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第六章 実り多き秋の騒動
184.飛び入り参加
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「収穫祭、ですか……?」
「ええ、あと一週間あるけれど」
お勉強も終わって小休止のティータイム中に、セリカさんが言い出しました。
「中庭や裏庭に、果物のなる樹々が多いでしょう? シュレインなんかの街でも樹々の多い地区があるのだけれど、神前から間も無く神輪の時期がやって来るでしょ? 小さなものから一斉に実り始めるの。その時期を利用して収穫祭を開催するのよ」
「あ、セヴィルさんも前に似た事を言ってました」
収穫祭についてはまったくだったが、秋でも実り多き時期にはなるって。
もうそんな季節にまでなってきたんだ?
「そうね。城についてはお兄様方が当然詳しいわ。シュレインだと優先者は主に成人前の子供達ね? カティアちゃんくらいの外見の子達もチェイル目当てにはしゃぐくらいだったわ」
「チェイルですか?」
さくらんぼ狩りの季節にしてはずれ込んでても、種類や成長期が色々違うんだろう。
このお城にもたしかあったから、僕でも収穫出来るんだろうか?
「ふゅふゅぅ!」
クラウは、採れるものがなんであれ美味しいものには目がないから楽しみでしょうがないみたい。
今は、ライガーさんお手製のカップケーキをもぐもぐ食べています。
「どうして君に話したか、少し不思議に思ったでしょう?」
「え、ええ」
「私もイシャールお兄様から聞いたばかりなんだけど、城の収穫祭は王族と縁戚関係がある貴族との合同だそうなの。私はあまり覚えてなかったんだけど、お兄様が来ないのか?って言われてね?」
「と言う事は僕は除外なんですね……」
セリカさんは遠縁でもエディオスさん達とは血の繋がりがあるけど、僕は内密にセヴィルさんの婚約者だから蚊帳の外だ。
と、少ししょんぼりしてたら、セリカさんは何故か首を横に振った。
「普通はそうだけど、君は別よ? ゼルお兄様の御名手はもちろん秘密ではあるけど、お兄様が気にかけてる幼子がいるのなら是非連れて来いって問い合わせが殺到してるそうなのよ」
「あ、はぁ……?」
僕に、どんな興味を持たれたんだろうか?
たしか、セヴィルさんはこの前のデートの時に彼のお母さんやエディオスさんのご両親方が僕に興味を持ったからお茶会に呼びたいとは言ってたけれど。
「ま、まさか、セヴィルさんやエディオスさん達のお母さん達もですか⁉︎」
「い、いいえ。以前とは違って離宮の方は離宮の方だけれど」
「それが今回は違うんじゃよ」
「「え??」」
突如割り込んできたおじいちゃんの声に、まさか、と二人で声がした方に振り返れば。
「れ⁉︎」
「レストラーゼさん⁉︎」
「久しぶりじゃのぉ、カティアちゃん」
式典最終日にお会いした時とほとんど変わらない装いの、エディオスさん達のお祖父さんであるレストラーゼさんがにこにこしながらいつのまにか立っていらした。
「ふ……ふゅふゅぅ!」
「おお、クラウちゃん。おいでおいで」
クラウはレストラーゼさんと分かると即座に飛びついていった。
お口周りがケーキの屑でぼろぼろついてるのに、レストラーゼさんは気にせずに取り出したハンカチで丁寧に拭いてくれました。
「ご、ご無沙汰しております、せ、先先代!」
セリカさんはどもりながらも御令嬢らしくレストラーゼさんにご挨拶されました。
顔着くかつかないくらいってくらいに腰折るのってすっごく大変そう……僕もそうしなきゃいけなかったと思ったら、レストラーゼさんは苦笑いされました。
「よいよい。セリカも最敬礼せんでよいぞ? 昔のようにしてくれて構わんのに」
「で、ですが、正式に帰還した身としては」
「お前さんの次兄は公式の場でなければいつも通りじゃぞ?」
「い、イシャールお兄様⁉︎」
たしかに、ラディンさんでもレストラーゼさんでも、イシャールさんの態度ってほとんど変わってなかったかも。
セリカさんは青ざめながら口をわなわなさせてしまったが、僕が落ち着かせてもきっと変わらないだろう。
だからか、レストラーゼさんがひとつ息を吐いてから彼女に近づいてぽんぽんと頭を軽く叩いて上げた。
「すぐとは言わんが、こう言う場の時くらいゼピュロスのようにおじいちゃんと思ってくれんかのぉ」
「せ、先先代……っ」
たしかに、二代前の王様からおじいちゃんと呼んでと言われるのはハードル高いと思います。
僕だって、正体教えてもらった時すぐに言われたから。
「ところで、なんじゃが……」
ひとしきりセリカさんの頭を撫でてから、レストラーゼさんが何故か僕に振り返ってきた。
「……カティアちゃん」
「あ、はい?」
「セリカが言っておった『ゼルの御名手』と言うのはほんとかの?」
「えっ⁉︎」
「せ、先先代、い、いつから⁉︎」
「セリカが収穫祭のことを話し始めた辺りかの?」
と言うことは、お茶会を始めて結構すぐ。
気配とか感じにくい僕でも、クラウだって何も気づいていなかった。
「ああ、不安がらせてすまぬの? 儂は旅をすることが多くて、気配を絶つのが得意なんじゃよ。まだまだ小っちゃいクラウちゃんでも気付かぬのも無理はない。それに吹聴もせんから安心してよいよ」
「そ、そうですか……」
言いふらしたりしないのは信頼出来ても、とうとうエディオスさん達の身内さんにセヴィルさんの御名手ってバレちゃった。
僕はそっちの方で何を言われるか不安で仕方なかった。
「しかし、御名手であるのならゼルのあの態度も納得じゃのぅ。それにその外見も変幻ではないが何かしらの理由で縮んでおるようじゃな?」
「え、あ、う」
やっぱり、僕の外見とかは疑われてたみたい。
それは無理ないか、と口を開こうとしたら。
「れーすーとぉー? そこまでバレたのは仕方ないけど、詳しいことは今言えないよ?」
「フィーさん⁉︎」
「フィルザス神様⁉︎」
僕とレストラーゼさんの間に割り込んできたのは、これまたいきなり登場してきたフィーさん。
何故か、手にはお手製のハリセンを持ってレストラーゼさんの口に当ててたけれど。
「……やはり、ダメかの?」
「君単独ならまだしも、今回は付いてる子達がいるからねー? 彼らにはお願いしてきたけど、広めるつもりないから」
「仕方ないのぉ」
「彼ら??」
「この子の護衛が見えないところにいるからだよ。大丈夫、僕がお願いしておいたから」
と言いながらハリセン振ってる姿がちょっと怖いのは内緒だ。
「まあ、セリカだって誰もいないから口にしちゃったんだから咎めないよ。むしろ、ミーアがいない分相談に乗ってくれるのは君しかいないもん。だーかーらー、悪いのはレストだからセリカは自分を責めないで?」
「は、はい……」
セリカさんは、僕の事情を知って日が浅い。
それに、ヴァスシードの皆さんが帰国された今じゃ気軽に相談出来る相手がいないのが現状だ。
セヴィルさん本人には恥ずかし過ぎて出来ないし、同じ女性のアナさんだって役職持ちだから気軽にお話なんて出来ない。
だから、必然的にセリカさんとお話することが多くなってきてる。
今日だって、その中の一つでしかない。
「……僕も、気軽に話しててすみません」
「だーかーらー、今回は例外中の例外。悪いのはレスト! ほら、君からも何か言いなよ?」
「…………すまんのぉ、二人とも」
あれだけ落ち込まなかったレストラーゼさんでも、さすがにフィーさんの注意があれば別人のようにしょんぼりとしてしまってた。
「まったく、僕がたまたま近く通って変な気配するなーって思ったらこれだよ。孫可愛さに見にくるのはまだしも……他人の重要な秘密を聞き出そうってどう言う魂胆かなぁ?」
「う゛」
怖い。
フィーさんが怖い!
見た目それこそ孫とそのおじいちゃんくらいにしか見えないのに、実際逆どころか神様と元神王様でしかないからお説教の図が出来ても不思議じゃない。
セリカさんとこっちにやってきたクラウとで手と手を取り合って震えてるしか僕らには出来ない。
「……なーんか、えらい時に来ちまったなぁ?」
「え?」
「あ」
第二の飛び入りさん。
シュレインでお会いした時よりスパイっぽい服装のフォックスさんが苦い顔をしてました。
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