Red Crow

紅姫

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忌み子と花売り⑤

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ー次の日

「なぁ、本当に行くのか?」

「当たり前だ、あんなの見せられて確かめずにいられるかよ」

私とゾムは朝早くに起き、廃寺へ向かうべく道を歩いていた。

昨日見た光景のことは、ゾムが起きた時に説明しておいた。
本来ならソラナに言い、寺へ行くべきなんだろうが…
それでは、きっと真相は分からない。
だから、ソラナがまだ寝ているのを確認して宿を出てきたのだ。


「しかし…ねぇ。ユウ、お前寝ぼけてたんじゃないか?」

「んなわけあるかよ」

「だってさぁ…。昨日話した限りソラナはしっかりしてたし、寂れた寺に話しかけるとは思えない。ましてや、戸の間からこちらを見る目、なんてまるでどこかの怪談話だ」

そう言われると言い返せない。確かに寝ぼけていたと言われたほうが納得できる内容ばかりだ。
でも…だからこそ

「…それならそれでいいんだよ」

「は?」

「私が危惧しているのは、あの廃寺に誰かが…ソラナの知人が閉じ込められているって事だ。もし私が見たのが幻とかならそれならそれでいいんだよ」

「まぁ…そうだな。うん、確かめるだけ確かめますか」

ゾムの言葉に頷きで返し、私達は廃寺へ向かう足取りを早くした。






寺につくと、私はすぐに寺の戸に手をかける。

「ユウ、失礼にも程があるんじゃないか?一応、寂れてるとはいえ神様仏様がいるところだろ?」

「あいにく私は神も仏も信じちゃいないんでね」

パンッと勢い良く扉を開けるが

「何もないな…」

そこには、ホコリをかぶった床があるだけだった。

「ほら、やっぱり寝ぼけていたんだよ」

「そうなのかな…?」

私がにえきらない返事で返すとゾムはハァと溜息をつき

「なら、村人達に聞いてみようぜ?ココらへんに怪談話はありませんかってさ。歩いてりゃ一人くらい…おっ!噂をすれば」

キョロキョロと周りを見ていたゾムが誰かを見つけて駆け出す。
私も後を追った。




「おい!」

ゾムが声をかけると、その子供はビクリと体をゆらした。

「え…?」

「お前、この村の子供だろ?聞きたいことがあるんだ」

「な…なんで…」

「?どうした?」

「ああ…どうしよう…」

頭を抱えるようにしゃがみこんでしまう少年。

「…?」

困ったようにゾムは私を見る。

「ねぇ、君大丈夫かい?」

私は少年の肩に手を置き、声をかける。

「!」

少年は私を見上げた。

その目には、困惑と絶望の色がありありと浮かんでいた。


「どうしよう…」

少年は呟く。
私は再度声をかけようと口を開こうとして


その気配に気がついた。


複数…
足取りからして初心者…


ゾムを気がついたようで、警戒している。

その人達の姿が見えた。

「なんだ…」

見えてきたのは村人の姿。ゾムが警戒をとき呟いた。

「昨日まで姿が見えなかったのに…」

「何かあったのか?」

村人達は真っ直ぐに私達のもとへやってくる。
村人が近づくに連れ、少年の肩がガクガクと震えだす。

「君、どうかした?」

「に…」

「ん?」

「に…げて…」

「え?」

少年から発せられた言葉に首を傾げる。

その間にも村人達は私達に近づき、人数もだんだんと増えて…あっという間に私達の周りを囲んでいる。
村人達の目は、どこか虚ろで、なんの感情もなく私達を見ていた。

「あの…何かあったんですか?」

村人達に向けて私は言った。

「忌み子だ…」

「忌み子が出てきてしまった…」

「せっかく、閉じ込めていたのに…」

しかし、村人達は何やら意味不明なことを言っている。

「忌み子が自分で出られるはずない…」

「そうだ、アソコには鍵が…」

「なら、誰かが…」

「あの客人たちが出したに違いない…」

「我らの村を厄災に合わせようとしているんだ」

「何言ってんだよ、あんたら」

ブツブツと何か言っている村人にゾムは近づき、言った。

すると、



ゴンッ!!!



と鋭い音がした。

「…ッ!」

「ゾム!」

ゾムが近づいた村人の手に持っていたのは木の棒。
ゾムは頭をおさえ、倒れている。


「いきなり何するんですか!」


ゾムを起こしながら私は声を張り上げる。
見れば、村人の殆どが棒やら鎌やら…何かしらの武器を持っている。

「なんだ…何が…起きてる…?」

「おとなしく、我々について来い」

私に棒を突きつけ、村人は言った。











つれて来られたのはあの寂れた寺だった。
戸を開け中に入ると、村人の一人が一番奥の壁の隅を押す。

キキキィ…

壁が音を立てて動いた。
隠し扉だ。

奥には下に伸びる階段が見える。
ドンと背中を押され、私達は階段を降りた。

階段の先にあったのは檻…牢屋である。
寺の下がこんな事になっていたなんて…。

私達はその中に入れられ、扉には頑丈そうな鍵がかけられた。

おい!何しやがる!!」

ゾムが大声をあげながら、両手で檻の棒を掴み揺さぶる。

「出せ!!俺達が何をしたってんだ!!」

しかし、誰もそんな声には反応せず、ゾロゾロとその場を離れていく。

「クソっ!!」

カーン
とゾムが蹴りあげた檻の棒が音を立てた。


「君、大丈夫かい?」
その音を聞きながら私は隣にしゃがみこむ少年に声をかけた。

まだ10歳かそこらの少年だ。
ボロボロでブカブカの服を着て、やせ細った腕と足を覆い隠している。
頬等は煤で汚れたように黒い部分があり、ボサボサの髪が彼の黄色い瞳を隠している。

「ごめんなさい…」

かぼそい声が言う。

「ぼくのせいで…ごめんなさい…」

彼は


「生まれてきて…ごめんなさい…」


そう言った。




………
……



「君、落ち着いたかい?」

何かをブツブツ唱えていた少年が口をつぐむのを見て私は声をかけた。

少年はコクリと頷く。

「こんなことになってしまって…少なくとも数時間は共に過ごす事になりそうだ。軽く、自己紹介としよう。私はユウィリエ。そっちはゾムーク。君は?」

「…アルフ」

「そうか、アルフ。よろしく」

「うん…」

アルフは小さく頷いた。

「アルフ、すぐにで悪いんだが…。こうなった原因が何かわかるかい?私には思い当たるフシがないんだ」

アルフはビクリと体をゆらした。


「ぼ…ぼくが…」


「君が?」


「ぼくが…忌み子…だから…」


アルフはそう言うとまたうつむいてしまった。
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