【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

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第六章 実り多き秋の騒動

198.お説教と提案

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 ◆◇◆






 けど、会場から引き上げた後は、やっぱりお叱りを受けました。

「お前だからかもしれないが、考えが甘い」
「は、はい……」

 食堂にてフィーさんに遮断の壁を張り巡らされて、事情を知る大半の人の前でセヴィルさんからお説教を受けてます。
 クラウは、この状況なのにお眠でフィーさんに抱っこされています。

「今回は偶々・・運が良かったものの……」
「まあ、ゼル。カティアちゃんとて相手を考えた上での提案じゃったのじゃろ?    むしろ、良策ではないか?」
「先先代は黙っててください」
「そうもいかんわい」

 事情を知ってる、セリカさんの代わりではないけれどレストラーゼさんも同席だ。
 セリカさんは他の王族の皆さんとお茶会と言う名の親睦会で今いない。
 まあ、誘拐事件については聞かせた時に一瞬青ざめちゃったが、僕が無事なのを見せたらほっとして抱きしめてくれました。

(後でもう一回謝ろう……)

 皆さんにもだけど、セリカさんにも大分心配かけちゃったみたいだし。

「打開策を立てねば、其奴はしつこくカティアちゃんに詰め寄ろうとしたかもしれん。一度引こうとしても、そう言う輩ほど後々になって思い付かぬとも限らんからの?」
「今回は、俺も爺様に賛成だ」

 エディオスさん以外にもアナさんやサイノスさんも頷いた。

「説教はそんくらいにしとけ、ゼル。つか、どうやってカティアの居場所突き止められたんだ?」
「……クラウだ」
「「「「クラウ??」」」」
「あ、もしかして」
「ああ。前にお前が試した方法と逆をさせてみた」
「つまりは、守護獣との絆ね?    なら、それはクラウしか無理だね」

 フィーさんは僕達の会話からすぐに導き出せたみたい。

「あー、あれか。でかくなったらあんま使わねぇが、守護獣がちんまきゃな?」
「クラウが大きくなるかまだまだ未定だけどね?」
「卵にいた期間を合わせても、儂とそこまで変わらんのか」

 その本人はフィーさんの腕の中ですよすよ眠ってますが。

「して、カティアちゃん。カイツと言う者の実家に教えると言うレシピとはどんなのかの?」
「お祖父様、いらした理由はそれが本当ではないですか?」
「ふぉっふぉっ、蒼の世界のモノならば是非とも知りとうてな?」
「欲望丸出しじゃないですか、先先代」

 僕以外全員が呆れてしまいました。
 だけど、聞かれたからには答えなきゃね。

「えっと、レストラーゼさんは前僕が教えたティラミスは覚えてますよね?」
「もちろんじゃ。ティナさんだけには作って、いたく気に入ってもらえたぞ?」
「そ、そうですか」

 多分、今から教えるのも同じようにされるだろうけどそれはまあいいとして。

「現在料は同じでも呼び名が違うので作るんです」
「と言うと……まさか、カッツクリームの元となるパルフェをかの?」
「ええ。工程は同じなんですけど、蒼の世界じゃカッツクリームはそれ単体で販売されてるんです。それと違って一から作るならパルフェでしょう?」
「ふむ……じゃが、それでは完全に同じものだと思われぬか?」
「もちろん、それはおまけです。本題は、同じヴァスシードだと有名なグレイルの粉末を使ったモノを作ろうと思ってます」
「グレイルをかの?」

 ティラミスは日本風にグレイル抹茶を使用したものも近年で浸透している。
 ファルミアさんに聞けば思い出してくれるだろうが、ティラミスを作らなかったから多分この世界にはない。
 グレイルも飲料以外の用途は特にないらしいから。

「あれはコフィー以上に苦くないかの?」
「卵ケーキでもいいんですが、前にお話した専用のビスケットの方が合うかもしれませんね。指の大きさのビスケットだから、フィンガービスケットと言うんですが」
「ふむ。それならばグレイルを濃いめに水で溶いたモノに甘みをつける必要はないか。後は、普通のと同じで良いかの?」
「そうですね。卵を使う方がいいかは試食してくださるジェイルさんとカイツさんに寄りますが」
「おい、カティア。カイツまで呼ぶのか?」

 サイノスさんが割り込んできたが、僕は躊躇わずに頷いた。

「そりゃあ、提供する側にも食べてもらわなくては」
「けど、ジェイルも言ってただろ?   最低三ヶ月は謹慎させるだろうって」
「その期間に本人にはご実家では何かしら働くでしょうし……人によるかもしれませんが、バルの大将さんって部屋に引きこもりの息子さんを無理に働かせませんか?」
「ご名答だよ、カティアちゃん」

 結界があるはずなのに、何故かフォックスさんがいきなり現れた。
 けど、大半の人はフィーさんが入れるのをわかってたみたいで特に驚いてなかった。

「遅かったじゃねぇか?」
「うちの娘を宥めんのにちょっと」

 あ、そう言えば、シェイルさん一応僕の護衛さんだったね。
 落ち込みようがなんとなく想像出来た。

「カティアちゃんは心配しなくていいぜ。今回は無理あったからな?」
「あ、はぁ……」
「説教もそこそこしたのじゃろ?   で、お前さんは例のバルには行ったことがあるのか?」
「ミービス以外にも何回か行く程度でしたがね」

 フォックスさんは一度大きく息を吐いてから僕に振り返った。

「あそこの大将はミービスと張り合うくらいの強者でな?   勢いが落ちた最近はミービスと同じように少しばかり落ち込んでたが、部下から聞いたところ昨日からは自分なりにティラミスの改良に動き出したみたいだ。けど、そのカッツクリームとかには行きつかねぇから苦労はしてるがな?」
「本物食べてないと難しいですしね……」

 しかも、同じ街中で商売敵?のミービスさんのところにそれを提供してるとは思わないだろう。

「ふむ。実家なら只働き同然じゃろうし、父親に灸を据えてもらういい機会じゃ。その前に試食くらい構わぬではないか?」

 レストラーゼさんがそう言ったので、これについて反対意見は出てこなかった。

「決行日は最低明後日以降か?」
「そうですね。今回のはビスケットを焼かなきゃいけないんで」
「カティアちゃんじゃと、卵ケーキの方も試作するんじゃろう?」
「まあ、一応。提供する価格も提案したいので」
「ほう?」
「僕があんまり知らないからかもしれないんですが、カッツクリームやグレイルを使うとなると……仕入れ値合わせても1000ライン近くは必要だと思うんです」
「「高っ⁉︎」」

 驚いたのはエディオスさんとサイノスさんだけで、他は首を捻っていた。
 けども、

「そうじゃな……最安値のグレイルだけでも市場に出回るのはそこそこ高い。儂でも最低そうするのぉ」

 レストラーゼさんは旅をよくするからわかってくださったようだ。

「なので、最低グレイルを諦めても価格はあんまり下げません。ほとんど手間賃ですが」
「うむ。あれくらいの魔法は市井でも使えなくはないが、本人達がそうとも限らんからの?」
「ねぇ、それって僕達にも食べさせてくれる?」
「……ピッツァを手伝ってくださるなら明日なんとか」
「するする!」

 フィーさんを釣るのは、食べ物で十分みたい。

「いーいなぁ」
「儂らは同席出来ぬからの!」

 フォックスさんもだが、レストラーゼさんもダメなのでそこは我慢してもらおう。

「レストラーゼさんには、識札でレシピ送りますね?」
「おお、それはありがたい!」
「フォックスさんはお願い出来るなら、シュレインで実際に視察兼ねて食べに行ってくれませんか?」
「いーいよ。どの道報告しようと思ってたから、お願いされたんなら遠慮なく」

 フォックスさんもレストラーゼさんも変装魔法で試食会に来てもらってもいいだろうけど、ギャラリー増え過ぎたらカイツさんが緊張するだけで済まないからね。
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