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第六章 実り多き秋の騒動
223.金ピカの正体
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「……なんだ、あれは……?」
速度が落ちてきたので前を見れば、たしかに『何あれ?』って言うのがあった。
僕が神域に来て最初に目にした、聖樹の葉っぱの色が目に入ってきた時と同じくらい金ピカの光。
この距離だと金色の光が強過ぎて何があるかよく見えない。
けど、道はまっすぐだし目的の広場もおそらくあそこだ。
「ふーゅふゅぅ!」
クラウがじたばたするあたり、あそこにキアルがあるのは間違いないみたい。
「あそこみたいですっ」
「そのようだが、事前に聞いていたのと違うな……」
「え、何を言われたんですか?」
「俺達が聞かされたのは、群生地にあるキアルを頑張って採って来いとだけだが」
「キアルの外見については?」
「楕円に近い、クラウくらいの大きさの茶色の実だそうだ」
キンキラが眩しくなっていく、今目指してるところに比べて真逆の色合いなのに?
「とにかく、急ぐしかない」
また少し速度が上がったので、僕はクラウを落とさないようにぎゅっと抱えた。
そして、セヴィルさんが近づくにつれた光はどんどん強さを増していき、堪らずぎゅっと目を閉じてもまぶたの向こうから光は差し込んでくる。
直視してるセヴィルさんは大丈夫かなって思ってたら、いきなりセヴィルさんが急ブレーキをかけながら止まった。
「……何をしているんだ」
僕じゃなくて、止まった先にいる誰かに言ってるみたい。
光はまぶしいけど見なきゃ、って僕も目を開いたんだけど……。
「……何してるんですか、リーさん!」
「ふゅふゅぅ!」
キンキラキンに輝いてたのは、木とか実じゃなくて前にお会いしたことがある神霊のリージェカインさんだった。
「ははっ、思ったより早かったな?」
けらけら笑いながらあぐらかいてるのは、間違いなくリーさんだ。
フィーさんと似たマイペースっぷり。
僕が知る限り、それが出来るのはこの人?くらいしか知らない。
「なんで金色に輝いてるんですか⁉︎」
セヴィルさんに降ろしてもらってから近づくと、金ピカ状態は収まるどころか輝きを増すばかり!
「んー? ああ、この地にいると神霊は自然と発光しちゃうんだよなぁ?」
って言うと、余計に発光していっちゃう!
クラウもさすがにまぶし過ぎて、ちっちゃなお手手で目を隠してもあんまり意味がなかったみたい。
僕に抱えられながらもじたばた動いてた。
「抑えようにも、俺の場合神域に来ること自体久々なもんでなぁ? ちょっと我慢してくれ」
それより、と僕に何かを差し出してきた。
目を凝らしながらリーさんの手元を見ると、何か茶色のモノを持っていらした。
「けいひん?だそうだ。これがキアルだ」
「これが……」
セヴィルさんが言ってたように楕円形のクラウくらい大きな茶色い実。
ただ僕の両手は塞がっていたから、後から来たセヴィルさんが代わりに受け取ってくださった。
「軽いな……?」
「どれがいいかはわからなかったんで、俺がもいでおいたぞ」
「「え⁉︎」」
「ふゅぅ!」
「ん? なんか悪かったか?」
事情は聞いてないのか、リーさんは僕らの慌てっぷりが理解出来ずに首を傾げた。
「こここ、この実、自然に落ちなきゃ半日しか保たないって!」
「……すまん、俺も今思い出した」
「何してくれてんですか!」
さすがの僕でも怒ります!
「ま、まあ、戻り方はこの木を回れば聖樹に戻れる! それなら半日もかからんだろ⁉︎」
この木、と指したのはもらったキアルが大量に実ってる巨木だった。
枝のそこかしこに鈴なりに実ってる様は、なんか見たことあるような光景。
でも、どこでだっけ?とすぐに思い出せない。
「……しかし、何故ここにいるんだ? フィルザス神が関わっているのなら、奴に呼ばれたのか?」
「あ、ああ。俺以外にも神霊があと二人呼ばれてる。そいつらは他の組の方で、俺と同じくキアルの守りを任されてるんだ」
今日一日限定で、と言い切ってから少しため息。
「……けど、神域なのにどうしてこんな真っ黒なとこなんですか?」
「ああ。実る植物達によるが、ここいらは特にキアルが自生しやすいようにさせてあるんだ」
日の光が当たらなくても、作物って出来ちゃうものなんだ?
でもこの世界は僕からしたらファンタジー満載なとこだから、なんでもありかも。
「他にもセヴィルからしたら大昔に、キアルの旨さの虜になった馬鹿なヒトの子が乱獲したのもあってな? 定期的に神霊が見回りに来なきゃなんないんだ。俺は今回の収穫祭とやらに参加させられただけさ」
神様であるフィーさんの土地でも、欲しいと思うものは手に入れたいって人はいつだっているみたい。
今は、乱獲されないように魔法で隔離するとか色々対策はされてるんだって。
今回僕達がこのキアルを採っていいのは、あくまでクラウの神力補給のためだ。
「……と言うことは、キアルの木とやらはこの一帯にいくつか点在しているのか?」
「察しがいいな? それと、合流しにくいように空間も多少歪めてはある。お前達もだが、他の奴らの逢引のための口実なのだろう? と・く・に、今の神王が」
この人、どこまでフィーさんに聞いたのだろうか……。
野次馬はしないと思うけど……僕が知ってる神霊さんはリーさんだけ。
だから、他の神霊さん達がエディオスさん達に余計な事を言わないか心配だ。
「……とりあえず、戻るか。リージェカインは、俺達が戻れば任は解かれるのか?」
「そ。キアルは特に食べちゃダメだけど、代わりに他のは食べていーいって言われてるし」
セヴィルさんはキアルを魔法袋に入れると、僕とクラウを抱えるのに側まで来て腕を降ろしてきた。
「……それだけだと番と言うより、親子だな?」
地味に傷つく事言わないでください!
僕がよくわかってるから!
「……余計な事を言うな。神霊とて容赦しない」
あ、セヴィルさん結構怒ってました。
いつも以上に低い声に、顔を見なくてみわかるくらいビリビリしたオーラ。
今顔を見たらきっとビビるだけで済まないんで、思いっきり顔を逸らしました。何故か、クラウも真似してた。
「おーおー、こっわい顔しやがって」
なのに、リーさんは全然堪えてなくて何故か呆れていた。
「それだけ独占欲持ってんなら、しっかり守れよ?」
「……言われるまでもない」
「んじゃ、さっさと帰った方がいいな? ここは右から一回ればいい。そしたら、聖樹の前に着くはずだ」
「わかった。行くぞ、カティア」
「あ、は、はい!」
振り返ろうとしたら、既に僕の脇に手が差し込まれてあっという間にお姫様抱っこ。
「じゃ、次会うとしたらこの前のとこだろーが」
「あ、は……ぃい⁉︎」
挨拶しようとしたら、セヴィルさんがもう駆け出してしまってた。
金ピカに輝いてるリーさんの光が見えてたけど、聖樹よりは断然細いキアルの木を一周するのはすぐだった。
光が見えなくなったと同時に、空間が歪んだところにもう入り込んでたようで、景色は曇り空から晴天に。
柔らかい日差しが降り注いだ、美しい緑と金の葉の地面。
リーさんの姿は当然ない、聖樹の前だった。
「着いた……がっ⁉︎」
セヴィルさんがまた動き出そうとした時、背中か頭に何かぶつかったのか彼の上体が激しく揺れ出した!
けど、僕とクラウを抱えているから、倒れないようになんとか踏み止まる。
「あ、悪りぃ。お前らいたのか……って゛⁉︎」
「お前さんら退け⁉︎」
原因判明。
場所は違っててもほぼ同時に全員が戻ってきたので、順番に前の人に当たってしまったみたいです。
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