Red Crow

紅姫

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番外編 狂犬の疑問

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「リュウさんはどうして総統なんですか?」

「へ?」

キースから聞かれた疑問に、リュウイは困惑の声を上げた。




時間を遡ること10分ほど前

リュウイとキースは、仕事を片付け休憩していた。

仕事の話や幹部たちの話、国民たちの話をしていた際にキースの口からその疑問は出された。




「俺、総統にふさわしくない?」

それはちょっとショックだ。

「あ、いえ、違います!僕もユウさん達もリュウさんが総統だからここにいるんです!ふさわしくないなんて、そんな事ありません」

慌ててキースは取り繕う。


「じゃあ、さっきの質問は?」

「その…普通、国のトップは国王と呼ばれるでしょう?」

「そうだな」

「でも、リュウさんは国のトップなのに総統と名乗るのはなんでなのかなって」

「あぁ」

そういう事かとリュウイは頷いた。



「俺はね確かに国の中では上の方にいると思うけど、トップだとは思ってないよ」

「へ?」

キースは首を傾げる。

「国のトップは国民であるべきだろ?」

リュウイは立ち上がり、窓に近づき城下の町を見下ろす。

「俺はあくまで、彼らの代弁者だ。彼らの望みを聞き、それに答えるべく他の国と交渉する。国民の思いを代弁し、他の国の人たちに伝えているだけなんだ」

「…はぁ」

キースはよく分からないというような声を出す。


「俺は国民の望みを総て知り、理解し、まとめる存在になりたかったんだ」


「はぁ…」

また、キースは困惑した声を出す。


「だよな、普通こんなこと言ったら困惑するよな」


その様子にリュウイは笑った。

「すみません…」

「謝ることないさ、俺の親父たちも理解できなくて困った声出してたから」

リュウイはクスクスと笑いながら、懐かしむように言った。




「すぐに俺の考えを受け入れてくれたのはユウだけさ」



「ユウさんが?」

「ああ」

リュウイは笑いながら、昔話をする。





「この国をつくってすぐの時、俺は同じ話をユウにしたんだ。国のトップは国民だ。だから、俺が国王と名乗るのは間違ってる。俺は国民たちの望みを総て知り、理解し、まとめる存在になりたいって」

「本当に同じ話ですね」

「いろんな人にこの思いを伝えても、首をひねったり、馬鹿なこと言うなって言ったんだ。でもユウだけは違った」


リュウイは微笑みながら続けた。

「ユウは

『なら、総統と名乗ればいい』

って言ったんだ。

『総てを統べる存在になればいい、それがお前の理想だというのなら私はお前の右腕として、その理想実現の為に全力を尽くすよ』

そう言ってくれたんだ」


嬉しそうにリュウイは言う。

その様子を見て、キースも微笑みながら思う。


彼には敵わないな、と
昔話1つでここまで彼を嬉しそうに笑わせることができる彼には


「それから俺は総統って名乗ることにしたんだ」

「そうなんですね」

「うん、俺結構この総統っていうの気に入ってるんだ」


子供のように笑いながら嬉しそうに言うリュウイに


「僕もいいと思いますよ」

キースは言った。






トントンッ

「失礼するよ。……?」

入ってきたユウィリエは自分に向けられる視線にたじろぐ。

「なんだ?私の顔に何かついてるか?」

「いえ、そんなことは…」

「今、お前の話をしてたんだ」

「は?なんだよそれ。何話したんだ?」

「ナイショ」

ニシシと笑うリュウイに困ったような顔を浮かべるユウ。

その二人の間にあるとても強い絆を感じながら、ふとキースの頭にはある疑問が浮かんだ。




二人はいつから一緒にいるんだろう?




またの機会に聞いてみよう、とキースは思った。
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