吸血鬼美少女アバターのままゲームからログアウトできません

こま猫

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第72話 ギルドの依頼は素材回収

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「いや、普通に無謀でしょ」
 就寝前の時間、やっぱり離宮でも俺たち三人は一つの部屋に集まる。まあ、俺に割り当てられた部屋なのだが。
 大きなベッドの上にサクラがカオルを抱き込んだ形で寝ころんで、俺はベッドの脇にあるソファに座って惚れ薬(小)をテーブルの上に置いていた。
 何とかしてミカエルの意識を俺以外の女に向けようと相談したら、あっさりサクラが言うわけだ。
「だって、効き目も(小)でしょ? 運よく飲ませることができたとして、どれだけ持続するの、それ」
 確かにそうだな、と思う。人体実験はしてないが、効き目は薄いだろうし持続時間も短いだろう。
「じゃあ、マチルダ・シティに行って調合しまくってくる。レベルアップして(大)が作れるまで頑張る」
「いや、頑張る方向間違えてるし」
 サクラは呆れたようにため息をついた後、カオルの猫耳を触りながら続けた。「相手はお兄ちゃん相手に頭の中がお花畑とはいえ、王子様なんだよ? さすがに薬物を盛ったら傷害罪で打ち首獄門でしょ」
「死に戻りできるからむしろ大丈夫。死んだふりして夜逃げする」
「いい加減、あきらめなって。無理だってば、アレから逃げるの」
「あきらめんなよ!」
「いやいやいや! でもさ、相手はお金持ちだし玉の輿だし、一生遊んで暮らせるかもしれないじゃん」
「その代わりに貞操を捧げなきゃいけないんだろ!? 無理!」
「だよな……」
 と、カオルがサクラに抱きかかえられた格好で死んだ目をしている。俺の気持ちを解ってくれるのはお前だけだ。
 それに。
「どうせなら、血を飲ませてくれる美少女と恋をしたい。美少女、美少女……解った、あの魔王はどうだ!」
「幼女じゃん! 犯罪だからね!」
「お前が言うな!」
「だよにゃー……」
「とりあえず、明日は幼女魔王に会いに行こう」
 俺はソファから立ち上がり、拳を握りしめた。「お礼をくれるっていうし、告白したら付き合ってくれるかもしれない」
「いや、無理でしょ。相手だって付き合うならわたしみたいな美形の男がいいんじゃない?」
「お前の中身、変態なのに?」
「うるさいよ!」

 冗談の延長上にそんなやりとりをしたものの、口にした後から『魔王と会っておいた方がいい』ような気がしてきたから不思議である。
 でも結局、翌朝になったら大天使たちに一緒にギルドに行こうと言われて連れていかれてしまったわけだが。

 俺はこの時、もうちょっとよく考えておくべきだったと思う。
 魔王に会っておいた方がいいと感じたなら、行くべきだった。そうすれば、色々なものが早く片付いていたのかもしれないのに。
 そういう意味では、俺の幸運の邪魔をしたのは大天使たちだった。
 ただ随分と後になって、ミカエルは「別行動をしたら、あなたという『幸運』に逃げられそうだったので」と言ったのは的を射ていた。この時ばかりは、俺が運で負けたのだ。

「魔物が出なかったから楽勝……だったけど」
 翌日の夕方、俺たちはギルドに帰ってきてリュカが窓口で報酬の受け取りをしているのを見守っていた。大した報酬とはならない、薬草採取。
 セシリアがリュカの手の中を覗き込んで、憐憫の情を露にした目を向けている。
「あなたの借金を返すのは、百年後ね」
「頑張ったんだけどな……」
 肩を落とすその様子は、捨てられた子犬感が出ている。図体だけはでかいから、あまり可愛らしさはないが。
 彼女は苦笑しながらそんな彼の頭を撫でた。
「まあ、頑張ったのは認めてあげる。それに、これは最初の一歩。やり続けていけば随分と遠くまで行けるものよ」
「やり続けて行けば、か……」
 リュカが深いため息をつくと、セシリアは皆の顔を見回した後でこう言った。
「薬草採取ばかりじゃお金にならないものね。数日だけレジーナで活動したら隣に行きましょ? レジーナ近郊は魔物も出ないし、お金になるような依頼なんてないでしょ? でも、神殿の街フォルシウスだったら治安も悪いし、もうちょっと仕事があるはず。あなた一人じゃ無理かもしれない依頼だって、わたしやミカエル、アキラちゃんたちが手伝えばあっという間よ! それに、神殿の様子も見てみたいしね」

 やっぱり俺たちもメンバー入りしてんのな。
 俺は目を細めてセシリアを見るが、彼女は気にした様子もない。

 俺たちはギルドの建物を出て、夕暮れの街を歩く。このまま離宮に戻るのかと思っていたが、セシリアは以前も行った飲み屋に誘って店内に入る。
 どうやらギルド依頼を無事に終えたということで、リュカにお祝いの酒を奢るつもりのようだ。
 客で賑わう店内。店の奥のテーブルに通されて、豪快な料理と酒が並べられていく様子を見ながら、リュカは困惑していた。おそらく、こういう店にも来たことがないし、どうしたらいいのか解らないのだろう。
 さらに、ミカエルは相変わらず俺にだけ優しい笑顔でぐいぐいくるし、サクラとカオルもいちゃついてるし、セシリアはアルトを揶揄って遊んでいるし。
 こんな雑然としつつも楽し気な雰囲気に吞まれたのか、リュカは随分と静かにしていたが、それでも楽しんでいたようだった。店内をきょろきょろと見回しながら、ビールみたいな泡のあるお酒を飲んで、口元を緩ませている。

 そういや、ろくでもない女の姿はないな、と俺は思う。
 前回はこの店まであの女が後をつけてきたが、今はどうしているんだろう。姿を見せるなと言ったから、もうレジーナにはいないのだろうか。
 だったら平和でいいんだが――何か気にかかった。

 数日後、俺たちはフォルシウスに行くことにした。セシリアの移動魔法があるから、宿は取らずに日帰りコース。これをしばらく続けようということになった。
 リュカはセシリアに剣を教えてもらっているとはいえ、初心者に毛が生えたくらいの腕しかないようだ。魔術も初歩的なものが使えるということだが、戦闘向きではないものばかりのようで、セシリアに「あなた、本当に王宮で何をしてきたの」と言われて肩を落としている。
 魔術も魔法も使えないミカエルの方が剣の腕は上だし、場数を踏んできているから遥かに強い。
 それがリュカにも解っているのか、下手に口答えもせず、セシリアに言われるままに従っていた。どうやら随分とセシリアに懐いたようで、見事に子犬化していると言える。
 っていうか、セシリアって聖獣とやらもそうだが、誰かを手懐けるのが上手すぎる。年の功ってやつか。

 で、早速フォルシウスに行った当日。
 俺たちは古めかしいギルドの建物に入り、辺りを見回した。ホールには思ったほどの人影はなく、落ち着いた賑やかさだけがあった。
 ギルドの受付に行って、セシリアが代表して現在の状況を確認すると、若い女性が苦笑しながら教えてくれた。
「魔石回収のため、魔物討伐の依頼は結構出てるんですよ。でも、ほら、例の魔王様騒ぎがあったでしょう? あれから、危険な魔物が出るのが随分と減ったみたいで、この辺りだと暇なんですよねえ」
「あらやだ、じゃあ、せっかく来たのに無駄足かしら」
 セシリアが眉間に皺を寄せると、女性は慌てて首を横に振った。
「いえ、魔道具制作のため、魔石はいくらあってもいいんです。でも、この近辺は魔物が出なくなったというか……ちょっと遠出してもらえたら……って感じですかねえ」
「ああ、なるほどね」

 狩りつくしたのか。
 平和そうで何より。

 そう思ったものの、ギルドのお姉さんの表情は優れない。
「神殿から、魔道具制作の依頼がたくさん出てるんですけどね、深刻な魔石不足なんですよ」
「魔道具制作?」
「ええ。皆さんはご存知ですか? 定期的に聖女様が浄化の旅に出られるでしょう? 警護のために聖騎士団の方々も一緒に行くわけですが、その際、戦闘用の魔道具が必要になるわけで。素材が全然足りてないんですよ。もう、すぐにでも出発したいという神殿側から催促が凄くて……」
「ああ、なるほどね! 浄化の旅ってそろそろだっけ」
「はい」
 そこで、お姉さんが何やら細々と素材一覧が書かれた紙をセシリアに提示してきた。「これが必要となっている素材です。魔石もですが、その他にも色々ありまして。皆さんに割り振っているのですが、遠くまで行った人たちがいつ帰ってくるのかも怪しく……」

 そこまで困った顔をされてしまうと、こちらとしても協力するか、という感じになるわけで。
 いっそのこと、三峯にも協力してもらえばいいんじゃね? 聖女様のためだ、とか言ったら、絶対あいつは喜んで手伝ってくれそうだが。
 とか考えたものの、セシリアがリュカの手を引いて意気揚々とフォルシウスの外へ向かおうとしているので、結局その後を追うことになった。
 そして夕方になって、ギルドの受付窓口にどどんと大量の素材を積み上げることになったわけだ。
 お姉さんもびっくりである。
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