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「初心者なんだから、手加減してよね!」
などど、軽い口調で言い放ったのが嘘のように、ライラは熱い息に翻弄されている。
夕食をとり、いつもは一人で気楽に入っていたバスタイム後、外で待機していた侍女にあれこれと世話をやかれて満身創痍になってしまった。
いつもは侍女は待機しておらず、自分の好きなように手入れをし、着替えていた。それがどうだろう、今日は文句を言う気力がなくなるほどに世話をやかれた。
「旦那様と奥様に申しつけられておりますので」
どうしてこんなに世話をやくのかと問えば、侍女はそう言った。
ライナスの書類の手配をしたのだから、知っているはずよね……。
両家の了承を得て、婚約は成立する。その書類は、本人が当主に申し出て、了承すれば当主が作成する。
それは、わかっているのだが……。
両親がこうなることをわかっているってことが、恥ずかしい。
窓際のソファに腰かけ、両手で頬を包む。
二人が帰ってきたときに、どんな顔して会えばいいの……!
「ライラ?」
聞き慣れた大好きな声が聞こえて、ライラはびくりと体を大きく震わせる。
「すみません、びっくりさせてしまいましたね」
「だ、大丈夫よ」
ノックしても返事がなかったから勝手に入ってきた、とライナスは言いながら、彼女の頬にあった手をとった。
「真っ赤だ。……可愛いな……」
「なっ、なに言って……っ」
「色々と頭で考えすぎ。侍女たちも下がらせたし、今はおれだけだ。もっと自分を出していいんだよ」
そんなこと言われても……!
真っ赤なままの頬に、ライナスの柔らかなキスが落ちる。
「おれの言う通りにして」
言いつつ、彼はライラの隣に座って抱き寄せる。
「このまま、ゆっくり息を吸って」
大好きな声が耳元にあって、ライラはびっくりして体を離そうとしたが、彼はそれを止めた。
逃れられないとわかって、彼女は大人しく彼に従い、ゆっくりと息を吸う。
「ゆっくり息を吐いて。……そう、ゆっくりな」
ライナスは腕の中に囲い込んだライラのつむじに唇を寄せた。
「落ち着いた?」
こくり、と頷いた彼女の顔は赤いままだったが、混乱していた思考は回復しているようだ。
「なんだか、ライナスがいつもと違って……どきどきするわ」
「煽るな」
「煽る?」
小首を傾げる彼女を見やり、小さく息を吐く。
ライラは、男女の付き合いがなかったな。奥様がわざと教育をしなかったのか、旦那様が男と関わることを嫌って、付き合いを制限していたのか……。
「今まで男性に声をかけられたことはないのですか?」
思わず問い掛ければ、彼女はそれに少し思考して、すぐに答えを返した。
「ある、と言えばあるのかしら。でも、わたしは気にしたことがなかったから」
「気にしたことはない?」
「そう。ドレスを着てダンスを踊って、いろんな方とお話をして……でも、そこにライナスはいないんだもの。それよりも、せっかくの二人きりなのに、どうして執事に戻ってしまうの?」
ライナスの質問をそれよりと軽く終わらせたライラに、彼はふ、と小さく笑って。
「ごめん」
執事の時間のほうが長く、質問するときは執務中が多いため、つい出てしまったようだ。それに短く謝ると、ライラはふわりと微笑んだ。
「どっちも好きだけど、今は側にいるのはわたしだけ。執事じゃない、わたしだけが知っているライナスがいいわ」
「じゃあ、もっとおれを知ってもらわないとな」
ライナスはソファに座るライラを抱き上げると、ベッドの上にその体を下ろした。
などど、軽い口調で言い放ったのが嘘のように、ライラは熱い息に翻弄されている。
夕食をとり、いつもは一人で気楽に入っていたバスタイム後、外で待機していた侍女にあれこれと世話をやかれて満身創痍になってしまった。
いつもは侍女は待機しておらず、自分の好きなように手入れをし、着替えていた。それがどうだろう、今日は文句を言う気力がなくなるほどに世話をやかれた。
「旦那様と奥様に申しつけられておりますので」
どうしてこんなに世話をやくのかと問えば、侍女はそう言った。
ライナスの書類の手配をしたのだから、知っているはずよね……。
両家の了承を得て、婚約は成立する。その書類は、本人が当主に申し出て、了承すれば当主が作成する。
それは、わかっているのだが……。
両親がこうなることをわかっているってことが、恥ずかしい。
窓際のソファに腰かけ、両手で頬を包む。
二人が帰ってきたときに、どんな顔して会えばいいの……!
「ライラ?」
聞き慣れた大好きな声が聞こえて、ライラはびくりと体を大きく震わせる。
「すみません、びっくりさせてしまいましたね」
「だ、大丈夫よ」
ノックしても返事がなかったから勝手に入ってきた、とライナスは言いながら、彼女の頬にあった手をとった。
「真っ赤だ。……可愛いな……」
「なっ、なに言って……っ」
「色々と頭で考えすぎ。侍女たちも下がらせたし、今はおれだけだ。もっと自分を出していいんだよ」
そんなこと言われても……!
真っ赤なままの頬に、ライナスの柔らかなキスが落ちる。
「おれの言う通りにして」
言いつつ、彼はライラの隣に座って抱き寄せる。
「このまま、ゆっくり息を吸って」
大好きな声が耳元にあって、ライラはびっくりして体を離そうとしたが、彼はそれを止めた。
逃れられないとわかって、彼女は大人しく彼に従い、ゆっくりと息を吸う。
「ゆっくり息を吐いて。……そう、ゆっくりな」
ライナスは腕の中に囲い込んだライラのつむじに唇を寄せた。
「落ち着いた?」
こくり、と頷いた彼女の顔は赤いままだったが、混乱していた思考は回復しているようだ。
「なんだか、ライナスがいつもと違って……どきどきするわ」
「煽るな」
「煽る?」
小首を傾げる彼女を見やり、小さく息を吐く。
ライラは、男女の付き合いがなかったな。奥様がわざと教育をしなかったのか、旦那様が男と関わることを嫌って、付き合いを制限していたのか……。
「今まで男性に声をかけられたことはないのですか?」
思わず問い掛ければ、彼女はそれに少し思考して、すぐに答えを返した。
「ある、と言えばあるのかしら。でも、わたしは気にしたことがなかったから」
「気にしたことはない?」
「そう。ドレスを着てダンスを踊って、いろんな方とお話をして……でも、そこにライナスはいないんだもの。それよりも、せっかくの二人きりなのに、どうして執事に戻ってしまうの?」
ライナスの質問をそれよりと軽く終わらせたライラに、彼はふ、と小さく笑って。
「ごめん」
執事の時間のほうが長く、質問するときは執務中が多いため、つい出てしまったようだ。それに短く謝ると、ライラはふわりと微笑んだ。
「どっちも好きだけど、今は側にいるのはわたしだけ。執事じゃない、わたしだけが知っているライナスがいいわ」
「じゃあ、もっとおれを知ってもらわないとな」
ライナスはソファに座るライラを抱き上げると、ベッドの上にその体を下ろした。
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