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番外編 狼との約束
しおりを挟む「なぁ、ゾム?」
「ん?」
「そろそろ退いてくれないか?」
「ヤダ」
「はぁ…」
子供っぽく言うゾムを見ながら私はため息をついた。
ゾムは今私の膝を枕にソファに横たわっている。
なぜこんな事になったのだろう
最初は気まぐれだったのだ。
いつも同じ机に座って書類整理をするのも味気ないと思い、ノアが座るソファの前の席に腰掛け、書類整理をすることにした。
すると、天井からゾムが降りてきて(もちろん居るのには気づいていたが、何をしたいのか分からなかった為放置していた)私の隣に腰掛けたかと思うと、体を横たえ私の膝を枕に寝はじめた。
ノアは驚いて少し固まっていたが、別に書類整理に支障が出るわけでもないし私はゾムを放置し、黙々と作業していた。
が、仕事が終わった後もずっと枕にされ続けると動くに動けない。
別に足が痺れるとか重いとかは気にならないが、何をしたいのかわからないゾムの行動に首を傾げ考えたが、結論が出ないため、声をかけたのだ。
終わった書類をノアにリュウイのもとへ届けるよう頼み、部屋には私とゾムだけになる。
「どうしたんだよ…」
普段はフードで隠れて見えないゾムの髪を撫でながら聞く。
私の手に擦り寄るようにゾムは頭を動かしながら言った。
「約束しただろ?」
と。
さて……?
「私がいつお前に膝枕してやると約束したんだ?」
全く身に覚えがない。
「そりゃ、そんな約束はしてないからな」
「じゃあ何で…」
「でも約束はしたから」
「…?」
話が噛み合わない。
「私はお前とどんな約束をしたんだ?」
ゾムは私を見上げる。
「ノアがあの大臣に連れられて居なくなったあと約束しただろ?側にいてやるって」
その言葉に、記憶を呼び起こす。
確かに、ルナから連絡が入る前にそんな話をした気がする。
だが…
「別に今は寂しくないぞ?」
そう、あれは私がノアが居なくなって寂しかったからゾムが提案したことだったはずだ。
「でも、約束だから」
とゾムは私の腹部に顔を埋め、腰に手をまわす。
どうやら、退くつもりは無いようだ。
私はゾムの髪を撫でながら考える。
多分だが、私との約束というのも確かにあるだろうが、ゾム自身も私の側にいたいと思っているからこそ、この行動なのだろうと
「前から思ってたが…お前って案外甘えん坊だよな」
ギュッと手に力がこもる。
少し苦しい…。
今日はゾムのしたいようにさせといてやろう
そう思いながら、私はゾムの髪を撫でた。
数分後、彼からは小さな寝息が聞こえはじめる。
「ゾム?」
声をかけるも身じろぎ1つしない。熟睡である。
アサシンは、安心できる場所でなければ眠らない。
人がいる空間では気を張っているため熟睡などできない。
それが普通だ。
私は寝顔を見ながら微笑む。
私は彼にとって、側にいて安心できる、気を張る必要のない存在として認められたのだろうか
そうならば、嬉しい
「おやすみ、ゾム」
私は小さく声をかけた。
その声に反応するように、ゾムが微笑んだ気がした。
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