91 / 168
第3章 偽りの王
異国の街並み
しおりを挟む街へと入るとそこには異国の街並みが広がっていた。
王城を中心に土地は高くなり、そこには建物がぎっしりとつまっていた。
多くの建物は屋根がなく、白壁の四角い建物が所狭しと並んでいた。
一見味気ない建物だが、高さに合わせ街並みを走る塀が空色に染まっており、非常に美しい風景となっている。
それは遠く離れた中央大陸にも伝わっており、アリスもいくらか聞いたことがあった。
「青波の王都か、美しいな」
「はん、そんなのは見てくれだけだよ。
あの壁の中に入れなかった最下層は、犯罪溢れる貧困街だ」
確かに門を潜ってからしばらくの間、塀伝いに坂道を登ってきた。
この鮮やかな街並みを壊さぬように、貧困街ときらびやかな世界を隔てたというわけだ。
しかしそれも仕方ないとアリスは思った。
「貧困街のない街など存在しないさ。
どんな社会にも貧富の差は生まれてしまう。
こればかりは、誰にもどうしようもない。
それに聞くところによれば、ここの王は貧困街の区画整理や仕事の斡旋といった対策までうって出ているらしいではないか。
中々そんな統治者はお目にかかれないぞ」
「本当にそんな美談があるのかね。
何か裏があるとしか思えねえよ…」
遠くを見て苦々しく呟くラックに、アリスは訊ねた。
「ラックは、もしかしてここの貧困街出身なのか?」
「ああ、良い思い出はあまりないがな」
「そうか」
「そんな俺が王様と謁見だなんて、わかんねえもんだな人生は」
ちーちゃんは初めて見る街並みに興奮しっぱなしだった。
トトリの街を遥かに上回る規模。
走っても走っても端が見えない。
「すごーーーーーい、ケロちゃん、すごいよ!!」
「わおん!」
ケロちゃんはとりあえずちーちゃんと一緒にはしゃいでいた。
かつての伝説でケルベロスが破壊した国はもっと大きいというのに、すっかり犬っころである。
「ここなら、お母さんへのお土産見つかりそうだよ」
「おーーい、ちーちゃん。
あまり遠くに行くなよ、迷子になっちまうぜ」
遠くからのラックの注意が聞こえる。
人の往来はちーちゃんがかつて経験したことないほどに激しい。
背の小さな子供など、すっかり飲み込まれてしまう。
肝心のちーちゃんはラックのそんな注意は耳に入らず、人の流れに乗るようにして大通りを進んでいった。
10分後。
ちーちゃんはすっかり迷子となっていました。
0
あなたにおすすめの小説
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる