162 / 182
第2章
第百六十一話 オルビア共和国フォーマント そのニ
しおりを挟む
ユウキは俺が悩んでいるのを見て気を使ってくれている。街の人が傷つくのを見たくなければ全力を出せばいいだけだ。冒険者たちの育成や国の軍備増強は、あとになって悩めばいいだろう。
俺の布団にもぐり込み、可愛い顔をぐっと近づけて小声で話しかける。
「あのね……あたしのしたいことって、何だったか覚えている?」
「え~っと、エソルタ島の復興を陰ながら支援する。ソフィアとマアヤの結婚のことを心配してたっけ、それに魔法が使えるようになりたいって言ってたけど箱魔法が使えるようになったね……それに寿命が延びたら良いなって感じだったかな?」
「うんうん、ちゃんと覚えてくれてたんだ。ありがとう。それともう一つ……」
「……あ、もしかして赤ちゃんがほしいの?」
「正解!」
「……」
「ダメかな?」
これまでも避妊はしていないので、いつデキてもおかしくはない。
「ダメじゃないよ」
「……レイラを見ているとね、幸せそうでいいな~って思って……だから、今からあたしのことを愛してほしいの……」
そして長くゆっくりとしたキスをする。
愛してほしい……そんなことを言ってくれると、いつもの行為でも、なんだか尊く、愛しく思えた。
ベッドに横になったまま、もどかしい感じで服を脱がせ合ながらも俺はすべすべとした肌の感触を舌で楽しむ。手を握りその小刻みに変わる強弱でユウキが感じていることがわかる。これまでに何度も何度も体を重ねていて安心して快楽を求める。お互いに気恥ずかしさはなく、どうしたら相手が気持ちよくなるかを一番に考えている。ユウキも俺下着に手を入れて気持ちよい愛撫をしてくれる。
明日、この街には異世界からの襲撃がある。軍や冒険者、商人や街に住民たちは明日の戦いに向けて準備や避難して、いろんな形で街や愛する人を守ろうとしている。そんな街の喧騒を感じながら、俺たちはひっそりとお互いを求め合い、何度も愛し合う。危機が迫ると種の生存本能が働くと何処かで聞いたことがある。きっと俺たち以外にも愛し合っている人たちもたくさんいるのだろう……。
□
襲撃当日。夜明け前にルーミエとカラルを転移魔法陣で呼び寄せる。挨拶もそこそこにルーミエはレイラからの差し入れのお弁当をテーブルに並べ、それを四人で食べつつ情報交換をする。
「ノイリは襲撃の時間帯までは特定できなかったことを謝っていたわ」
日を特定するだけでも十分な情報だ。日が昇っている時間帯ということであれば別にいつでもかまわない。
「アキト様、今日の方針はお決めになられて?」
「まだ、迷ってるんだけれどね……異世界転移魔法陣が通じたら、みんなで向こうの世界に行こう。魔法陣を閉じるかはそのときに決めようと思うんだ」
食事を終え、宿を出て昨日とは違い閑散としている大通りを歩く。
小一時間ほど街を散策したところでふと空を見上げると、とちょうど異世界転移魔法陣がじわりじわりと具現化し始めている。
「どうやら、来たようだな……」
いつもどおりの戦闘準備に入る。継続治癒魔法……発動。
「カラル、ユウキ、手を出して」
極私的絶対王国(マイキングダム)を発動し街全体を覆う。カラルには、極私的絶対王国(マイキングダム)内をダンジョンとして扱うために、ユウキにはこの感覚を知ってほしくて繋がりながら発動させた。
「冒険者の魂は放置で、モンスターの精気と死体を吸収するようにしておくわ」
「頼む」
精気の吸収については、悪魔族の結界と俺の極私的絶対王国(マイキングダム)とどちらが強いのか力比べになる。細かいダンジョンの設定はカラルに任せる。
「ユウキ、弓矢の準備をしておいて」
悪魔族の襲撃はエスタで経験済みだ。何体かのモンスターが降り立ったあと、拠点を築くボス的な存在が降臨するはずだ。
ユウキの弓矢はカラルが作った白いミスリル製で、弦も強度の高いものを三本重ねて編んだものを使い、円錐状の矢も全て白ミスリル製だ。その攻撃力はドラゴンをも一撃で死に至らしめる。倒せればユウキのレベルも上がるし、自信にもつながるだろう。
「わかった、準備しておくね」
転移魔法陣が完成し、中からドラゴンが二十体、続いてオーガ、ワイバーンと攻撃力、防御力が高いモンスターの降下が始まる。全体で百体近く降下する中、ようやく敵の大将らしき悪魔とお付のもの五体が降りてくる。箱魔法で屋根の上へ移動し、ユウキに狙撃命令を出す。
「了解。あれだね……はずれるかもしれないけど、やってみるよ」
先頭のドラゴンが降下中にも弓矢での攻撃が行われたが、下からの攻撃は威力が弱く弾かれてしまっている。並の攻撃では全く歯がたたない。
ユウキがぎりぎりと音立てながら重い弦を引き絞る。そして狙いを定めて射出した。
クロックアップ発動!
矢は目に見えない速さで標的に向かっているので、高速クロックアップでもすぐに到達しそうだ。狙いがずれているので修正して、的の大きい胴体へ極私的絶対王国(マイキングダム)を使い導くとそれでも外してしまったがちょうど頭部にヒットし、敵の大将は即死した。
「いよっし!……ん!?でもお兄ちゃん方向変えなかった?」
「お、よくわかったな。はずれると思って修正したら、頭に当たったよ」
「そんなこともできちゃうの?」
「箱魔法の進化系、極私的絶対王国(マイキングダム)だよ……」
こちら側での戦闘は冒険者たちにしばらく任せて俺たちは箱魔法で飛び立った。
俺の布団にもぐり込み、可愛い顔をぐっと近づけて小声で話しかける。
「あのね……あたしのしたいことって、何だったか覚えている?」
「え~っと、エソルタ島の復興を陰ながら支援する。ソフィアとマアヤの結婚のことを心配してたっけ、それに魔法が使えるようになりたいって言ってたけど箱魔法が使えるようになったね……それに寿命が延びたら良いなって感じだったかな?」
「うんうん、ちゃんと覚えてくれてたんだ。ありがとう。それともう一つ……」
「……あ、もしかして赤ちゃんがほしいの?」
「正解!」
「……」
「ダメかな?」
これまでも避妊はしていないので、いつデキてもおかしくはない。
「ダメじゃないよ」
「……レイラを見ているとね、幸せそうでいいな~って思って……だから、今からあたしのことを愛してほしいの……」
そして長くゆっくりとしたキスをする。
愛してほしい……そんなことを言ってくれると、いつもの行為でも、なんだか尊く、愛しく思えた。
ベッドに横になったまま、もどかしい感じで服を脱がせ合ながらも俺はすべすべとした肌の感触を舌で楽しむ。手を握りその小刻みに変わる強弱でユウキが感じていることがわかる。これまでに何度も何度も体を重ねていて安心して快楽を求める。お互いに気恥ずかしさはなく、どうしたら相手が気持ちよくなるかを一番に考えている。ユウキも俺下着に手を入れて気持ちよい愛撫をしてくれる。
明日、この街には異世界からの襲撃がある。軍や冒険者、商人や街に住民たちは明日の戦いに向けて準備や避難して、いろんな形で街や愛する人を守ろうとしている。そんな街の喧騒を感じながら、俺たちはひっそりとお互いを求め合い、何度も愛し合う。危機が迫ると種の生存本能が働くと何処かで聞いたことがある。きっと俺たち以外にも愛し合っている人たちもたくさんいるのだろう……。
□
襲撃当日。夜明け前にルーミエとカラルを転移魔法陣で呼び寄せる。挨拶もそこそこにルーミエはレイラからの差し入れのお弁当をテーブルに並べ、それを四人で食べつつ情報交換をする。
「ノイリは襲撃の時間帯までは特定できなかったことを謝っていたわ」
日を特定するだけでも十分な情報だ。日が昇っている時間帯ということであれば別にいつでもかまわない。
「アキト様、今日の方針はお決めになられて?」
「まだ、迷ってるんだけれどね……異世界転移魔法陣が通じたら、みんなで向こうの世界に行こう。魔法陣を閉じるかはそのときに決めようと思うんだ」
食事を終え、宿を出て昨日とは違い閑散としている大通りを歩く。
小一時間ほど街を散策したところでふと空を見上げると、とちょうど異世界転移魔法陣がじわりじわりと具現化し始めている。
「どうやら、来たようだな……」
いつもどおりの戦闘準備に入る。継続治癒魔法……発動。
「カラル、ユウキ、手を出して」
極私的絶対王国(マイキングダム)を発動し街全体を覆う。カラルには、極私的絶対王国(マイキングダム)内をダンジョンとして扱うために、ユウキにはこの感覚を知ってほしくて繋がりながら発動させた。
「冒険者の魂は放置で、モンスターの精気と死体を吸収するようにしておくわ」
「頼む」
精気の吸収については、悪魔族の結界と俺の極私的絶対王国(マイキングダム)とどちらが強いのか力比べになる。細かいダンジョンの設定はカラルに任せる。
「ユウキ、弓矢の準備をしておいて」
悪魔族の襲撃はエスタで経験済みだ。何体かのモンスターが降り立ったあと、拠点を築くボス的な存在が降臨するはずだ。
ユウキの弓矢はカラルが作った白いミスリル製で、弦も強度の高いものを三本重ねて編んだものを使い、円錐状の矢も全て白ミスリル製だ。その攻撃力はドラゴンをも一撃で死に至らしめる。倒せればユウキのレベルも上がるし、自信にもつながるだろう。
「わかった、準備しておくね」
転移魔法陣が完成し、中からドラゴンが二十体、続いてオーガ、ワイバーンと攻撃力、防御力が高いモンスターの降下が始まる。全体で百体近く降下する中、ようやく敵の大将らしき悪魔とお付のもの五体が降りてくる。箱魔法で屋根の上へ移動し、ユウキに狙撃命令を出す。
「了解。あれだね……はずれるかもしれないけど、やってみるよ」
先頭のドラゴンが降下中にも弓矢での攻撃が行われたが、下からの攻撃は威力が弱く弾かれてしまっている。並の攻撃では全く歯がたたない。
ユウキがぎりぎりと音立てながら重い弦を引き絞る。そして狙いを定めて射出した。
クロックアップ発動!
矢は目に見えない速さで標的に向かっているので、高速クロックアップでもすぐに到達しそうだ。狙いがずれているので修正して、的の大きい胴体へ極私的絶対王国(マイキングダム)を使い導くとそれでも外してしまったがちょうど頭部にヒットし、敵の大将は即死した。
「いよっし!……ん!?でもお兄ちゃん方向変えなかった?」
「お、よくわかったな。はずれると思って修正したら、頭に当たったよ」
「そんなこともできちゃうの?」
「箱魔法の進化系、極私的絶対王国(マイキングダム)だよ……」
こちら側での戦闘は冒険者たちにしばらく任せて俺たちは箱魔法で飛び立った。
33
あなたにおすすめの小説
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“
瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
だが、死亡する原因には不可解な点が…
数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、
神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる