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第六章 実り多き秋の騒動
216.小屋までの道のり
しおりを挟む「ふゅふゅぅ!」
ただクラウだけは、ご飯のために追いかけようとしていた。
飛ばせようにも、この子だけじゃ迷子になる可能性があるから我慢させなくちゃ!
「ダメだよ、クラウ。フィーさんはすっごく足が速いんだから追いつかないよ?」
「ふゅ?」
「神気を辿れなくねぇだろうが、神獣だからってまだ赤ん坊だしな?」
「そうなんですか?」
守護獣の絆以外で、力を感知って出来るんだ?
エディオスさんのお話だと、人間なら特殊能力を持ってる以外では感知出来ないが、聖獣とかは匂いや気配で探せなくもないとか。
「とりあえず、行こうぜ?」
ここで立ち止まるわけにはいかないからと、サイノスさんがくいって顎を動かした。
列は、前をエディオスさんとセリカさん。
真ん中を僕とクラウとセヴィルさん。
後ろがアナさんとサイノスさん。
組み合わせは予定通りではある。
あるんだけど、
(なんで全員無言⁉︎)
そう、歩くペースは皆さん子供の体な僕に合わせてくださっているんですが。
何故か誰も会話しようとしないのだ。
前を見ても、エディオスさんとセリカさんの背中だけ。
横顔とか頑張って見ようにも、身長差が激しいから無理でした。
後ろを振り返るにも、もし気まずい空気だったら割り込みにくい。
(あ、それかな?)
意識し過ぎて、かえってどう話した方がいいのか。
きっとそれだと思う。
セヴィルさんは元からそんなに話さないから別。
「ふゅ、ふゅゆ、ふーゅぅ!」
クラウだけは、空気を読まずにご飯が待ち遠しいから歌ってしまってる。
それが良かったのか、隣のセヴィルさんが小さく笑い出した。
「今日はよく歌うな?」
顔を見れば、無表情じゃなくて少し微笑んでいた。
「ご飯が待ち遠しいんでしょうね」
「毎度あれだけ食事をしても、すぐに腹が減るようだしな?」
「底無し沼みたいですよね……」
「それはユティリウスに似てるな?」
「たしかに!」
お帰りになられて半月くらい経つけど、お元気だろうか。
こっちに来てた時はお客様だったけど、一応王様だから今は昨日までのエディオスさん達のように激務の中にいるんだろう。
それでも、フォローに奥さんのファルミアさんがいるから、合間合間に美味しいものは食べてるはずだ。
ここ最近は彼女に識札を送っても、返事が三日過ぎてようやく返ってくるくらい。
そのどれもが『忙しくなって、返事が遅れてごめんなさい』と最初にある。
けれど、お互いの近況や作った料理の情報交換は楽しい。
「ユティなら、昨日までの俺達みてぇだそうだ」
急に、エディオスさんが振り返ってきた。
その表情は、特に何もなくいつも通り。セリカさんに照れてたとか一切見られない。
「やっぱり、お仕事が溜まっていたからですか?」
ここは、気にせずに普通に話した方がいい。
僕が質問すれば、エディオスさんは顔を前に戻しながら話してくれた。
「印が必要なのは、各国の王ならどこも同じだ。俺の場合、そう言うのを更に確認しなきゃなんねぇが」
「昨日までのように、これからもやれ。休みが欲しいのなら定期的にこなせばいいだろう?」
「めんどーなんだよ」
「「面倒で片付けんな(るな)!」」
サイノスさんもこれにはセヴィルさんと一緒に叫んだ。
「……そうですわ。エディお兄様が前々からお仕事の進み具合を早めていたら、昨日までのようになりませんでしたわ」
「へいへい」
「休めなかった余波がこちらまで来たのだぞ」
「いって⁉︎」
生返事したエディオスさんにセヴィルさんが容赦のない拳骨をお見舞いしました。
これには、セリカさんも隣でオロオロしちゃった。
「お、お兄様、大丈夫?」
「……平気だ」
まだ痛そうに頭をさすっていたけど、足取りは特に問題なく普通に歩かれた。
「それよか、もうすぐ着くぜ。カティアは当然だが、セリカも二回目だったよな?」
「え、ええ」
「そうなんですか?」
てっきり、子供の頃は結構来てたと思ってたけれど。
「基本、神域に来ていいのは神王家だからな? ゼルは直系の流れに近い方だからまだ良いが、俺やセリカは六大侯爵家の者でも傍流に近いんだ」
遠縁、だと制限と言うより制約があるのかもしれない。
「僕はいいんでしょうか?」
「お前はいいだろ?」
「特別ですもの」
「だなぁ?」
「そうだな」
「異邦人だもの」
ほぼ同時に、皆さんがそう言ってくれました。
「ふゅー‼︎」
「え、どうしたの⁉︎」
急に暴れ出したので、抱っこしてても抜け出してしまいそうだった。
「ふゅ、ふゅ!」
ちっちゃな手で前、前って指すから何かと思ってセリカさんの横から覗かせてもらうと、見覚えのある建物が見えてきた。
「フィーさんの小屋!」
「ふゅ!」
つまり、クラウは漂ってきた微かなご飯の匂いに堪らなくなってきたってことだ。
「でも、急いじゃダメだよ? ご飯は逃げないから」
「ふゅ!」
ぴっ、と手を上げて敬礼するようにポーズしてくれた。
そんなクラウのために、ちょっとだけ早歩きになって向かえば、着いたと同時に扉が開いてフィーさんが出迎えてくれました。
「ちょうど出来上がったんだよ! どうぞー」
「「邪魔すんぜー」」
「「「お邪魔します(わ)」」」
「……邪魔する」
「ふゅぅ!」
ご飯は何かなーって、エディオスさんから順番に中に入っていくと、香辛料の強い匂いが僕の鼻でも感じ取れた。
「これ、カレーですか⁉︎」
「せいかーい。お箸は使えない子達が多いから、その方がいいと思ってね?」
まさか、異世界でカレーライスを食べれるなんて思わなかった。
一度上がったことのあるリビングに入れば匂いは更に濃くなっていく。
リビングは前と違って大人数で食事をするからか、普段使ってる上層の食堂のように長机に椅子が用意されていた。
「どこでも好きに座っていいよー?」
フィーさんがそう言ってくれましたが、結局はいつも座るような配置になった。
机に置かれていたカレーの量は、どれも普通の盛り付けだったので、お代わりも用意されてるのだろう。
僕はいいけど、クラウやエディオスさんとかはきっとたくさん食べるよね。
椅子に座ってから机の上をちゃんと見れば、カレー以外にもフレンチドレッシングがかかったグリーンサラダやコーンスープも用意されていた。
「お肉って、使ってるんですか?」
ここにきた最初に、フィーさんがお肉はほとんどないような事を言っていたのを思い出した。
「今日は特別。と言っても、保存肉を本邸から持ってきてカレーに入れてるんだよ」
「なんのお肉ですか?」
「ん? 前にエディが倒したのだけど」
「え」
もしかして、魔物のお肉?
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