアを諦めていたために、他者の気持ちの変化など気にしなかったせいだ。
 こう言うところがある故に、カティアとの逢引を自分から誘えないのだろう。今日宣言したように、出来るだけ多くの時間を共有したい。
 が、俺のことは置いとくにしてもエディオスだ。

「……ほぼ、御名手ではないのか?」
「へ?」
「あ」

 思ってたつもりが口に出してたらしい。
 エディオスが紫の目を丸くしながらこちらを見てくる様子に、発言を訂正するのはよそうと軽く息を吐いた。

「俺とて確信を持っているわけではないが、こうまで悩んだのだろう?   セリカの方は知らぬが、お前が荒れる程なら俺とて共通する箇所はあった」

 ここまで、と言うと比較するのも遠い昔だがカティアへの想いが溢れそうになった時期は自分なりに荒れていた。
 部屋の物に当たるなどはしなかったが、剣技の稽古や魔法の技術を磨くのにがむしゃらになってたりなど。
 あえて隠してたそれをエディオスに話せば、間抜けた顔になりながら口を開けていた。

「あれ、ただ機嫌が悪かっただけじゃねぇのか?」
「少なからず、群がる淑女どもに嫌気がさして鬱憤を晴らそうと言うのもあったが、概ねはそう言うことだ」

 それが、導きがあって叶ったのだ。
 カティアはあの頃の記憶を封じられているので直接的な言葉は得られないでいるが、態度から察するに気持ちは傾いていると言っていい。

(兆候はあったのだ。焦らずともいい)

 だが、エディオスの場合はそうもいかないだろう。

「フィルザス神ならとうに見抜いてるはずだ。確かめるか?」

 俺とカティアのこともあったのだから、奴はとうに見抜いていてもおかしくない。
 だが、提案してもエディオスは少し唸ってから首を横に振った。

「いいや。まだ半日足らずだ。御名手どころかマジで惚れてんのかも怪しいとこあるからな」
「だろうな」

 セリカの場合、色々特殊だ。
 六大侯爵家に戻ったばかりであるが、大半を市井の中で過ごしてきたせいで外聞がいささか悪い。
 正式に帰還宣言をエディオスが下してからのちの周囲の反応も予測がつくこととつかないことがある。それをはっきりさせて、処置してからでも遅くはない。

「100年悩むことにはなるなよ?」
「お前が言うと重みが半端ねぇ……」

 当然だ。
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