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第六章 実り多き秋の騒動
215.神域へ到着
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二回目だけど、やっぱりフェルディスに乗っての飛行は快適だ。
「神域まで、一刻以上はかかるんでしたっけ?」
「そうだな。いつものエディオスなら半刻で済ますところだが」
と言うことは、最初にディシャスで飛んできたのはそれくらいかそれ以上か。
あの時は、セヴィルさんと早く会うために急いでたとは言え、随分と酷い目に遭ったものだ。
「今日は、セリカさんがいるから飛ばし過ぎてないですね……」
僕も一応女性なのに、なんで扱いが違い過ぎるんだろうか?
(やっぱり、好きな相手と友人?の違い?)
それしかないだろう。
付け加えることは、セリカさんが昔の事件で谷底に落ちたトラウマを思い出さないため。
大人でも怖い出来事なのに、小学生くらいの女の子がそんな高い所から川に落ちた記憶は、怖いだけで済まない。
文字通り、死にかけただろうから。
「あいつにしては、珍しく緩やかにさせてるな。それでも、普通よりは速いが」
「この速さでも?」
「ああ。カティアはあいつのが初めてだったろう? 通常の飛行はそよ風より少し強いくらいだ。今受けてる風の違いでわかるだろうが」
今ほっぺをかすめる風は、冬の向かい風に近い。
よくよく思い出せば、この間のデートの時はセヴィルさんが言う通り風がこんな顔に当たるなんてなかったかも。
「ふゅぅ」
急にクラウが僕の服を掴んできた。
だけど、その後に聞こえてきたお腹の音で理由はすぐに知れた。
「お昼ご飯はまだまだ先だよ?」
「ふゅー……」
「おやつって言っても持ってないですよね?」
「荷はすべてフィルザス神に預けてしまったな。水だけなら、魔法袋に入れてきてはあるが」
「だって」
「ふゅぅ」
手持ちがない事をちゃんと言えば、クラウはお耳をペタンと折ってしまう。
どうやら、朝ご飯をたっぷり食べてきても時間が過ぎればお腹が空いちゃうみたい。
「どうしましょうか?」
「もうしばらく我慢してもらうしかない。離脱してから行けなくもないが、フェルディスの全開で飛ばせば飴の効力抜きにしてもお前達が耐えられるかわからん」
「クー、向こうに着いたらいっぱい食べれるから!」
「ふゅ!」
いくらクラウが絶叫系平気でも、主人の僕はそうじゃないから我慢してもらおう。
事実、神域ではフィーさんがお昼ご飯を用意してくれてると言っていた。その事をもう一度言えば、クラウは元気に声を上げてくれた。
「ふゅゆ、ふゅぅ!」
ご飯と聞けば、とりあえず元気になってくれたからほっと出来た。
「そう言えば、フィーさんのご飯ってどんなのがあるんですか?」
「……そうだな。一言で言うなら、カティアと同じだ」
「同じ?」
「味とかが似てる気がする」
と言うことは、前にレストラーゼさんがラディンさんの時に振舞ってくださった蒼の世界と同じような料理。
フィーさんが教えてくれたってレストラーゼさんは言っていた。
つまりは、蒼の世界のオーソドックスな料理を作ることが多いってところかな?
「蒼の世界のお兄さんと仲が良いって言ってましたしね」
「あの兄君は、たしか忍びで下界に降りる事が多いそうだ」
「げ、げかい?」
「難し過ぎたな。……フィルザス神で言うなら、魔法で姿を変えて城下などに遊びに行く感じだ」
なるほど、お忍び旅行ってわけですね。
「……カティア、前を見ろ。この前とは違うが森が見える」
「おお!」
「ふゅ!」
言われて前を向けば、新緑のように明るい葉っぱに覆われた大地が見えてきた!
それが見えた頃に、ディシャスは少し速度を上げてある一点を目指していく。
フェルディスも少し速度を上げてついていけば、見覚えのある金色の光が僕の目でも確認出来た。
「あれって、『聖樹』ですよね?」
「そうだ。その側にある泉が」
「聖樹水の泉ですよね……」
もう二度と、あのお水は飲みません! 美味しくても!
とにかく、近づいていくにつれて速度も落ちていき、泉の側にある開けた場所へ降下していく。
まずはディシャス、次にフェルディス。最後にラージャ。
完全に止まってから、僕はセヴィルさんに抱っこされて地面に降りていきます。
騎獣達は、僕達が地面に立ってからすぐに飛び去ってどこかへ行ってしまった。セヴィルさん曰く、聖獣達は招かれている間はこの神域で自由に過ごしていいんだって。
「いらっしゃーい!」
降りたすぐそばに、フィーさんが待っていました。
「お邪魔しまーす」
「うん、いらっしゃい。ちょっと遅かったねぇ?」
フィーさんがちらっとエディオスさんを見れば、エディオスさんは小さく舌打ちをしていた。
「セリカは久しぶりに飛行すんだから仕方ねーだろ!」
「そーだねー?」
エディオスさんの気持ちも、セリカさんの気持も知ってるのに。わかってて煽るなんて、この神様は意地悪だ。
「ま、それでも普通よか速かったがな?」
サイノスさん達も到着されたようで、降ろされたアナさんの方を見れば表面上は特に変化なし。
やっぱり、セリカさんとは違って想いは伝えずとも接する機会が多いせいか。羞恥心を隠すのは得意みたいだ。
「とりあえず、荷物は本邸に運んでおいたよ。泊まりならあっちの方がいいしね?」
「本邸ですか?」
最初教えてくれた中にあった、フィーさんのお家。
小屋でも充分大きい平屋だったが、それ以上に大きいとは聞いてはいる。
そこにお泊り出来るなんて、少しわくわくしちゃう!
「うん。とりあえず、こっちでの収穫祭を始める前に軽く腹ごしらえしよっか? 特に、クラウはぺこぺこでしょ?」
「ふゅふゅぅ!」
まさにその通りなので、クラウはお腹の音を盛大に響かせた。
その音の大きさに、セリカさんがぷっと吹き出した。
「ふふ、大きな音っ」
「ふゅ?」
クラウと一緒にセリカさんを見れば、本当におかしかったのかくすくす笑っていた。
その隣にいるエディオスさんは、ちょっと困った笑顔で彼女を見ていました。
(さっきまで二人っきりだったけど、大丈夫だったかな?)
二時間も無言って、多分なかっただろうが。
「じゃ、小屋に行こうか? カティアには懐かしい料理が色々あるから」
「ほんとですか⁉︎」
セヴィルさんが言っていた通りに、日本の料理が多いのかもしれない。
あの時とは違い、走ることもなくゆっくりと歩けば、当然聖樹と泉の側を通る。
「ダメだよクラウ?」
「ふゅぅ……」
クラウが一瞬行きたそうになったが、僕が注意すればしゅんっとなって僕の腕の中で大人しく抱っこされた。
いくら神獣でも、そのクラウが飲んでいいからにしたって、がぶ飲みし過ぎたらリーさんの教えてくれた滝壺の時以上に飲み続けるはず。
排泄については驚くほど少ないからって、全くないわけではない。
ここから小屋までは、歩いて15分以上はかかるらしいから途中でトイレに行かせるわけにはいかない。
大自然の中でって、まださせた事がないからだ。
「カティアには懐かしい料理って、何食わせてくれんだよ?」
エディオスさんもお腹が空いてるのか、気になってフィーさんに聞いていた。
「そうだねー? 主食が小麦じゃなくてウルス米なんだー」
「あの柔らかいのかぁ?」
「そうそう。カティアがいた国だとウルス米が主食だったんだ。だよね、カティア?」
「あ、はい!」
じゃあ、今から食べさせてもらえるのはお米がメインなんだ?
丼とかお寿司かな?って思いついても、この世界じゃ箸の需要がほとんどないから、スプーンで食べられるものだろう。
もしくは、おにぎりのような手づかみタイプか。
「メニューについては、着いてから教えるよ」
と言って、フィーさんは少し早めのスキップで先に行ってしまった。
行き先は知ってるし、道はエディオスさん達が覚えてるので問題ないから誰も追いかけはしなかった。
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