【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

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第六章 実り多き秋の騒動

192.収穫を楽しむ(途中別視点有り)

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 御名手は伏せているが後見人さん?としてセヴィルさんが宛てがわれたと言うことにしたため、今回は初参加だから他の子供達と一緒じゃない。
 遠目にこっちを見る人達があり得ないモノを見たような目を向けてても、出来るだけスルーしておきます。
 いちいち反応してたらキリがないので。

「果物の種類によって得点とかあるんですか?」
「そうだな……」

 ポイントらしい場所を目指しながら歩いていると、セヴィルさんが少し立ち止まって周囲の木々を見渡した。
 そして、綺麗なサクランボが成ってる枝に手を伸ばして三つ子ちゃんを摘んだ。

「こう言うモノだったり、色艶や大きさはもちろんだな。子供は好き放題取る傾向が強いからなんだって籠に入れるが」
「セヴィルさんはどうだったんですか?」
「……とりあえず、最下位にはならぬよう適当にやっていた」

 実にセヴィルさんらしい回答だ。

「ふゅ、ふゅぅ!」
「今回はあんまり食べちゃだーめ!」
「ふゅぅ……」

 言い聞かせておかないと、他の人が収穫する分まで食べちゃうだろうから念入りに。
 僕達いつものメンバーが摘んだ分はフィーさんが言い出したようにデザートピッツァの材料にするから、マリウスさんに事情は説明してあります。
 作るのは、はやくても明日だけどね?
 せっかく上層コックの皆さんが用意してくれるご馳走を食べないわけにもいかない。
 のは建前で、僕が食べたいからと少しワガママを言ったんです。

「俺は上の方を中心に収穫するが、ピッツァにチェイルは使えるのか?」
「前に作ったフェイのでしたら、同じようなのが作れますね」
「……焼くなら硬い方がいいのか?」
「うーん、味見したことがないのでなんとも」
「そうか」

 なら、とさっき摘んだ三つ子ちゃんを僕の手に乗せてくれました。

「い、いいんですか?」
「収穫祭は親交会のようなものだ。子供もだが大人とて摘みながら食べる者もいる。ちなみにエディオスとフィルザス神はその筆頭だ」

 わかりやすい解説ありがとうございます。
 それなら、三つもあるので一人一個ずつ分ける事にした。
 タネはないか少し心配だったが、これは無い品種らしいのでクラウがごっくんしても大丈夫だって。
 クラウの口に入れてから僕も一口。

「甘酸っぱい!」

 酸味はあんまり強くなくて、少し桃に近い味。
 果物狩りでサクランボは遠方過ぎたから初めてだけど、これは美味しい。熟し具合も程よくて焼いたら酸味が少し抜けてクリームチーズと合いそう!

「これくらいなら大丈夫ですね!」
「他は適当でいいか?」
「お任せします!」
「ふゅ」

 いつまでも話してちゃいけないから収穫に移ることにした。
 クラウには摘み方をこの間教えたので、小ちゃい手でブルーベリーやラズベリーとかを一個ずつ摘んでは僕の持ってる籠に入れてくれた。

「ふゅ、ふゅ!」
「今摘んでもピッツァは明日だよ?」
「ふゅ」

 むしろ、その為に必死になって摘んでるって感じだ。
 僕も色艶や形を見ながら摘んでは籠に入れていく。
 学校や職場では食材の良し悪しなんかの目利きは鍛えられるので、多少は今回の競技に有利だ。
 それでも、何百年も生きてるこの世界の人達の経験値に比べたら大したことないけど。

「ん?」

 セヴィルさんから少し距離を置いて見つけたブルーベリーの木。
 マリウスさんに教えてもらった赤みの多い葉っぱではあるけど、実の形がどことなく他のより小さい気がした。

「これって」
「リルシャだな」
「ひゃ」

 後ろからいきなりセヴィルさんが声をかけてきたから驚いてしまった。

「すまない。夢中になってフェイを摘んでるのを見ててな?」
「い、いえ。すみません……このリルシャって食べれないんですか?」
「薬効には最適だが、食用にするのはあまり好まれてない。とにかく渋いんだ」
「薬、ですか?」
「蜂蜜などを混ぜ込んで使うが、主に頭痛薬や腹痛用だ」
「おお」

 たくさん実ってても、使わないからそのままだったんだ。
 薬草についてのお勉強はまだ始まってないので、ちょっと覚えておこう。

「ぶ、ぶゅゆゆゆ⁉︎」
「クラウ?」

 急に変な声を上げてどうしたんだろうと見れば、セヴィルさんが説明したのが遅かったからかリルシャの実を食べてしまったようだ。

「自業自得だよ、クー?」
「びゅー……」
「口直しに、そこのダイナでも食べて来い」

 セヴィルさんが指したのは、この間裏庭で見つけた木苺みたいなのだった。
 クラウはこくこくと頷いてから、すぐにその茂みに飛びついてぱくぱくとダイナを口に入れては咀嚼していった。

「あれも対象ですか?」
「一応そうだな。ほとんどはジャム用だが」
「セリカさんにジャムクッキー作ってもらえますかね?」
「頼んでみてはどうだ?」

 なら、とクラウが食べてない方の群生を出来るだけ摘むことにした。
 それでちょうど僕の籠は半分くらいになった。

「やっと半分ですね」
「俺もそんなところだ」

 見せてくれた籠には木の枝に実ってるものが色々と入っていた。

「姿勢とか辛くないですか?」
「やわな鍛え方はしてない。……サイノス達のに比べれば劣るが」

 そう言えば、セヴィルさんが身軽なのは知ってても剣とか攻撃魔法が使えるとか使ったところは見たことないや。

「鍛錬とかされてるんですか?」
「今は執務が多いから気晴らし程度だ。エディオスにはたまに付き合えと言われるが、受け流すので精一杯なのをどうしろと」
「エディオスさんは強そうですしね……」

 冒険者もやってるくらいだから、腕っぷし強そうだもの。

「……一度休憩を挟もう。俺達は別に競ってないからな?」
「いいんですか?」
「子供とて休み休みやってるものだ。別に構わない」

 なら小休止しますか。









 ☆      ☆      ☆      ☆      ☆      ☆(????視点)






 考えが甘過ぎた。
 まさか、宰相閣下とご一緒に参加とは思わなかった。

(なんで子供なら守護獣とじゃないんだよ⁉︎)

 連れ出そうに、子供嫌いで有名な閣下があり得ない表情と態度で接しているから捕まえようにも難しい。
 一瞬、リルシャの方に一人で向かったから好機だと思ったのに、それもまた閣下がすぐに近づいたので拘束の魔法を撃てなかった。

「今ものんびり休憩って……なんであそこまで閣下が気を許してるんだ?」

 子供もだが、女も王女殿下以外は特に苦手としてることで有名な方だ。
 それでも、あの美貌だから憧れの的ではあるらしいが今はどうでもいい。

「やっぱ、予定に組み込むの躊躇ってたやつ使うか……」

 こうなってはいてもたってはいられない。
 準備をすべく、彼らが後で向かいそうなところへ仕掛けを施すことにした。
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