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第2章

第124話 第4ダンジョン

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よく晴れた青空、さわやかな朝。

この第4ダンジョンは昨日訪れた第19ダンジョンの入り口と比べるとその大きさは2倍以上あり。それに比例するかのように防災壁内側の面積も広い。

回廊からネネコーラン社の主力部隊およそ60人が現れた。

獣人が15人、竜人が7人、人族が12人、エルフが8人、翼竜人6人の女性で後は男性だ。

ルーミエは綺麗な女性が多く、それで今日のイベントの参加を決めたと誤解していたようだが、そんなことは決してない。たまたまである。

主力部隊のメンバーが広場で待機していた冒険者の間をぬって歩く。

握手やハイタッチをしながら歩いているようで、歓声が聞こえ、アイドルのイベントみたいだ。

男役ができそうな格好いい女の子が数人いる。女性冒険者たちが多いのは、このためかな…。他にもロングヘアの清楚系魔法使い女子、猫耳ショートカットのかわいらしい女の子などなど、個性豊かな大所帯のアイドルグループを彷彿とさせる。

エルフの女の子が俺たちの近くにやってきた。

「よろしくね」

と声をかけられ握手をし、続く翼竜族の女の子とハイタッチをした。

翼竜族は初めて見るが白い羽が肩の辺りから生えていて、触り心地の良さそうな羽毛だなと、思ったが撫でたい衝動をぐっと抑えた。

すれ違う時に武器、防具を分析能力で見ると、ミスリル製やアダマンタイト製でレア度が高いものばかりだ。豪華な装備に身を包んではいるものの、肌の露出も多く、胸元が大きく開いている子もいて目のやり場に困る…。

全員が設置された台の前に並ぶ。

主力部隊は1パーティ4人から6人でパーティ数は12ある。冒険者の間を通り抜ける間、主力部隊のレベルを確認したところ、俺とハイタッチをしたエルフだけがレベル453で頭一つ抜けている。他はレベル150から250の間だった。

現在のルーミエのレベルは…。

ルーミエ
Lv892 HP2450/MP1233
強さ:1530、守り:1000、器用さ:980、賢さ:1020  ボーナス:200

かなり、突出している…。でもそれがチートだ。

「これよりネネコーラン社 副社長クルネラより皆様へのご挨拶がございます」
と、女性の声でアナウンスが流れる。

先ほど握手をした金髪のエルフがお立ち台に上がり話し始める。

「えー、今日は我が社の総力をかけたイベントによく集まってくれた。15年間封印されていた、この第4ダンジョンを我が社で開口できることを誇りに思っている。今日は社外の者でも武勲を上げれば、報奨金をたっぷりと弾むのでその活躍を期待する!以上!!」

広場にいたもの全員が『おおーーー!』と雄叫びをあげる。

「開門準備開始!!!」

それを合図に脇にいた魔法使いが浮遊魔法をかけて、扉をゆっくりと左右にスライドさせて開けていく。

どこからともなく音楽が聞こえる…。いつの間にか防災壁の上には楽団が陣取っていて、ストリングスで勇壮な曲を奏で、拡声魔法で広場全体に届けている。

魔法使いたちは、防御魔法や特殊能力強化魔法でパーティの強化を行っていて、あちこちから詠唱が聞こえ、何やら強化魔法や防御魔法の光が冒険者たちを包んでいる。

いつものようにルーミエと自分に継続治癒魔法をかけて、極私的絶対王国(マイキングダム)を展開しておく。

「緊張している?」
ルーミエに声をかける。

「少しね、みんな強そうだったね…」

「大丈夫。ルーミエも十分強いよ、自信を持っていこう」

待っているとまた、場内アナウンスが流れてくる。

「それではここでネネコーラン社の広報担当のクロワードさんをご紹介します。今日はよろしくお願いします」

「はい、よろしくおねがいします」

さわやかな青年の声がこだまする。どうやら実況中継をしてくれるようだ。

「さあ、扉もあと一枚というところまできていますが、ゆがんでいるため上手く開かないようですので、冒険者の皆さんは、もうしばらくお待ちください。
さてクロワードさん、早速ですが今回のイベントへの意気込みなどを、教えてください」

「我がネネコーラン社は第25ダンジョンを主戦場に置くカンパニーです。社員数は5000人を超え、今年は創立600年目の年に当たります。
創立600年として企画をしていたこの開口式ですが、一桁台のダンジョンに挑むことができるのは本当に光栄なことであり、特別なことでもありますので、気を引き締めて、総力を上げて取り組みたいと思います」

「ネネコーラン社は古くからあるカンパニーの一つで、事業内容はダンジョンの探索、冒険者育成、素材収集から武器、防具の生成、宿屋の運営などを手広く行っていて戦闘能力でもドルトミアでもトップクラスですからね、期待していますよ。
さあ、この間に最後の扉が取り除かれましたが、いったい何が出てくるのか?」

解説が盛り上がっている中、極私的絶対王国(マイキングダム)で確認した俺はモンスターの数が多いと感じて、少し心配になっていた。

先頭はスティール・ハウンドという体長3mから5mはある大型野犬モンスター。特徴は名前も示すとおり鋼鉄のような体躯にある。
そしてトライデント・バッファローという三叉の角を持つ体長5mオーバーのバッファローを誘導している。

バッファローの数は約300体、スティールハウンドが50体を先頭にダンジョンの1層から上がってきていて、まだまだ後ろに別の奴らが続いている。

開門後のしばしの沈黙の後バッファローが勢いよく飛び出してきて、冒険者の中に突っ込んでいく。

「で、でたーーー!!モンスター・パレードの先頭はトライデント・バッファローだぁ!いかがでしょう、さい先いいスタートですね」

実況が興奮している。
「ええ、最上質の肉質を持つトラ・バフとあっては”設営課”も”経理課”も大喜びでしょう」

良い肉だと!?

その視点はさすがになかったな…。

「火炎、雷撃魔法攻撃禁止!!斬撃、打撃のみ!」

…倒すことより肉質を守るための指示が飛ぶ…。難易度が上がってるじゃねーか。

あちらこちらでバッファローを遮るように土壁がせり上がる。先頭は避ける、止まることもできずに勢いよくぶち当たり、地響きが起こる。

ドドドドーー!!
突進がとまり、倒れているバッファローにとどめを刺す者。動きの速いスティールハウンドを牽制し囲み倒している者たち。
数では負けるものの風系、土系魔法とパーティの連携でモンスターたちを余裕で倒していっている。

混乱の中を素早い動きでトライデント・バッファローの死体をアイテムボックスへ回収している奴らがいる。

その行動を追うと、ある程度回収したらいったん下がり防災壁の中へ持って行っているようだ。

…あれは!壁際に4人掛けテーブルが用意されている。開始直後には何もなかったのに…。

最上肉の回収、テーブル席の準備…まさかこれはレストランを営業する気か…。

「さあトラ・バフの数も随分減りましたね」

「まあ、我が社にとっては、これくらいどうということはないですね…。本日は臨場感たっぷりのスタンド席と観客席でレストラン営業をさせていただくので、皆様是非ご利用ください」

何人かの冒険者たちが観戦している人たちに手を振っている。

「長期戦を想定しての営業と言うことですね?」

「はい、ある文献にはモンスター・パレードは15日も続いたという記録もあるので、我々もそれ相応の準備をしています。本日、ゲストで参戦していただいた方には、レストランの利用はもちろんですが、防災壁の向かいにある宿泊施設も無料で開放いたします。また、武器や防具、ポーション関連の商品も3割引でご提供しますよ」

参戦している冒険者たちから歓声があがる。

「そろそろ俺たちも参戦しようか」

「ええ」

ネネコーラン社の冒険者の後ろに回り、脇をそれてきたトライデント・バッファローの首をルーミエが一撃で切り飛ばす。

「おお~、やるぅ~」
という声の主はカンパニーの冒険者からだった。

ルーミエは軽く会釈で返す。

「あたいはケイっていうの」

ルーミエに熊の獣人族の女が声をかける。

「ルーミエよ、そっちは夫のアキトよ」

「よかったら一緒に戦わない?できるだけフォローするからさ」

「ええ、それじゃあご一緒させてもらうわ。よろしくね」

代表者はルーミエであり、俺はサポートに徹するので、思った通りに行動すれば良いと伝えている。

ケイのパーティは5人とも女性で、回復役が1名、攻撃魔法使いが2名、前衛2名という構成と聞いた。広範囲攻撃ができる魔法使いを守りつつ戦うスタイルのようだ。

ほどなくトライデント・バッファローが駆逐され、後からはボーン・ファイター、アーチャー、メイジの大軍団がやってくる。およそ500体。それらが身にまとう装備は全てダイン鉄鋼という硬度の高い素材でできているので手を焼きそうだ。

ルーミエはミスリルの剣は的確に奴らの頭蓋骨を破壊していく。

足下に転がっている骨や武器防具は片っ端から回収屋が拾い集めている。足下を片付けることで安全に戦える環境を作ってくれるのはありがたい。

回復魔法使いのアマンが浄化魔法で一気に30体ほど倒している。あっという間に骸骨の大軍団も残り僅かになっているが、後方からさらにモンスターが迫ってきており、ダンジョン内から次々とモンスターがあふれてくるので、時間との勝負でもある。



鐘が1回鳴るまでの間隔は1時間程度で、開口から3回鳴っている。

ケイが言うにはあと1つの鐘がなったら、次の部隊と交代すると教えてくれた。

すでに壁際で準備を進めているようだ。

これまで数多くのモンスターを倒してきたが、現在戦っている冒険者たちは一様に疲労困憊で、魔法使いなどは魔力切れを起こして座り込んだりしている。
負傷した者はいったん引いて、治療を行っているが大怪我を負った場合、戦線を離脱している。この状態がまだまだ続くのか…。かなり過酷なイベントだな…。

そんな中でもルーミエは順調にモンスターを倒していて、体長10mはあるグリーンドラゴンを、主力部隊が攻めあぐねている中、ブレス攻撃を難なくかわし、鋼鉄をはるかに超える堅さを持つ、ドラゴンの皮膚を切り裂く怪力で胴体を前後左右から切り込み、1人で倒した時には観客席からも広場にいた冒険者たちからも歓声が沸いた。

広場内のレストラン営業は好評のようで、最初に倒したトライデント・バッファローの串焼きが振るまわれていて、みんな上機嫌でビールを飲んでいる。

うまそうだ…。

レストラン席の方によそ見をしていると

「あと少しだアキト、終わったら一杯いこうか」

回復魔法使いのアマンが俺に声を掛ける。

「ああ、いいね…」

と、返すところをルーミエがこちらをにらんでいたので
「いいね。み、みんなでいこう」
と、言い直した。
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