Red Crow

紅姫

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監獄の陰謀④

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監獄に収容された次の日の夜。
僕は監獄から出され、最上階の部屋へと連れて来られていた。

「入れ」

とここまで連れてきた刑事に言われ部屋に入る。


薄暗い部屋だった。
そこには二人の人物がいて、こちらを見つめていた。
一人は座り、一人は立っている。


「やぁ、アリス=カレン」

座っている顔立ちの整った男が口を開いた。
何故だろうか…知りもしないその男にひどい嫌悪感を抱いた。

「俺はサンバドール。国際警察の最高指揮官だ。コイツはバートランド。

君を呼んだのはね、ちょっと話をしたかったからなんだ」

ゆったりとした口調でサンバドールは言い、立ち上がる。

「ココに収容した理由は知ってるよね?実はね、俺達の調査で…君が一番疑り深いと言う結果が出たんだ」

「な、何を言って…」

「よくまあ…研究所の調査を掻い潜ったもんだよねぇ」

「!!?」

いつの間にやら後ろにいたバートランドに足を払われ、しゃがみこむ。
ぐいっと髪を捕まれ、上を向かされた。

ニタニタと笑うサンバドールが目の前にいた。


「このままだと、君は死刑だ」

「僕は…犯罪者なんかじゃ……ない…!」


しぼりだすように言う。

「犯罪者は皆そういうよ」

クツクツと笑って、サンバドールは続けた。

「死刑にするところなんだけどね。君は優秀な存在だ。ココで殺すのは惜しい。

そこで…僕と取引をしないか?」

何を言っているんだコイツ…。

「君が研究しているカラー武器についての知識を僕にくれ。そうすれば、君の死刑はなかったことにしてあげるよ」

やっぱり…。

「やっぱり…それが……目的か…」

「やっぱり?」

「第二の…カラー武器の…作成…」

「ほう…。これは驚いた。気づいているとはな」

サンバドールは面白そうに言う。

「その通りだ。俺達の目的は第二のカラー武器の作成だ。
でもそれは、戦争のためではない。国際警察のためだ。

この世界に犯罪者が居続けるのは国際警察に人々を恐れさせる力がないからだ。
警察に力があれば、ああも簡単に犯罪者は犯罪を起こさないはずなんだ。

そのための手段として第二のカラー武器の作成に白羽の矢が立ったってだけさ」

「そんなの間違ってる。そんなものできてしまったら…世界の国々が真似をして、酷い世界が生まれるだけだ」

「世界がどうなろうと知ったこっちゃない。国際警察が最も力のある場所になればそれでいいのさ」

狂ってる。

「さぁ…教えてくれたまえ。カラー武器の製造過程を!俺達の野望のために!」



「嫌だ!!」



僕は、僕は…

「僕はそんなことの為に研究をしてきたわけじゃない!!」

そう叫んだ。







よく人から「何故カラー武器の研究をしているの?」と聞かれる。
軍事にも武力にも興味がない僕がカラー武器の研究をしているのが不思議なのだろう。

僕が研究をする理由。それは…昔、僕を救ってくれたヒーローを見つけたいからだった。

とある村で育った僕は、小さくて細くて、運動なんててんで駄目。皆が外で遊ぶ中、一人で本を読んでいるような子供だった。
父親はそんな僕を嫌ってきた。父親は僕に強い子供になってほしかったのだ。
でも、生まれたとき未熟児で他の子供よりも小さくて、男なのに女のように泣く僕を嫌い、彼は僕に『アリス』という名を与えた。女のようなその名を。
そして、大きくなると無理やり外に出そうとし、それを嫌がれば拳を振り上げた。

村の人たちは、それを見ても止めようとはしなかった。父は村では偉い立場の人だったからだ。
僕は、耐えるしかなかった。

そんな僕を救ってくれたのは、僕にとってのヒーローだった。

いつものように父が手を振り上げ、そしてうめいた。
気がつけば父は首から血を吹き出しながら倒れていた。
父の代わりに僕の前に立っていたのは、子供。
僕とほぼ変わらないくらいの子供。その手には血の色ではない、珍しい輝く赤いナイフが握られていた。
その子の顔はわからなかったが輝く目が僕を見ていた。

僕も殺されるかもしれない、そう思ったが動くことはできなかった。

その子は、ナイフをしまって僕に背を向け、扉を開けると、
『殺したよ、師匠』
そう言った。

師匠と呼んだその人物と何やら話したあと、その子は一度だけこちらを見て

『バイバイ、幸せになってね』

確かにそういったのだ。


その後、僕は親戚に預けられ暴力から開放された生活を送った。
そんな中いつも心にあったのはあの子の事だった。

ヒントとして使えそうなのは、あの珍しい赤いナイフ。

それについて調べていると、あのナイフはカラー武器なのではないか、という結論にいたり、カラー武器について調べていれば、いずれあの時の子供と会えるのではないかと思ったのだ。

あれから永い永い時間が流れて、あの子ももういい大人になっているだろうけれど、僕はまだあの子と出会えて居ない。


一度でいい。
あの子と会って一言言いたいのだ。
『あの時、僕を助けてくれてありがとう』
と…。









「そうか」

とサンバドールは言った。
その目は死んだ魚でも見るようなものだった。

サンバドールは拳を握り手をあげた。
その姿が父親と重なった。

身体が硬直したように動かない。
後ろで僕を抑えるバートランドの手に力が込められているのもあるが、それは恐怖にようものだと経験が告げる。

「じゃあ、喋らせるまでだ」

サンバドールが言ったとき





ドオオオオオオン!!!!!




そんな音と赤きヒカリが外から見えた。

「なんだ!?」

サンバドールは窓へと近づく。

「グッ……ぁ…」

「え?」

バートランドのうめき声と共に、拘束が解かれる。
倒れたバートランドの背中にはナイフが突き刺さっていた。

その間にも大きな地響きのような音は続く。

「クソッ…どうなってんだ」

吐き捨てるようにサンバドールが呟いた。






「お前が知る必要はない」









その声と共に、サンバドールの首から血が吹き出した。

立っていたその人物を見る。

「ユウ…?」

それは間違いなく、ユウだった。
ユウはこちらに視線を一度やって、服のポケットから何かを取り出し、サンバドールの上にふりかけた。

赤いフワフワした羽

頭の中の知識と今の状況が勝手に結びつく。
知っている。人を殺したあとに羽をまくアサシンがいることを。
でも…まさか…ユウが?

「RedCrow…?」

「大正解」

ユウは笑った。


なぜか恐ろしいとは思わなかった。
彼は僕を救ってくれたのだ。
あの時のヒーローのように。


「アリス、逃げるぞ」

「え?」

「説明は後だ。火のまわりが思ったよりも早い」


こちらに近づき、軽々と僕を抱え上げたユウは部屋を飛び出した。

「たく…アイツらもうちょいコッチのことも考えろよな」

ユウはそう呟いた。















❈❈❈❈❈

「いやぁ~爽快だねぇ~」

白磁の監獄を見上げながらコンラドは言った。

「そりゃあんなに爆弾を仕掛けりゃ爽快だろうよ」

フレデリックが言った。

「流石は国際警察だよねぇ~あんなに銃弾が完備されててさ、どれも上質な火薬が使われてる。あんなに火薬があれば爆弾なんていくらでも作れるさ~」

チャラっとコンラドは指に引っ掛けた鍵をゆらした。
マリクルスが取ってきた武器庫の鍵だ。
あの日の夜から武器庫に忍び込んで、弾丸から火薬を抜き取り、ユウィリエやマリクルスに頼んでそこら辺から電線をパクってきてもらい、コンラドが爆弾を組み立てた。

「ちょっと威力が強すぎたんじゃありませんか?」

「烏、無事か?」

心配そうに白磁の監獄を見上げるジェセニアとルカ。
白磁の監獄は今では赤々とした火をそこらから出し、オレンジ色にその身を染めていた。

「ハハッ、烏がこの程度で死ぬ訳ないでしょ」

マリクルスが笑う。

「鼬の言うとおりだ。爆弾を仕掛けている場所は予め知ってるわけだしな」

フレデリックが同調する。
そして、視線を周りに向けた。

立ち止まっているのは5人だけだった。
周りには監獄に閉じ込められていた一般人やら監獄にいた警備員が逃げている。

一般人が閉じ込められていた監獄の扉は、爆発前に5人で手分けして壊した。
監獄と言う割にセキュリティがあまい。

「そろそろ、俺らも逃げるか」

「そうですわね」

「捕まるのやだし」

「行くか」

「さっさと行こうぜぇ」






「おいこら!置いてくな!」





逃げようとしていれば、後ろから声がかかる。
人一人抱えたユウィリエが立っていた。

「お速いお着きで」

「全速力で来たに決まってるだろ」

ユウィリエは、抱えていた男をおろした。
彼がユウィリエが言っていたアリスだろうと、皆理解する。

「で?上手く行った?」

「当たり前だ。私が殺しそこねるわけ無いだろ」

フンッと鼻を鳴らしてユウィリエは言った。
もとより逃げるつもりなんてないが、ちゃんと殺せたなら逃げる必要はないだろう。

ユウィリエは、フレデリックを見る。

「Bee、お前アリスを預からないか?」

「は?なんで?」

「お前のところが1番いいかと思ってな。環境的に」

フレデリックはアリスを見て、首をすくめる。

「お前は自分のことをまるで分かってないやつだな…」

「え?」

「コイツは昔からこういう奴なんだ、気にするな」

フレデリックはアリスに言った。

「何言ってんだよ、Bee」

「ユウ…」

眉をひそめたユウィリエにアリスが声をかける。

「ん?」

「僕、ユウのいる国に行きたい」

ユウィリエは目を見開く。

「私達の国にか?」

「だめ?」

「いや構わないよ。本人が行きたいところに行くのが一番だしな」

アリスはとても嬉しそうに笑った。

なぜそんなに嬉しそうなのか分かってないのはユウィリエだけである。


「じゃあ、帰るか」

「そうだな、また連絡するよ」

ユウィリエが呟き、フレデリックが皆に言う。
またいつか774として会うことになるだろう。

だから別れの言葉は告げない。

皆、それぞれ自分の国に向かって歩き出した。


「行こうアリス。と言ってもかなり遠いから…私が運ぶけど」


ユウィリエはまたアリスを抱え上げて走り出した。










皆が国へつく頃には、空に太陽がのぼり、暖かく辺りを照らしていた。
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