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番外編 烏の居ない城
しおりを挟むユウィリエとゾムがゼード村へ行っていて不在の夜
「ユウ~!!」
「ちょっと…リュウさん」
「どこ~!!ユウ~!!」
「落ち着いてくださいよ、リュウさん!」
キースは困っていた。
近くにいるルナもノアも困っていた。
全く…まさかこんな事になるとは…
「ユウ~!」
酔っ払い泣きながら、今は居ない書記長の愛称を呼ぶ総統、リュウイ=レラ=ウェンチェッターを見て、キースはため息をついた。
その日、リュウイは最初から様子がおかしかった。
どこか落ち着かず
普段は貧乏ゆすりなんてしないのに、カタカタと足を揺らし、らしくもないミスをする。
本人に聞いても何でもないと答えるし、深く気になったわけでもなかったため、特に気にしていなかった。
が、今思えば話を無理にでも聞いておくべきだった。とキースは後悔している。
「お酒でも飲もうかな」
そう言ったのはリュウイだったはずだ。
「いいねぇ、たまには飲もうよ」
賛同したのはルナだった。
「僕も付き合いますよ、ノア君は…ジュースでいいかな?」
「はい」
ノアが頷くのを確認して、キースがお酒を取りに行ったのだ。
あまり度数が高くないお酒を選んだ。
それは確かだ。
元に、キースもルナも意識ははっきりしてる。
リュウイがお酒が弱い上に、飲みすぎたのである。
自分達も特に気にせず飲んでしまっていて、リュウイの変化を見逃していた。
その結果
「ユウ~」
グズグズと泣くリュウイは、ずっとこの調子である。
「リュウさん、ユウさんは出かけてるんですよ」
「やぁだぁ」
「やだって…リュウさんが行ってこいって言ったんでしょう」
「でも、やぁだぁ」
ううーとリュウイは唸る。
「これじゃ、どっちが年上だかわかったもんじゃないな」
「ルナさんも手伝ってくださいよ」
「僕の手には負えないよ」
ルナはヒラヒラと手を振り、酒を飲む。
ルナはかなり酒に強いらしい。
ちなみに、ノアは寝てしまった。夜も遅いからね。仕方がない。
はぁとキースがため息をつくと、流石に申し訳ないと思ったのか、ルナがリュウイに声をかける。
「ほらリュウ。しっかりしなよ。そんなんだとユウに愛想つかされちゃうかもよ」
「え?」
リュウイは、ルナを見る。
「ユウが…?」
「そうそう。ユウみたく優秀なやつは他の国からも引っ張りだこだからね。愛想つかされたらおしまいだよ」
リュウイはスッと椅子から腰を上げ、ルナに近づき、
「っ!」
「ちょっと!リュウさん!?」
ルナの喉を両手でしめた。
なんとか、キースはルナからリュウイを離す。
「大丈夫ですか、ルナさん」
「うん…ありがとう」
リュウイを押さえながらルナを声をかける。
「許さない…」
リュウイは呟いた。
「俺からユウを取ろうとする奴なんて…許さない!!!」
そう叫ぶと、全体重をキースに預け眠ってしまう。
キースとルナは顔を見合わせ、キースはリュウイを寝せるべく寝室へ運び、ルナと片付けをし、その日は解散となった。
ー次の日
予定の時刻になっても帰ってこないユウィリエとゾムーク。
「何かあったのか…」
「リュウさん、落ち着きましょう。たまたま遅れてるだけですよ」
「でも!」
キースは昨晩のこともあって、リュウイの様子が変な理由がわかった為、落ち着かせるための言葉を紡ぐ。
「大丈夫、ユウさんはちゃんと帰ってきますよ」
「…そうか。そうだよな」
ホッとした様子のリュウイに、キースもホッとする。
「ただいま」
「おかえり!ユウ!!」
「おお」
リュウイがユウに飛びつく。
それを受け止めながら、ユウはキースに視線を向けた。
その目は
『すまなかったね』
と言っていた。
今のリュウイの様子を見て、落ち着かなかった事が分かったのだろう。
大丈夫ですと言う意味を込めて笑ってみせる。
「リュウ、村のこと報告するから総統室へ行こうか」
「うん!」
仲良く歩いていく二人を見て
リュウさんもリュウさんだけど…それを受け入れるだけの懐の広さをユウさんが持っているから、あの関係は成り立つんだろうな。
と感じるキースなのだった。
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