Red Crow

紅姫

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監獄の陰謀⑤

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「コイツはルーク。アリスの護衛を頼んだ。仲良くしてくれ」

ユウが連れてきた彼を見て、僕はポカンとするよりなかった。


この国に来て3日目。
まさか、ユウが居るのが平和の国と名高いミール国とは思わなかった。

総統であるリュウイは、いとも簡単に僕を受け入れ、『新幹部としてよろしく』とブンブンと手を握り振られたのは記憶に新しい。


その後、国の幹部達と顔合わせをしたが、今目の前にいる人は間違いなく初対面だ。

白髪に深い海を煮つめたような青い瞳。
引き込まれるような整った顔立ち。
一度見たら忘れなさそうなほど特徴のある容姿をしている。


「ルークはちょっとした用事で国を離れていてね。顔を合わせるのが遅れたんだ」

心を読んだようにユウが説明する。

「アリス、君にとってこれ以上ない程のパートナーだと思うぞ」

「え?」

「じゃあ、私はこれで。ルーク、あとは頼むぞ」

ユウはさっさと部屋から出ていった。











「は、はじめまして。アリスです…」

「敬語じゃなくていい。さっき説明されたが俺はルーク。よろしく」

冷たい雰囲気を感じていたが、話してみれば、言葉はぶっきらぼうだが、こちらに気を使わせないようにしてくれているようだ。
この国の人たちは皆優しい。
それは3日しかここに来てたっていない僕でもよく分かる。
彼だって例外ではないなと安心する。

「研究者なんだってな。ユウィリエから聞いたよ」

「あぁ、そうなんだ」

「カラー武器について調べてるんだろ?聞きたいことがあれば何でも聞いてくれて構わないよ。答えられることなら答える」

「え?」

「ん?」

首を傾げれば、ルークも首を傾げる。

「…あ~もしかしてユウィリエから何も聞いてない?」

「はい…」

「そうか、そりゃすまなかった」

とルークは呟き、

「ちょっと待ってて」

と部屋から出ていった。


立って待つ必要もないだろうから…と椅子に腰を下ろした。
研究所のとき使っていた椅子とは比べ物にならないほど上質なものだ。

一人で使うには広めの部屋。本をたくさん使うだろうからと本棚が多くある部屋をあてがってくれた上に、隣の部屋はこの国の図書室だった。
案内されたときに見せてもらったが、かなり希少な本も揃っていたため読むのが楽しみである。
『図書室に入り浸ってもいいぞ。でも、飯は食いに来いよ』
と目をキラキラさせていたであろう僕にユウは言ったものだ。
ここでなら…満足行く研究ができるかも知れないと思った。



「入るぞ」

考え事をしていればルークが戻ってきた。
手には二本の剣。

僕の前の席に腰掛けてルークは剣を机に置いた。

「言葉で説明するより見てもらったほうがいいと思ってな」

と、鞘から剣を抜いた。



「!!!」



青い双剣。
まるで同じ形をした剣。

コレは…!


「カラー武器…」

「そう、俺はカラー武器『青』の保有者」

開いた口が塞がらない。

カラー武器の保有者が目の前にいる。

「ユウィリエはそれを知ってたから俺をお前の護衛に選んだんだよ。研究の手助けをしてやれってさ」

『君にとってこれ以上ならないほどのパートナーだと思うぞ』
先程のユウの言葉が頭に浮かんだ。
なるほど…確かにこれ以上ならないほどの相手である。
ましてや、研究に協力してくれるみたいだ。

「何か聞きたいことができたら言いな。俺に答えられることは答えるよ」

ルークは優しく笑った。


なんとなく、今日いきなり話を聞くのはなんだと思った。でも、知りたいという思いもある。

悩んだ末に出た言葉は

「ルークは自分の他にカラー武器を持ってる人を知ってる?」

だった。

予想外の質問だったのかルークは驚いていた。

「知ってるけど、それが?」

「僕、ある人を探してて…その手がかりがカラー武器だったから研究を始めたんだ」

口がスルスルと動いて、経緯を話す。
ルークは黙って話を聞いてくれた。

「なるほどね。赤いカラー武器の保有者を探してると…」

「うん、知らないかな?」

「…」

ルークは困ったように苦笑した。
だが、その顔は『知らなくて申し訳ない』という顔ではなく、『どうつたえればいいものか』と思案しているように見えた。

「多分、お前もう会ってるぞ?」

「え?」

ルークの言葉に首を傾げた。

「俺が唯一知ってるカラー武器の保有者なんだがな。本人から聞いたわけじゃないけど前に、いじってるのを見たことがあってな。その時確かに赤いナイフを持ってたよ」

「だ、誰!それ」

こうもあっさりと情報が手に入るなんて…!


「ユウィリエだよ。アイツがカラー武器『赤』の保有者だと思うぞ」


ユウィリエ…?
彼が?
でも…。

「僕がその子と会ったのは20年くらい前だ。ユウが生まれてるとは思えないんだけど」

明らかにユウの方が若いはずだ。

「…アイツ若く見えるだけで、今29だぞ」

「え!?」

29…。それなら確かに…あの子と出会ってからの年月を足せばそれくらいになるはずだ。

じゃあ…ユウが…。

「良かったな、アリス。お前のヒーローは、今ではお前の仲間だぞ」

ルークは笑う。嬉しそうに笑う。

「ユウィリエは書記長室にいると思うぞ」

僕は立ち上がっていた。






















トントンっ
とノックをして返事を聞かずに扉を開けた。

「アリス?」

走らせていたペンを止めてユウが僕を見る。

「ユウ」

「どうした?」

「僕、ユウに言いたいことがあって…」

改めてユウの顔を見る。
そういえば…あのときの子供の輝く瞳は…赤かったな。
そんなことが思い出された。
もっと早く気がついていたら、出会ったその時に『もしかして…』と思うことができたかもしれないなと歯噛みしたい気持ちになる。

ユウに近づき、その手を握る。

そして、ずっとずっと言いたかった言葉を口に出した。

「ありがとう」

「え?」

「助けてくれてありがとう」

「あぁ…監獄でのことか?気にするな、逆に私が赤烏だと話さないてくれて有り難いくらいだ」

「それもだけど…それだけじゃないんだ」

「?」

首を傾げるユウ。

「僕…昔…」

僕がカラー武器の研究をすることになった経緯をユウに伝える。
話していくうちに、大きく見開かれていく瞳。


「お前…あの時の…」


覚えていてくれたのか、ユウも僕のことを。


「覚えてるよ、あの時見逃した子供のこと。そうか…お前が…」

ユウは安心したように笑う。

「気にしてた。父親を殺して親がいなくなったあの子供がどうなったのか。調べてみたけど、全く分からなくてな…。でも良かった」

「ありがとう」

「父親を殺した相手にそれを言うのか?」

「僕にとっては悪魔のような人だった。あの時、ユウが来てくれたから…僕はここまで来ることができた」

「そう」

ユウはフフッと笑って

「なら殺したかいがあるってもんだな」

そう言った。


「伝えてなかったが…私もお前の研究に協力するよ。カラー武器の事については人並み以上に知ってるつもりだからな」

「ほんと!」

「仲間なんだから助け合うのは当たり前さ」


仲間…。


心が暖かくなるのを感じた。
憧れていた仲間は、すでに手に入っているのだ。

「アリス」

ユウは言う。



「私達は君を歓迎しているよ。だから…











ずっとここに居な」





その言葉がどれだけ嬉しいものか、僕には表現するすべがなかった。






ただ、1つだけ感じたのは
きっと、これからの毎日は
僕にとって、幸せで、満ち足りたものになるだろうという予感だった。
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