月の光に照らされた夜に。

梧 哉

文字の大きさ
8 / 9

しおりを挟む
 ベッドに寝転がったまま、ライラを抱きしめライナスは言葉をつづる。

獣人じゅうじんの話は聞いてる?」
「えぇ。わたしがはじめて猫に変わった日、お父様とうさまが教えてくれたわ」

 獣人の力は色々あるが、そのどれもが『月の力』を必要とする。満月の夜に獣の姿となり、その光を浴びることにより力を蓄える。ただ、今はもうほとんど受け継がれていないその力は、満月の夜に光を浴びても発現することはまれだ。

「奥様からは?」
「お母様かあさま?」
 ライラは小さく首を横に振り、聞いていないと返答した。

「獣人は満月後の一週間、発情期はつじょうきがあったらしい。奥様もそれがあったようで、その時に君を身ごもったと言っていた」
「そうなの?! わたしには何も言ってくれなかったわよ!」

 彼女を抱きしめたまま、ライナスは続ける。

「ライラが恥ずかしがって逃げるかもって思ってたのかもな?」

 にやりと笑みを浮かべて言えば、彼女は首筋までを真っ赤にして「そんなことしないわよ!」と言い放つ。

「真っ赤になって、可愛いな。……明日からの発情期が楽しみだ」





「ライナス、………起きてる……?」
「起きてるよ。――あぁ、はじまったのか」
「ねぇ、おかしいの。あつくないのにとってもあついの」
「それが発情期はつじょうきらしいよ」

 ライナスは前もって聞いていたらしく、焦った様子もない。
 彼女を抱き寄せ、そっと背中を撫でる。それだけで身体を震わせた。

「怖い?」
「……少し」

 正直に答えると、ライナスは彼女の額に柔らかく唇を落とした。

「嫌だったら嫌だと、はっきり言葉にしてくれ。ライラに辛い思いをしてほしくないし、したくない」
「ありがとう。でも、大丈夫よ」
「ライラの大丈夫はアテにならないからなぁ…」
「そんなに信用がないわけ?」

 少し唇を尖らせて頬を膨らませた彼女の姿に、冷たいと言われる瞳を愛おしそうに細めて。

「仕事しているときのライラのはアテにならない。自分でもわかっているだろう?」

 膨らんだ頬に触れるだけの口付けを落とし、そのあと、不満げな唇にも同じように口付けを落とす。

「わかっているわよ……。でも、貴方はいつも気づいてくれるじゃない? だから、強がって大丈夫って言えるの」

 彼の唇は、そう言う彼女の唇に幾度となく口付けていて。

「聞いてる?」
「聞いてる。信頼されてるのが嬉しくて、自分をりっしないとライラを壊しそうだ」
「こっ、……!!」

 驚きに言葉を失った彼女の唇に幾度となく口付け、不満げだったライラの顔は、みるみるうちに真っ赤に染まった。

「領地を思って頑張るライラも、月の光で可愛い猫になってしまうライラも、おれに真っ赤にされてしまうライラも……全部ひっくるめて愛している」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...