チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號

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第2章

第百六十話 オルビア共和国フォーマント

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 朝日が昇り、朝食の準備を始めた頃にユウキが起きて

「お兄ちゃん、おっはよ!」

と、後ろから抱きついてきた。

「ああ、おはよう。昨日はよく眠れたようだね」

「うん……まさか急に眠ってしまうなんて思わなかったよ」

 俺のMPはチートで一分ごとに”強さ”に設定した分だけ回復するのだが、ユウキは一般的な冒険者と同じであまり回復しない。一定の期間を休めば全回復するといった感じだ。

◇ ◇ ◇
ユウキ Lv922 HP3250/MP1356
強さ:1503 守り:1106 器用さ:1050 賢さ:983 魔法威力:232 ボーナス:0
◇ ◇ ◇

「その感覚には慣れておいた方がいいね、魔力回復量も俺ほど多くないから、この箱魔法みたいに長時間の飛行は難しいかな……」

「わかった。気をつけるよ……あと、昨日寝ちゃってごめんね」

「え?何が?」

「ほら、アレができなかったでしょ?……その……今からする?」

 俺も人のことを言えたものではないのだが、ユウキやルーミエは、こういう行為を始めるにあたり、ムードはまったくない。おそらく思春期に辛い経験をしていて、そういったロマンチックなことには疎いようだ。

 しかし、お誘いは素直に嬉しいので、うまく誘導してあげよう。

「そうだな……まずは朝食を食べて、お風呂に入ってからにしないか?」

 と、伝えると

「やったー!」とバンザイしているのを見るとこちらまで笑顔になってしまう。



 ベッドでの何回戦かのあと、昼過ぎに目的地であるオルビア共和国のフォーマント上空に到着した。上空から分析能力で都市の統計情報を読み取る。

 オルビア共和国の中央部にある山岳地帯の盆地にフォーマントは位置し、人口は八万人ほどで、人族六割、獣人三割、竜人族、ドワーフ合わせて一割で数人エルフがいるようだ。周囲との都市とのアクセスは山道を馬で二日ほどかかるそうだ。ダンジョンも周囲にいくつか点在するようで、冒険者も大勢いる。

 地上に降り立ち、箱魔法から出ると少し肌寒い。高山地帯だから夜はもっと冷えるだろう。限られた土地の中で暮らすために五階建て団地のような建物が多く、これまで西洋風ファンタジー風の家や石畳などではなく、家が密集している感じはチベットやインドなどの雰囲気と似ている。それに主な建築材料は木であるため、火災が起きたら一気に燃え広がりそうだ。

 街に入りまずは拠点となる宿を人に訪ね探す。異世界からの襲撃の情報が伝わっているため、家財道具をまとめて逃げる人、俺たちのように今日やってきた冒険者でごった返している。屋台で売っている餅のような食べ物を買おうとしたら、貨幣が使えないことを指摘された。

 そうか、かなり遠くまで来たもんな……手持ちの貨幣では支払いができないので、先にギルドに向かう。

 ギルドのカウンターで貨幣の交換ができるか確認すると多くはできないが可能とのことなので、当面の生活に必要と思われる額の金貨を五十枚ほど交換し、記録石(キロクセキ)を取り出し情報だけをほしいと伝えた。待っている間にカウンターを通りかかった獣人の女の子が

「見ない顔だからお兄さんも今回の襲撃で来てくれたんだね。ありがとう……情報にも入れているけれど討伐報酬は二倍だよ。がんばってね」

 と、エールを送ってくれた。

 俺は強くなったが”絶対”はない。気を引き締めていこう。

 ギルドを離れ、屋台でうまそうなものを数品ずつ買い込み。人の流れを見ながら食べた。

「やっぱり、街中がピリピリしているね」

「そうだな……」

 広場にほど近い、石造りでいかにも高級そうな建物が今回の拠点となる。一泊二人で金貨十枚のところを半額の五枚で提供してくれたので三日ほど申し込んだ。

 受付の女性がユウキに話しかける。

「今回の異世界からの襲撃に合わせて、こちらにいらっしゃったのですか?」

「ええ……ちょっとでも役に立ちたいなぁって思ってきたのよ」

「ありがとうございます。……小さくて何もない街ですが、私の育った街なんです。それにこの街が始まって以来初めての襲撃で……私どうしたらいいのか……旦那は警備兵をしていて、子どもたちと逃げるにしても、山にはモンスターがいますし……結局残ることを決めました」

「残ってどこに隠れるの?」

「教会に避難します」

 その後も受付の女性の不安な思いを聞き、受付を終え部屋に案内される。

 襲撃前で街も人も暗い雰囲気を拭えない……部屋に入りベッドで横になりながら、ギルド情報を読む。緊急特集で異世界からの襲撃についての記事が書かれてあり、その他は近隣のダンジョンの情報が掲載されてあったが、俺自身がどういう対応をすべきなのか迷っていて記事の内容が頭に入ってこなかった。

「お兄ちゃん、どうしたの?」

 ベッドに腰掛けるユウキ。

「まだ今回の襲撃にどう対応したらいいのか迷っているんだ」

「……あたしはね、絶対的な強さを持つお兄ちゃんがここに来ていることがすでにこの街にとって幸運だとおもうよ。だから、その時に思ったように動けばいいんだよ」

「そうか、難しく考えなくてもいいか……」

「うん……そんなお兄ちゃんに全然関係ない話をしてもいいかな?」
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