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緩く繋がれた指が暖かい。
人混みに入る前に、少しだけ力をこめて握られる、その強さも心地いい。
見下ろされる視線は柔らかいけれど、時々、強い視線が落ちてくる。
「高いところは平気?」
「あまり得意じゃない、です」
「そっか。じゃあ、あれはやめとく?」
昶が指をさしたのは小さいが高い位置にある観覧車。
「観覧車なら大丈夫だと思います」
「無理しなくていいよ?」
「あの……手、繋いでくれてたら大丈夫だから……」
真っ赤になりながら来実が俯きながら言えば、昶は少し彼女から視線を外しながら繋いでいない手で口を覆う。
可愛いんだけど……!!
「せっかくだし、行ってみようか」
外していた視線を彼女へ戻し、手を握り直す。
彼女の歩調に合わせてゆっくりと歩き、目的の場所に到着した。
「わあ……高いですね」
「そうだね、ほんとに大丈夫?」
「だ、ダイジョーブです」
片言で喋る来実を見ながら、くすくすと笑う。
券売機でチケットを購入して、観覧車の列に並ぶ。
自分たちの順番になり、昶は手をひいて乗り込み、先に来実を進行方向に座らせる。そして、その隣に昶は座った。
「こういうのは、進行方向に向いて座る方が怖くないんだ」
昶は手を繋いでいた左手をはずして、その手を彼女の左肩へ伸ばして引き寄せ、自らの右手で彼女の右手を取った。
「怖い?」
「怖くないです」
「よかった」
右手をそのまま持ち上げ、昶は手の甲に口付ける。
自分の右手の行き先を自然と追っていた来実は、その行為に目を見開いた。
「可愛くてつい。……手が早いから、おれのこと嫌になった?」
少し困ったように微笑んだ昶に、来実は首を横に振る。
「急だったから。――あと……こんなこと、されたことないからびっくりして……」
「そっか。これでも相当自重してるんだけど、もっと我慢しておいた方がいいかな…」
言葉の後半は、完全なる昶の独り言だ。
「我慢……してるんですね」
「うん、これでも結構してる。ホントは、キスもしたいし、抱きしめたいし、閉じ込めたい。でも、今日それをすると嫌われるか怖がられるってわかってるから」
「全然、見た目にあいませんね」
「だろう?」
苦く笑いながら、昶は来実の手を自分の左胸に押し当てる。
「わかる? これでも結構、緊張してる」
押し当てられた来実の手に、ドキドキと鼓動が伝わってくる。
「有言実行、なんでしょう?」
来実は見上げて言った。
「そうだったな」
だったら――。
「さっきの言葉も、有言実行してもいいかな?」
さっきの言葉?
咄嗟に思い浮かばず小首を傾げた来実に、昶がにやりと笑う。
「―――――!!」
思い出して、赤面する。
「ここでは、ちょっと……」
「わかってる。あ、ほら、あと少しで頂上だよ」
言われて来実は思わず横から下を見てしまう。その高さに固まった彼女の姿に薄く口元に笑みを浮かべて。
「来実、こっち向いて?」
呼ばれた方へと顔を向ければ、ちゅ、と小さな音を響かせて昶の唇が来実の唇に触れた。
「佐藤さ……!」
ちゅ、とまた音がして、昶の唇がはなれた。
「これで怖くなくなっただろ?」
にやりと笑われて、頭の中が昶とのキスでいっぱいになって、高さが怖くなくなっていることに気づく。
「嫌なら嫌って言わないと、本気でおれに喰われるぞ?」
「こんな経験ないからわからないです…っ!」
「ないの?」
「こんな外でなんて…っ」
「でも、嫌じゃないんだ?」
言いつつ、来実の手を解放して、右手で彼女の顎を持ち上げ、顔を近づける。
「マジ、可愛い」
昶は彼女の唇に、自らのそれを触れるギリギリまで近づける。
「今ならまだ引き返せるよ?」
「……そんなことしません」
「怖くないの?」
「怖くないです」
好きだよ。
昶は唇を緩く触れあわせて吐息まじりでそう言うと、そっと押し当てる。
触れて離れてを繰り返し、地上が視界に入る頃、ようやく来実を解放した。
「あとでちゃんと食べるから」
にっこり笑顔で扉が開く直前に言って、昶は上機嫌で来実と手を繋ぎなおした。
人混みに入る前に、少しだけ力をこめて握られる、その強さも心地いい。
見下ろされる視線は柔らかいけれど、時々、強い視線が落ちてくる。
「高いところは平気?」
「あまり得意じゃない、です」
「そっか。じゃあ、あれはやめとく?」
昶が指をさしたのは小さいが高い位置にある観覧車。
「観覧車なら大丈夫だと思います」
「無理しなくていいよ?」
「あの……手、繋いでくれてたら大丈夫だから……」
真っ赤になりながら来実が俯きながら言えば、昶は少し彼女から視線を外しながら繋いでいない手で口を覆う。
可愛いんだけど……!!
「せっかくだし、行ってみようか」
外していた視線を彼女へ戻し、手を握り直す。
彼女の歩調に合わせてゆっくりと歩き、目的の場所に到着した。
「わあ……高いですね」
「そうだね、ほんとに大丈夫?」
「だ、ダイジョーブです」
片言で喋る来実を見ながら、くすくすと笑う。
券売機でチケットを購入して、観覧車の列に並ぶ。
自分たちの順番になり、昶は手をひいて乗り込み、先に来実を進行方向に座らせる。そして、その隣に昶は座った。
「こういうのは、進行方向に向いて座る方が怖くないんだ」
昶は手を繋いでいた左手をはずして、その手を彼女の左肩へ伸ばして引き寄せ、自らの右手で彼女の右手を取った。
「怖い?」
「怖くないです」
「よかった」
右手をそのまま持ち上げ、昶は手の甲に口付ける。
自分の右手の行き先を自然と追っていた来実は、その行為に目を見開いた。
「可愛くてつい。……手が早いから、おれのこと嫌になった?」
少し困ったように微笑んだ昶に、来実は首を横に振る。
「急だったから。――あと……こんなこと、されたことないからびっくりして……」
「そっか。これでも相当自重してるんだけど、もっと我慢しておいた方がいいかな…」
言葉の後半は、完全なる昶の独り言だ。
「我慢……してるんですね」
「うん、これでも結構してる。ホントは、キスもしたいし、抱きしめたいし、閉じ込めたい。でも、今日それをすると嫌われるか怖がられるってわかってるから」
「全然、見た目にあいませんね」
「だろう?」
苦く笑いながら、昶は来実の手を自分の左胸に押し当てる。
「わかる? これでも結構、緊張してる」
押し当てられた来実の手に、ドキドキと鼓動が伝わってくる。
「有言実行、なんでしょう?」
来実は見上げて言った。
「そうだったな」
だったら――。
「さっきの言葉も、有言実行してもいいかな?」
さっきの言葉?
咄嗟に思い浮かばず小首を傾げた来実に、昶がにやりと笑う。
「―――――!!」
思い出して、赤面する。
「ここでは、ちょっと……」
「わかってる。あ、ほら、あと少しで頂上だよ」
言われて来実は思わず横から下を見てしまう。その高さに固まった彼女の姿に薄く口元に笑みを浮かべて。
「来実、こっち向いて?」
呼ばれた方へと顔を向ければ、ちゅ、と小さな音を響かせて昶の唇が来実の唇に触れた。
「佐藤さ……!」
ちゅ、とまた音がして、昶の唇がはなれた。
「これで怖くなくなっただろ?」
にやりと笑われて、頭の中が昶とのキスでいっぱいになって、高さが怖くなくなっていることに気づく。
「嫌なら嫌って言わないと、本気でおれに喰われるぞ?」
「こんな経験ないからわからないです…っ!」
「ないの?」
「こんな外でなんて…っ」
「でも、嫌じゃないんだ?」
言いつつ、来実の手を解放して、右手で彼女の顎を持ち上げ、顔を近づける。
「マジ、可愛い」
昶は彼女の唇に、自らのそれを触れるギリギリまで近づける。
「今ならまだ引き返せるよ?」
「……そんなことしません」
「怖くないの?」
「怖くないです」
好きだよ。
昶は唇を緩く触れあわせて吐息まじりでそう言うと、そっと押し当てる。
触れて離れてを繰り返し、地上が視界に入る頃、ようやく来実を解放した。
「あとでちゃんと食べるから」
にっこり笑顔で扉が開く直前に言って、昶は上機嫌で来実と手を繋ぎなおした。
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