Red Crow

紅姫

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癒し手③

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ちょうど、ユウィリエ達が話をしてきた時間

ーとある国にて

冷たい…

寒い…

マオは、一面に貼られた石畳の上で身動きが取れずにいた。

手には重い手鎖。鎖は天井から伸びていて、少し動くたびにジャラリと音をたてる。



カツッカツッ

誰かがこちらに近づいてくる音がした。

「喋る気にはなったかい?」

「…」

近づいてきた男をマオはチラリと見る。

「全く強情なやつだなぁ」

バシッ

「ッ…」

男は懐から取り出した長いムチでマオを叩く。
ジャラリと激しく鎖が音を立てた。

「ただ、薬を作ってくれと頼んでるだけじゃないか」

「…あんな劇薬作ってどうするつもりなんです?」

「それは…君が知らなくてもいいことだ」

「自分は、誰かを傷つける薬は作らない!」


バシッ

「クッ…」


またしてもマオに当てられたムチ。


「口答えするな!全く…ようやくFairyの生き残りを見つけたってのに…こんなに強情なやつだとは…」

男は頭を抱える。

「…薬を作るまで、君はここから出られない。夜にでもまた来るよ…。今度はもう少し、楽しい罰を与えなくてはね」

男の気色の悪い視線がマオの顔から身体中をなめ回すように見る。

…こういう奴は少なからずいる。

マオ達の一族(と言ってもマオ以外はもういないのだが)は、Fairyと呼ばれるだけありとても整った顔をしていた。
中にはマオのように、同性ですら欲情させるだけの顔立ちをしているものも…

気持ちが悪い…

ゾワリとした感覚が全身を襲う。


カツッカツッ

男が去っていく音を聞きながら、マオはどうするべきか、考える。

薬を作るのは論外だ。
あんな劇薬作るわけにはいかない。

だが、このままでは…

どうにか、外へ…出るまではいかなくても、連絡をとり、居場所を伝えたい。



マオはその空間を見回す。

あるのは、小さな窓のみ。ガラスはないが、鉄格子がついていて外が見えづらい。

小さいし…そもそも高くて届かない…

ハァ…とマオは溜息をつく。

このままでは…
どんどんと最悪の結末を迎えるのではないかという不安が襲う。



チチッ…

その声が聞こえたのはその時だった。

「え?」

聞き覚えのある鳴き声。

チチッ

「君は…」

鉄格子の隙間にちょこんととまるのは、小鳥だった。


森で巣から落ちてしまい、母親から見放されてしまい、死にかけだった小鳥をマオは助けたのだ。
それ以来、小鳥はマオのそばを離れなくなった。
今回も後をついてきてしまったのだろう。


「ついてきちゃったの?」

チチッ

「…」

パタパタと羽ばたき、マオの側までやってくる小鳥。


この小鳥に頼めば…もしかしたら…外と連絡をとれるかも


「ねぇ」

チチッ?

「自分の服のポケットから時計をとれる?」

チ、チチッ

小鳥はマオの服のポケットの中へ入る。
そして、金色の鎖の先についた小さな懐中時計をくわえて出てきた。

「お願い!それをユーエに!」

チ?

「今日、森に来た男の人。ミールって国の城の中に居るはずだ。その人に届けてくれ!」

チチッ!


小鳥は元気良く鳴き声を上げ、一度、マオの前をクルクルと回ったあと、窓から出ていった。


「これで、大丈夫…」


ユーエなら分かってくれる。


マオは安心しながら、早く思い人が来ることを祈った。











………
……


小鳥が叩く窓を開けてあげると、小鳥は勢い良く食堂へ入り、私の上をクルクルと回ったかと思うと、目の前に現れた。 

くちばしで挟んでいるのは…

「これ!」

小さな懐中時計だった。


私は慌てて小鳥からそれを受け取り、蓋を開く。
間違いない… 

少し形が歪な数字も、ちょっと短すぎる短針も、蓋の裏に掘られたHAPPY BIRTHDAYの文字も

これは私が作って…マオにプレゼントしたものだ。
なぜ、それを小鳥が持っている?
マオはこの時計を気に入ってくれていたはずだ。現に今日あった時も使っていた。

なら、考えられるのは…


「マオが君に預けたの?」

チチッ!

マオが小鳥に預けた。
なぜ?
そんなの決まっている。


私の脳内に、幼い頃…この時計をプレゼントした時のマオの言葉が蘇る。


『ありがとうユーエ!大事にするよ、毎日これで時間を確認する!よっぽどの事態が無い限り絶対手放さないよ!!』


よっぽどの事態が起きたのだ。


私は食堂の出口へ向かって歩き出す。

「ユウ?」

「どうしたんだよ」

私はチラリと皆を見る。



これは後々聞いた話だが…
その時の私の顔は今まで見たことがないくらい恐ろしかったそうだ。





「仕事だ」

「仕事?」

「RedCrowとしてのね」

私はそれだけ言うと、自室へ向かった。
流石に、この格好では暴れられない。





暗殺用の格好になった私は、窓から外へ飛び出した。

何かを察したように現れた小鳥は、私の前を勢い良く飛んでいく。

私は小鳥の後を追った。

夜までにはつけるだろうか…
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