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第3章 偽りの王
密航の手引き
しおりを挟む「というわけで、中央大陸へ渡ることになりました」
「何がというわけだ、説明をしろ!!」
ラックは端的に説明したが、あまりにも端折りすぎてアリスの反感を買ってしまった。
「まぁ、昔の伝手を頼ってだな、裏ルートで密航できることになった。」
「裏ルートだと!?
貴様、闇商売の者を頼ろうとしているのか?!」
「何を言ってるんだよアリスさん。
厳しい渡航制限が為されている中、正式な手続きで中央大陸へ渡れない中、どうやって渡るつもりだったんですか?
綺麗だの汚いだの言っている状況じゃないんだよ。
それに別に人を殺すわけじゃないんだ。
ただ、人の伝手を頼って、こっそり閑所を通してもらうだけじゃないか。
まったく、これだから頭カッチカチの常識人は困るんだよな。
ねー、ちーちゃん」
「こまるんだよなー」
「ち、ちーちゃんまで!!」
意味もわからずラックの言葉を繰り返すちーちゃんの発言にショックを受けたアリスはガクリと膝から崩れ落ちた。
自分もそれなりに世の中を渡ってきて清濁分かっているつもりであったが、子供にまで諭されるほど分からず屋だったとは。
「・・・分かった、受け入れよう、その提案。
しかしだ、私の目の前で悪事は許さぬぞ」
「はいはい。
ったく、あいつらだって仕事でやってんだ。
好き好んで無意味に人を傷つけるようなことはしねーよ。
なんだと思ってんるんだお前は、動物か何かと勘違いしてないか?」
「似たようなものだろう、悪党など。
はぁ、まさか私が悪党の手を借りなければならない日がくるとは」
アリスは自分の胸に手を置いて大きな溜息をはく。
当日。
アリスたちは朝早く、街の北門前へと集まっていた。
まだ門兵たちが起きる前の時間だ。
東西南北にある街の主要な門は、勿論閉じている。
「おい、もう約束の時間だぞ。
どこにもそれらしき人間が見当たらないのだが、騙されたのではないよな」
「んだよ、細けえやつだな。
少しは待つということを知らないのかお前は。
そんなんだからモテ・・・」
「それ以上言うと、私の魔剣がお前の喉に突き刺さるぞ」
「こえーよ、その脅し文句!」
据わった目でラックを見るアリスの目は本気であった。
ちーちゃんはといえば、朝早いためか、うつらうつらと頭が船を漕いでいる。
約束の時間から5分と経たないうちに、一人の男が小走りでやってきた。
「すまねえ、すまねえ。
ちょっくら手続きに手間取ってな。」
160cmにも満たない小男は、たるんだ体をゆさゆさと揺らしながら近寄ってくる。
いかにも小間使いの様相である。
「今回の依頼は三人・・・あんたたちで間違いないようだな。
こっちへついてきてくれ」
男はアリスたちを目線でつらりと人なですると、首でついてこいとジェスチャーを送る。
その行先にあったのは、主要門の横にある兵達が使用する小さな扉。
男はおもむろに腰から鍵を取り出すと、その扉の鍵穴に差し込みカチャリと回す。
扉は当たり前のように開き、石壁の中にある兵士たちの休憩場を覗かせた。
「この街の警備はどうなっているのだ。
こんなやつらに門の鍵が手渡っているなど・・・」
「何だい嬢ちゃん、こういった仕事を見るのは初めてかい?
へへ、完璧な警備なんてありえないのさ。
あんたみたいに清廉潔白な人間はほんの僅か。
大体の人間が欲にまみれた駄目な人間なのさ。
一握りの人間が頑張っても、穴は簡単に空いちまうのさ。
・・・ほらね」
そういって男は、外へつながる扉を開けた。
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