月の光に照らされた夜に。

梧 哉

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 ちゅ、と小さな音が幾度となく響いて、羞恥に赤く染まったライラに「先に進んでいいか?」と問いかける。
 何を指しているのか理解できていない彼女は一瞬きょとんと不思議そうな顔をしたが、そのあと徐々に理解をはじめたのか、ぷるぷると体を震わせた。

「ばかっ! ばか、ばかっ」

 ライナスの胸を叩く拳の力は弱く、それが照れ隠しであることがすぐにわかった。

「おれにそんなこと言えるのは、ライラだけだ」





 嬉しそうに瞳を細め、ライナスは瞼に、頬に、唇に、と口付けを落としていく。

「ライラ、かわいい」

 口づけられるたびにライナスへとしがみつく細い指がふるふると震えているのに、彼は笑みを深くした。

 ――仕事をしているときとは違って慣れてないのが庇護欲ひごよくをそそるな……。

 胸中でつぶやくだけで、声にはしない。彼女が聞けば、恥ずかしがって逃げてしまうからだ。

「怖くないか?」
「ん、大丈夫」

 腕の中にいるライラの目尻に唇を押し付けて、彼女のネグリジェの裾から素肌をなぞる。
 震える指先に比例して、閉じたまぶたが震えているのを見ると、優しくしたいのに、ひどくしてしまいそうになる。
 相反あいはんする気持ちを隠して、彼女のことだけを考える。はじめての行為で怖いはずの彼女のことだけを。

「……っ……ふ、……」
「声、我慢しなくていい」
「だって……」
「おれしかいないから、恥ずかしがらなくていい」

 恥ずかしがる彼女の唇に柔らかく口付け、薄いネグリジェのリボンをとく。
 幾度となく柔らかいキスをしながら、羞恥で色づいた肌にある柔らかな胸元へ指先を滑らせた。

「んっ……ぁ…っ、あ……!」

 色づく胸先を緩く撫でながら、反対の膨らみに唇を寄せる。

「えっ、あ、なに……?!」
「痛いことはしないから、信じて」
「らいなす?」

 いつもはしっかりしている彼女の、舌ったらずな喋りは、羞恥と快感に頭の回転が緩くなっているのを表していた。

「おれだけを見て、おれだけを感じて」
「らいなす……、ん」

 ライナスの声が静かに響いてーーまるで懇願こんがんしているような気がして、ライラは自分の胸元にある頭をそっと撫でた。

「ライナスは、わたしと出会ってからずっと、大事にしてくれた。だから、わたしもあなたを大事にしたいの」
「あぁ……」
「いつか撫でたいと思っていたの、あなたの頭」
「頭を?」
「……ふふっ」

 嬉しそうに笑った彼女は、何度も彼の頭を撫でる。

「背が高いライナスの頭って、なかなか撫でられないでしょう? こうしていると、お姉さんになった気分」
「お姉さんは困るな」

 ふっ、と小さく笑った彼の息が胸の谷間に落ちる。

「お姉さんには、こんなことできないだろう?」
「……っ、あ、ん…!」
「綺麗に跡がついたな。ーーライラ、愛してる。生涯、ライラ以外をそばに置くつもりはない」
「あ! んっ」
「本当は、子どもはまだまだ先でいいと思っているけど……」
「おなか撫でながら言わないで…っ!」

 ライナスは丁寧な手つきで彼女の薄い腹を撫でて、小さく苦笑いする。

「とりあえず、きみのご両親が安心するように子供を作ってから、おれが満足するまできみをでることにするよ」





「ここにおれとの子を宿してくれ」

 そう言って、ライナスは愛おしそうに目を細める。その表情は、執務を行う合間に見せるものと同じだ。

 胸の膨らみの先を色づかせて身悶えるライラの頬に唇を落としながら、背に回した手を滑らせていく。小さく震えながら濡れた息を吐いた彼女に、欲情を煽られる。

「あまり煽るな」

 わかってやっていればお仕置きも考えなければ、と不穏な思いで問えば、彼女は困惑した表情でライナスをみやった。
 その困惑顔に嘘はなさそうで、はぁ…と大きくため息をついて、ライナスは背中をたどらせていた手を彼女の足へと滑らせた。

「んっ、ぁ……だめ、ん、やぁ……っ」
「だめじゃないだろ?」
「だって、恥ずかしい……」
「これからもっと恥ずかしいことをするのに、今からコレでは最後までもたないぞ?」

 執事のときの口調とは違ったくだけたそれに、ライラの目が開かれ、それから目元にしゅをはいて目をそらした。

「ライラ?」
「…………では……そんな風に話すのね……」
「……素、とも違うが……」

 今度は、ライナスが彼女から視線をそらす。
 それから意を決したように、足を撫でていた指を内側へと移動させた。

「………っ………!」
「濡れてる」
「言わないで……っ」
「でも、おれが喋ると音が聞こえる」
「……うるさい!」

 煽りすぎたのか、目元に潤ませながら吐き出した言葉に、彼は嬉しそうに笑う。

「全部、おれのものだ」
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