チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號

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第1章

第十話 すべてを飲み込むもの その一

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 屋根の上から街の中心部の広場に目を凝らすと黒ずくめの魔法使いを中心にドラゴンが五体、それに数十のモンスターが待機しているのが見えた。中央にいる魔法使いが街の各方面にモンスターを向かわせているようだ。

 ここからの距離は一キロメートルほどで、相手の気付けないこの遠距離から攻撃を仕掛ける。

 圧縮火炎(マグマ)の槍を三本作り出し、広場に向けて超高速ですっ飛ばす。広場までいったところで、ドラゴンに当てるように方向を変えるつもりだった……。

 しかし槍は広場に到達する前に、オレンジ色の炎と衝突し消えてしまった。火力の違いなのだろうか?一瞬でよく見えなかったが、同じ手は通じないと判断し広場に向かうことにした。

 屋根から飛び降り、3人とともに広場に向けて走っていくと十メートルはある緑色のオーガ二体がドスドスとこちらに近づいてくる。

 圧縮火炎球(マグマボール)を三つ出し、足元を絡みつくように何度も移動させる、膝をついたところに頭部への一撃をお見舞いする。

 巨体であろうと、皮膚が固かろうと関係ない。圧縮火炎球(マグマボール)にMPを常に充填させ火力を上げて、当てると同時に超高熱でえぐる。一つの攻略方法を得た俺は、調子に乗って次々と倒した。

 敵が途切れたところで少し考える。魔法陣から降りてくるモンスターはなくなったが、防衛側の冒険者や軍人も殺されているだろう。

 全体の戦況はわからないし、倒されて魂を取り込まれた人数も不明だ。正面からの正攻法では時間がかかりすぎる。

 ——このままでは駄目だ。

「ルーミエ、ユウキ、ノイリ。ここから単独行動にでいきたいんだ」

 単独行動の方が効率がいいと素直に伝える。

「そうね。私たちではここから先の戦いは厳しいものがあるわ……」と、ルーミエはこの状況を冷静に分析し、撤退を考えていたようだ。

 安全と思われるギルドまで一緒に戻る。ここからは街の外へ逃げる人たちの支援と救助活動を行うと言っていた。

「それじゃあ、行ってくるよ。またあとで……」

「ちょっと、待って……」と、ルーミエが俺の手を引いて止めた。恥ずかしそうに頬を赤らめながら「ご武運を」と、俺を抱きしめてくれた。

 ノイリは控えめにハグする感じで、ユウキは押し付ける防具が痛いほどに抱きついて頬ずりしながら俺の無事を祈ってくれた。

 なんとしても生きて帰ってこないとな……。

 再び街の広場を目指す。目標は広場にいる五体のドラゴンと俺の炎魔法を消せるほどの魔法力を持った魔法使いだ。今の俺の炎の火力ではドラゴンを倒すことができたとしても、魔法使いにはかなわないのかもしれない。

……アイディアと練習しだいで魔法は強くなるってノイリが言っていたっけ。安易な考えだが工夫すれば何か活路は開けるはずだ。

 屋根に上り、今度は通りを行かずに屋根づたいに移動する。十メートルほどの幅があっても、ジャンプで渡ることができる。建物の下にはモンスターがびっしりと行列をなして街の外の方へと向かっている。戦う冒険者がいないことを確認して、屋根の上から圧縮火炎球(マグマボール)をいくつか投げ込みつつ、先を急ぐ。

 走りながら圧縮火炎球(マグマボール)を五つ展開し、屋根の上に現れる敵にぶつけて、致命傷を与えていく。

 広場に着く頃にはレベルも10まであがった。魔法耐性にポイントを全振りして、全体的に底上げをする。

◇ ◇ ◇
Lv10 HP:200/MP:200 
強さ:160 守り:160 器用さ:200 賢さ:160 魔法耐性:120 魔法威力:300 ボーナス:0
◇ ◇ ◇

 広場前の建物に到着し、勢いよく屋根の上から飛び降りた。

 魔法陣からのモンスターの降下も止まり、街の各所へ送り出しているせいか、広場にはドラゴン以外のモンスターが少なくなっているように思えた。

 黒ずくめの魔法使いを凝視すると分析能力が発動する。

◇ ◇ ◇
Lv88 魔道士ドウザ 195cm 100kg
◇ ◇ ◇

 こいつがラスボスのルジアじゃなかったのか……。レベル88相手に10の俺がどこまで対抗できるのだろうか。そんなレベル差を感じ取っているのか、ドウザは余裕の表情だ。

「貴様のように屋根の上から来た奴は五組目だな……」

 ここにいないってことは倒されたのだろう。

「そうか、俺で最後にしてやるよ」

 俺は俺のできることを精一杯するだけだ。

「ほざけ小僧が!……殺れ!」

 ドウザが命じると五体のドラゴンが同時に向かってくる。

 その鱗は剣や魔法を通さないほど固く、その牙は如何なる物も噛み砕くことができると、どの異世界物のラノベでも最強にして最凶の存在。まさにキング・オブ・モンスター……。

 間近でみると巨大で、圧倒的な恐怖で足がすくむが、何度か太ももあたりを叩き気合を入れた。

 五体同時に襲い掛かってくるのだから、これまでの冒険者たちは一瞬でやられてしまったのは当然で、もっと大勢で倒さなければならない敵なのだろう。

 一体のドラゴンがブレスを吐く体勢に入った。

 ブレスに対抗するため一辺およそ十メートルの圧縮火炎(マグマ)の直方体を盾にする。

 ゴオーー!という音でドラゴンブレスが吐き出されたことを感じる。圧縮火炎(マグマ)の盾とぶつかり押されている感じはあるが、貫通してこない。この程度の威力であれば防げそうだ。

 圧縮火炎(マグマ)の直方体にMPを注ぎ込み威力を強化、そしてそのまま前進していき、一体を丸ごと包み込んだ。

 圧縮火炎(マグマ)はドラゴンを骨すらも残さず全てを焼きつくす。残り四体も同じ方法で倒そうと思った直後に、オレンジ色の炎に俺の圧縮火炎(マグマ)がゆっくりと浸食され、飲み込まれてしまい慌てて後ろに下がる。

 遠距離からの攻撃を消したあのオレンジ色の炎だ。

「なかなかの炎使いのようだが、まだまだ火力が弱いようだな」

 続けて攻撃してくるかと身構えたが、オレンジ色の炎はそこで消えた。奴にはそこまでの炎を出し続けることはできないのか?

 俺の圧縮火炎(マグマ)がドラゴンに通用するとわかったので、今度はサッカーボール大の圧縮火炎球(マグマボール)を四つ展開する。自分の周りに展開する分にはドウザもあのオレンジ色の炎で打ち消しに来られないようだ。

 四つの圧縮火炎球(マグマボール)を変則的な動きでドラゴンに向かって飛ばす。一つはシュート回転、一つはドライブ回転、一つは地面すれすれからホップさせる、最後のはカーブ回転。

 それらを打ち消すためのドウザの出したオレンジ色の炎の玉は全弾外れた。制御能力は完全に俺の方が上だ。

 全弾ドラゴンの頭部に命中した圧縮火炎球(マグマボール)を頭部に留まらせ、MPを注ぎ込み大きくして、頭部の表面から徐々に内部にめり込ませていく。

 ドラゴンは圧縮火炎球(マグマボール)を頭から振り落とそうと、もがき暴れている。建物の中に頭を突っ込むのもいた。四体はのたうち回りながら次々と倒れていった。

「貴様……」と、魔道士ドウザから余裕は消え、苦虫を噛み潰した表情をしている。

「残るのはお前ひとりだな」

 ドウザは盾のようにオレンジの炎を展開した。

「お前の炎では儂を倒せんぞ!」

 奴の言うように俺の炎の火力では奴は倒すことはできないが、要は奴より火力のある炎が出せればいい。

——きっと今より火力が強い炎を俺にも出せるはずだ。そう信じてすべてを焼き尽くす炎のイメージを思い浮かべ、圧縮火炎球(マグマボール)にMPを注いでいくとドウザが使っているオレンジ色の炎に変化する。

 さらにMPを充填すると『……もっとだ』と、どこからともなく声が聞こえた。

 言われるがまま100ほど注ぎ込むと、オレンジ色から青色の炎へと変化する。

 青くゆっくりと渦巻く炎の球体。……これなら勝てるか?

『俺様を呼び出した奴はお前か。……いいだろう、面白そうだ』

 炎が喋っている?いや、その声は頭の中に直接響いている。

「誰だ?」と、声に出して問いかけるが、炎のほうが冷静に状況を見ている。

『あとで答えてやるよ。攻撃がくるぞ』

 ドウザが放つオレンジ色のファイヤーボールが三つこちらに向かってくる。

『吸引』

 三つとも青い炎に引寄せられ、飲み込まれる。なんだこの炎は?意思を持っているのか……。

「——まさか、その炎は……」この青い炎の存在を知っているのか、ドウザは焦りを隠せない。

 その存在を維持するためにМPが秒間1ずつ減っている一分で60消費、召喚に100消費。”強さ”ステータスの恩恵で一分間に160回復であれば他にも魔法を出せる。

 ドウザは浮遊魔法で空へと逃げようとしているので箱魔法で捕獲したが、内部から箱魔法を打ち破る気だ。

 ……しかし時間は充分に稼げた。箱魔法が割れた瞬間に足元から青い炎が口をあけ、ドウザを呑み込み、あっけない最後を迎えた。

 俺の意思とは関係なく青い炎は消え、先ほどの声が頭に響く。

『俺はアズアフィアだ。お前に力をくれてやる。好きに使え』

『ありがとう、助かった』

『礼はいい、これからのお前の働きに期待する』

『わかった、期待にそえるよう頑張るよ』
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