Red Crow

紅姫

文字の大きさ
5 / 119

協力者②

しおりを挟む

私の協力者の中でコイツだけは絶対に手放せないという人物がいる。
それは私が使う武器を作ってくれる人物だ。
どんなに相手を殺したくても、武器がなくては話にならない。





「マスター?いる?」
私はその店の扉をあけて中に声をかけた。


ここは隣町の外れにある店。
客人は無く、並べてある机や椅子はひっくり返ったり、壊れていたり
とても商売をやってる店には見えない。


「おー、ユウィリエ」

私の声に返事をした男は、手に持っていたワインのボトルをドンッとバーのカウンターに置いた。

彼はウーゴ=ウォルシュ。
この店のマスターだ。


「相変わらず飲んでるのか」

「これが飲まずにやっていけるかよ」

無精髭をなで、酒臭い息をさせながらウーゴは言った。

「マスターがそんなんだから、この店はいつ来ても閑古鳥がないてるんだな」

「まぁ確かに閑古鳥はないてるが…」

ひっくり返ったり椅子を戻し、それに腰掛ける私を見ながら

「一番のカモが定期的にやってくるから問題ないわけよ」
と笑った。

「じゃあ、いつもどおり頼むよ」
私はカウンターに10本のナイフをバラバラと置いた。全て、血がついていて、使えそうにない。

「全くなんたって、ちゃんと血をはらってからしまわないんだ。そんな使い方してるからすぐ使いもんにならなくなっちまうんだぞ」

1本1本様子を見ながら、ウーゴは言う。

「5本はもう駄目だな。5本は修繕可能」

全て見終えたウーゴは、ため息まじりにそう言った。

「どういう使い方をしたんだ?いつもは5本も駄目にして来ないだろう」

「…50人滅多切り」

「馬鹿なのか?通り名よろしく鳥頭になっちまったのか、RedCrow」

「しょうがなかったんだよ」

悪びれなくウーゴに言うとため息で返された。

「ちょっと待ってな」

修繕可能等言っていた5本のナイフを手に持ち、ウーゴは店の奥に消えた。





ウーゴは、このバーのマスターであり、私の愛用するナイフの作り手である。
月に一度、休みの日に私は隣町のこの店に足を運び、ナイフのメンテナンス及び買い付けをしている。

ウーゴのナイフ作りの腕前はピカイチだ。
こんなところでバーなどやっていないで、どっかの国で武器を作るべき人物と言える。
まぁどんな仕事につくかは本人の自由だから口は出さないが


「ほら、できたぞ」
少しするとウーゴが戻ってきて、5本のナイフをカウンターに等間隔に並べた。
どれも刃こぼれ一つなく、ピカピカに磨かれ、風景が刃に映っている。

「あと、これも」
と今度は赤い箱を出す。中身は並べられたナイフと同じもの。ただし、こちらは新品だ。

「ありがとう」

新品のナイフの持ち具合を確認しながら礼を言う。
やはり、手に馴染む良いナイフだ。


「お代は?」

「そーだな、今回は新品が多いから…」
と電卓を叩き、掲示された金額分をウーゴに手渡した。

「ほんと気前よく払うよな、お前」

「伊達に書記長なんてやってないからな。金には困ってないんだ」

「かー、羨ましいな。一度でいいから金に困ってないなんて言ってみたいもんだぜ」

ガシガシと頭を掻くウーゴに私は苦笑した。


「あ、そういや、お前に見せようと思ってたもんがあるんだ」

「あ?なんだよ」

「オレの作品の新作だ」

ウーゴは自分の作る武器のことを作品と呼ぶ。自信満々の様を見るに上出来な物ができたのだろう。

「へー、見せてくれよ」

「まずはこれ」

とカウンターに置かれたのは刀だった。
赤い鞘に入ったそれを抜いてみる。

「ほー」

思わず声が出た。綺麗な赤い刃が鋭く光った。
なかなか良さそうな切れ味の良さそうな刀だ。

「でも、私はあんまり長刀は好かないんだよな」

アサシンをしてる者としては、歩くだけでカタカタと音がなるようなものを身に付ける気になれない。

「そういうと思ったよ、これは一応見せただけさ。大本命はこっち」

トレーに乗せられ出てきたのは

「何だこれ?メスか?」

よく医者などが持っているメスだった。いや、メスともいえない代物かもしれない。刃も持ち手もとても薄く、とてもじゃないが肉を切れる気がしない。

「こんなんでどうやって殺すんだ?」

「そりゃあ…こうやってさ」

とウーゴは右手の人差し指と中指の間と中指と薬指の間にそのメスを挟め、私が入ってきた扉めがけて勢いをつけて飛ばした。

と同時に開かれる扉。そこにはガラの悪い数人の男。
一番前にいた、リーダーと思われる男の額と首にそのメスは刺さった。

「あのメスの刃には特殊な物質を使っていてな。骨にも刺さるくらい硬い。そして何より軽い。こんな感じで投げて使えば相手に近づかなくても殺すことができる」

「へー、これがねぇ」

残っているメスのうちの一本を手で弄びながら私はウーゴの説明に耳を傾けた。


「な、何呑気に話してんだよ!お前ら」
「そうだ!うちのリーダーに何してんだよ」

後ろに控えていた男たちがわらわらと店に入ってくる。

「お前も試してみるか?的はあるみたいだし」

「私は一般人に手を出すことはしない。やるならお前がやってくれ」

「そうか」

ウーゴはまたメスをとると、勢いをつけて彼らに向かってそれを飛ばす。今度は一度だけでなく二、三度。

店に入ってきた男たちが全員倒れるまで5分とかからなかった。

「また、派手にやったもんだね。どうすんのさ、これ」

死体を眺め私はウーゴに言った。

「いやー、ココには世間に賑わすアサシンRedCrow様がいらっしゃいますし、大丈夫じゃないですかぁ?」

「私は一般市民に手は出さない」

「大丈夫、一般市民じゃない」

ウーゴの言葉に首を傾げる。

「コイツは、この国の国王の三男坊。つまり王子様だ」

「王子様がなんたってこんなところにチンピラまがいに来るんだよ…」

「出来が悪くて、親からも見放されていらしい」

「なるほど…」

私は死体に近づき、赤い羽根を置く。


「警察が来たらうまい具合に誤魔化してくれよ?私は捕まる気はない」

「わかってるさ、お互いの利害は一致してるだろ?オレ達」

ウーゴはにやりと笑った。





私とウーゴの利害は一致してる。
私は人殺しのためにウーゴから武器を買い付けている。
ウーゴはそんな私から貰った金で生活している。

ウーゴが捕まれば私は武器を失い、殺しができなくなる。
私が捕まれば、ウーゴは生活ができなくなる。

私とウーゴはある意味、運命共同体と言えるだろう。どちらかを失えばコチラにリスクが訪れる。


だからこそ、




「またどうぞ、お得意さん」



「また来るよ、マスター」




彼は私の協力者にふさわしい
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...