チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號

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第2章

第百六十一話 オルビア共和国フォーマント そのニ

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 ユウキは俺が悩んでいるのを見て気を使ってくれている。街の人が傷つくのを見たくなければ全力を出せばいいだけだ。冒険者たちの育成や国の軍備増強は、あとになって悩めばいいだろう。

 俺の布団にもぐり込み、可愛い顔をぐっと近づけて小声で話しかける。

「あのね……あたしのしたいことって、何だったか覚えている?」

「え~っと、エソルタ島の復興を陰ながら支援する。ソフィアとマアヤの結婚のことを心配してたっけ、それに魔法が使えるようになりたいって言ってたけど箱魔法が使えるようになったね……それに寿命が延びたら良いなって感じだったかな?」

「うんうん、ちゃんと覚えてくれてたんだ。ありがとう。それともう一つ……」

「……あ、もしかして赤ちゃんがほしいの?」

「正解!」

「……」

「ダメかな?」

 これまでも避妊はしていないので、いつデキてもおかしくはない。

「ダメじゃないよ」

「……レイラを見ているとね、幸せそうでいいな~って思って……だから、今からあたしのことを愛してほしいの……」

 そして長くゆっくりとしたキスをする。

 愛してほしい……そんなことを言ってくれると、いつもの行為でも、なんだか尊く、愛しく思えた。

 ベッドに横になったまま、もどかしい感じで服を脱がせ合ながらも俺はすべすべとした肌の感触を舌で楽しむ。手を握りその小刻みに変わる強弱でユウキが感じていることがわかる。これまでに何度も何度も体を重ねていて安心して快楽を求める。お互いに気恥ずかしさはなく、どうしたら相手が気持ちよくなるかを一番に考えている。ユウキも俺下着に手を入れて気持ちよい愛撫をしてくれる。

 明日、この街には異世界からの襲撃がある。軍や冒険者、商人や街に住民たちは明日の戦いに向けて準備や避難して、いろんな形で街や愛する人を守ろうとしている。そんな街の喧騒を感じながら、俺たちはひっそりとお互いを求め合い、何度も愛し合う。危機が迫ると種の生存本能が働くと何処かで聞いたことがある。きっと俺たち以外にも愛し合っている人たちもたくさんいるのだろう……。



 襲撃当日。夜明け前にルーミエとカラルを転移魔法陣で呼び寄せる。挨拶もそこそこにルーミエはレイラからの差し入れのお弁当をテーブルに並べ、それを四人で食べつつ情報交換をする。
 
「ノイリは襲撃の時間帯までは特定できなかったことを謝っていたわ」

 日を特定するだけでも十分な情報だ。日が昇っている時間帯ということであれば別にいつでもかまわない。

「アキト様、今日の方針はお決めになられて?」

「まだ、迷ってるんだけれどね……異世界転移魔法陣が通じたら、みんなで向こうの世界に行こう。魔法陣を閉じるかはそのときに決めようと思うんだ」

 食事を終え、宿を出て昨日とは違い閑散としている大通りを歩く。

 小一時間ほど街を散策したところでふと空を見上げると、とちょうど異世界転移魔法陣がじわりじわりと具現化し始めている。

「どうやら、来たようだな……」

 いつもどおりの戦闘準備に入る。継続治癒魔法……発動。

「カラル、ユウキ、手を出して」

 極私的絶対王国(マイキングダム)を発動し街全体を覆う。カラルには、極私的絶対王国(マイキングダム)内をダンジョンとして扱うために、ユウキにはこの感覚を知ってほしくて繋がりながら発動させた。

「冒険者の魂は放置で、モンスターの精気と死体を吸収するようにしておくわ」

「頼む」

 精気の吸収については、悪魔族の結界と俺の極私的絶対王国(マイキングダム)とどちらが強いのか力比べになる。細かいダンジョンの設定はカラルに任せる。

「ユウキ、弓矢の準備をしておいて」

 悪魔族の襲撃はエスタで経験済みだ。何体かのモンスターが降り立ったあと、拠点を築くボス的な存在が降臨するはずだ。

 ユウキの弓矢はカラルが作った白いミスリル製で、弦も強度の高いものを三本重ねて編んだものを使い、円錐状の矢も全て白ミスリル製だ。その攻撃力はドラゴンをも一撃で死に至らしめる。倒せればユウキのレベルも上がるし、自信にもつながるだろう。

「わかった、準備しておくね」

 転移魔法陣が完成し、中からドラゴンが二十体、続いてオーガ、ワイバーンと攻撃力、防御力が高いモンスターの降下が始まる。全体で百体近く降下する中、ようやく敵の大将らしき悪魔とお付のもの五体が降りてくる。箱魔法で屋根の上へ移動し、ユウキに狙撃命令を出す。

「了解。あれだね……はずれるかもしれないけど、やってみるよ」

 先頭のドラゴンが降下中にも弓矢での攻撃が行われたが、下からの攻撃は威力が弱く弾かれてしまっている。並の攻撃では全く歯がたたない。

 ユウキがぎりぎりと音立てながら重い弦を引き絞る。そして狙いを定めて射出した。

 クロックアップ発動!

 矢は目に見えない速さで標的に向かっているので、高速クロックアップでもすぐに到達しそうだ。狙いがずれているので修正して、的の大きい胴体へ極私的絶対王国(マイキングダム)を使い導くとそれでも外してしまったがちょうど頭部にヒットし、敵の大将は即死した。

「いよっし!……ん!?でもお兄ちゃん方向変えなかった?」

「お、よくわかったな。はずれると思って修正したら、頭に当たったよ」

「そんなこともできちゃうの?」

「箱魔法の進化系、極私的絶対王国(マイキングダム)だよ……」

 こちら側での戦闘は冒険者たちにしばらく任せて俺たちは箱魔法で飛び立った。
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