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第六章 実り多き秋の騒動
199.抹茶ティラミス
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ピッツァの仕込みをいつも通りして、生地を発酵してる間にフィンガービスケット作りをすることにした。
材料は、薄力粉、粉砂糖、卵を卵黄と卵白に分けたもの。
「材料はこれだけです」
「これだけ?」
「随分と少ないんですね?」
時間も限られているので、混ぜる作業はマリウスさんにお願いすることに。
まずは、少し冷却させた卵白のボウルを砂糖を加えずにあらかた混ぜ、少しふんわりしてきたら砂糖を少しずつ加えてメレンゲに。
卵黄の方はフィーさんに砂糖を入れたのを白っぽくなるまで混ぜてもらいました。
「メレンゲが出来たら、卵黄のボウルに入れてケーキと同じように混ぜ込んでください」
これはマリウスさんにお願いすれば、丁寧に仕上げてくれました。
この生地を、天板にクッキングシートを敷いたものの上に絞り袋を使って、大人の小指くらいの長さまで絞り出していく。
垂れちゃうのは仕方ないから、間隔を空けるのだけ要注意。
最後に上から粉砂糖を均等に振りかける。
「粉砂糖をかけるのは、焼いた時に表面が固まり食感を良くするためですね?」
「さすがです!」
僕も学校の先生に教わるまで知らなかったけど。
「窯に入れて、八半刻より短めに焼いてから火を消してそのまま冷やすと、紙から剥がれやすいはずです」
「わかりました」
こっちの焼きはお任せして、今度はティラミス作りだ。
「人数多いですし、時間もそうないのでいつものにしますね?」
「いいよー」
卵を混ぜ込む方法はこっちではまたにすることにして、二人でクリームチーズとホイップ作り。
フィーさんにはホイップをお願いしました。こっちのが大量に必要になるからだ。
「せーのっ」
もう慣れたので無詠唱で水を抜く魔法は使える。
受け皿代わりのボウルにホエーが溜まったら、空のボウルに替えて用意しておいた瓶に詰めていく。
パン作りにも使えるとわかってからは、まかないで時々使うそうだ。エディオスさん達にお出しするにはまだまだ要研究だからって。
僕が作ってもいいけど、ピッツァがメインになってたからまだ披露していない。
たまにはパン作りでもしようかと、全部絞り終わってから思った。
ただ、今回小分け用でも結構大量に必要だから、ホエーの瓶がかなり出来上がった。
「あ、そうだ」
何もパン作りだけに使えるわけじゃない。
「マリウスさん今いいですか?」
「ええ。もう冷ましてるところなので」
大丈夫と分かればお伝えしよう。
「保存の魔法で腐りはしないですけど、ホエーの大量消費出来る方法を思い出したんです」
「ほう?」
「パルフェでされてるかわかりませんが、お肉を漬け込むと柔らかくなるんですよ」
「なんと、あの水だけでも可能なのですか?」
「あとケーキの材料だったり、食前に飲むと食欲を抑えられるとかあるんで試してみてください」
「わかりました。わざわざありがとうございます」
「いいえー」
では、戻ってクリームチーズを滑らかにする作業だ。
「カティアー、生クリーム出来たよー?」
「あ、じゃあこっちの出来上がったボウルの中身と混ぜてくれますか?」
「ボウル一個に、生クリームもボウル一個でいいんだっけ?」
「はい。遠慮なく混ぜてください」
「ほーい」
手分けしてクリームを仕上げれば、これは弱めの冷却結界に入れておきます。
「ビスケット、一個だけ試食しましょう!」
「やった!」
「では、いただきますね」
十分冷め切って手で持てる温度のビスケットを一つ手に取れば、思った通り軽い。
口に入れれば、ちょっと甘めだがサクサクとした食感が心地よい!
「あっまーい!」
「今回は甘めに仕上げたので」
「これにグレイルをですか。たしかに、甘めでなければかなり苦いですしね」
御抹茶の飲み方は、前にファルミアさんが飲ませてくれた抹茶ラテ以外だとお薄にお砂糖を入れる飲み方が普通らしい。後者はこの国じゃ好まれてないらしいけれど。
「じゃあ、今回はグレイルを使うので手順が少し違います。水だとグレイルの粉が玉になりやすいから、お湯を少しずつ加えて混ぜます。飲むよりずっと濃いめにします」
混ぜる作業はフィーさんとマリウスさんに。
僕は湯の量を言うだけに集中。
出来上がった抹茶は僕には馴染み深いが、二人にはジェノベーゼ並みの印象を受けたようで少し引いてた。
「これをバッドに入れたビスケットの上から注いで、しっかり染み込ませます」
「ほんとに美味しいの?」
「これだけで食べてもちょっと苦味が強いんで、完成してから食べましょう?」
「うーん……」
まあまあ、と背中を押して盛り付けに移ることに。
「盛り付け方は、普通のティラミスとほとんど同じです」
違うのは抹茶に漬け込んだフィンガービスケットと仕上げに振りかける抹茶パウダーだ。
お椀くらいのガラスボウルにまずはビスケット、次はクリームたっぷり。そしてまたビスケットとクリームを乗せて仕上げに抹茶パウダー。
見た目だけは白と緑が綺麗な仕上がりだったが、フィーさんはまだ疑ってるのか険しい顔でいた。
「これほんとに美味しいの?」
「じゃあ、冷やしてからマリウスさんと試食してください」
「……うん」
僕よりもずっと早く冷却を施して、マリウスさんが差し出してくれたミニスプーンを持つ。
あと、もう一人感想が欲しいからとライガーさんもやって来た。
「じゃ」
「ええ」
「それじゃ」
じっと、抹茶にクリーム、ビスケットが乗った匙を見つめてから口に入れてくれました。
けど、やっぱりココアの苦味より強いので最初は少し苦い顔をされたけれど、マリウスさんはすぐに表情が変わった。
「苦いですが、クリームがまろやかにしてくれますし……ビスケットともちょうどいい」
「これは、人の好みによりますが我々の世代には好まれますね」
「美味しいけど、僕ちょっとダメかも……」
フィーさんはどうやら子供舌なのか、抹茶の味がダメらしい。なんでも平気で食べちゃう人?なのに、ちょっと意外だった。
「じゃあ、ミラージュレインさんのお子さん達と同じ普通のティラミスにしますね?」
「うん、ごめーん」
元々子供達の場合好き嫌いが激しいだろうから、普通のティラミスは用意するつもりでいたのだ。
なので、ピッツァの生地が出来上がるまでに急いで人数分盛り付けては冷却結界の中に入れていくのを繰り返す。
生菓子でも、ティラミスとかは特に冷えた方が美味しいからだ。
「あ、けどこれお出しするならピッツァのティラミスはやめときますか?」
「そだね。他にもいっぱいあるから」
と言うことで、デザートピッツァはいつもの具材を収穫祭で皆さんが集めてくださったのを遠慮なく使います。
ただ、時間もそろそろ近づいて来たから普通のピッツァを作っていく。
その中でも、今回は子供がいるので日本ならではのピッツァを作るつもりだ。
「茹でたキビトの粒を用意しましたが、これはどのように?」
「バラ肉かノットでもいいんですが……せっかくなんで両方作りましょう!」
ボウルに山盛り用意してもらった黄色のつぶつぶ。
つまりは、子供向きのマヨネーズピザの定番、『ツナマヨコーン』なんかを作る予定でいるのです!
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