彼女はオタク男

tsuusan

文字の大きさ
上 下
11 / 14

共演

しおりを挟む
桜庭ゆうま

この名前を聞くと、愛の中に眠る憎悪がよみがえる。

平間ひろしが愛していたアイドル、加藤アイリを奪った男

桜庭ゆうまとの共演を大道マネージャーから聞いた時、愛は、なにか復讐できないか考えていた。ゆうまをぶん殴る?…暴力的ではない元オタク男の愛にそんな事できるはずがなかった。なんとか復讐したい、愛はそう思いながら、ミュージックソングスに出演した。

リハーサルで、奴に会う事はなかった。本番でのご対面、愛の心にどんどん怒りがこみ上げる。


ミュージックソングス本番中


司会の男女が、視聴者に向けて、出演者と会話をまじえながら紹介していく。

女「今大人気の平間 愛さんは、デビュー曲を披露してくれまーす。」

男「愛ちゃん可愛いね。」

愛はとびきり営業スマイルで、カメラを見ながら答える。

愛「はい、よろしくお願いしまーす。」

こんな感じで他の出演者たちも紹介され、ゆうまの紹介になった。

女「桜庭ゆうまさんは、この番組の後の主演ドラマの主題歌を歌ってくれまーす。」

男「ゆうまくん忙しいね。」

ゆうま「はい。実はこの後夜のシーン撮りにいきます。」

男「おぉ、がんばってるね。」

ゆうま「はい。よろしくお願いしまーす。」

一曲目に歌う人たちがセットの所へ行き、歌を歌いはじめた。他の出演者たちは司会の人を真ん中に、後ろや横に座り、順番をまつ。
その時、ゆうまは、愛の隣に座った。
カメラは歌っている人たちを映している。
他の人も歌っている人たちを見ている。
ゆうまはそのスキを狙い、愛に紙きれを渡した。そして小声で愛に話しかける。

ゆうま「すぐしまって。後で見てね。」

愛は突然の出来事に頭の中は真っ白になる、本番中で緊張も重なり、紙きれを衣装の中に隠した。

無事、番組も終わり、愛は楽屋へ戻る。大道マネージャーのボディガードは厚く、他の出演者は、愛に話しかける事は、できなかった。

楽屋へ戻ってきた愛は大道マネージャーに紙きれを渡した。大道マネージャーは、なにこれ顔をしている。愛は説明した。

愛「桜庭ゆうまに渡されました。本番中に。」

それを聞いた瞬間、大道マネージャーは、睨むように愛を見る。言葉少なく愛に質問する。

大道「んで、どうする気?」

その紙きれには連絡先が書かれていた。連絡とる気かお前という意味だった。

大道は、以前、アイリのマネージャーだった。必死にアイリを売り込んできた。アイリもそれに答えて頑張ってくれる。大道は一番近くでアイリを見ていた。
アイリの記事がでた時、大道は愕然とする。自分のタレントを守れなかった悔しさに大道は泣いた。


愛は桜庭ゆうまに連絡するのはあり得ないと思いはっきり伝える。

愛「連絡するつもりは、まったくありません。捨ててください。」

大道は安心顔になった。

大道「そうか、安心した。」



結局、愛は、桜庭ゆうまに復讐できなかった。なにもできなかった自分のふがいなさを感じ、愛はモヤモヤした。

大道マネージャーの運転で、愛は家へ帰った。
しおりを挟む

処理中です...