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番外編 美人慣れ
しおりを挟むー医務室にて
「ど~お?国は慣れた?」
医務室のベッドにドンッと腰掛けて、スプリングを揺らすルナにマオは苦笑する。
「怪我をしたって言うから来たんだけど?」
「そうだよ、ほら、今日ユウから書類届いたんだけどそれで指切っちゃってさ」
と人差し指の小さな傷を見せてくる。
もう血も出てない。
「唾でもつけといてください」
「うわぁ、適当」
と首をすくめるルナ。
本人だってこんな傷程度で医者を呼ぶもんじゃないのも分かってるだろうし、最初の第一声も雑談のものだった。
要はサボりたかったのだろう。
「で、どうなの?国には慣れた?」
嬉々とした様子で聞いてくるルナ。
まあいい、たまには雑談もいいだろう。
「そうだね、もう1ヶ月経つか…。はやいなぁ」
「はやいってことはそれだけ楽しかったってことだよね」
「楽しかったっていうか…」
こんなこと言っていいのかなぁと語尾をにごす。
「なぁに?」
「…その…」
「なんだよ~」
言ってしまおう
ルナなら言ったところで気にしなそうだ
「楽だったかな」
「楽?」
「うん、戦争とかするわけじゃないし怪我人も出ない。国民内の医師のレベルも高いから安心できるし…それに…」
「それに?」
「誰も自分を色目で見ないし…」
「あ~」
それはこの国に来てすごく感じたことだ。
まだ一族があった時は、国の、それこそ軍人達との交流が盛んだった為、森に多くの人が訪れた。
その時、…こう…変な目で見てくる奴が居たものだ。
まあ、手を出そうとしてきたらユーエが助けてくれたが
この国に来てそういう事が一度もない。
城下を案内してもらった時も、『あらべっぴんさんね~』と語りかけてくる人はいたが、変な目で見られることはなかった。
それが楽に感じた。
怯えている必要がない…というか。
だが…
「なんでかなぁ?」
素朴に疑問なのだ。
見られたら見られたで気持ち悪いが、いつも少なからずあったものが急になくなるのも変な気分だ。
「そりゃ、慣れてるからでしょ」
「慣れてる?」
さらりというルナに首を傾げた。
「君が来る前からこの国の国民達は美人とちょくちょく会ってたから耐性がついたんだよ」
「…?あ、あぁなるほど」
最初は何を言ってるのか分からなかったが、少し考えて理解できた。
「ユーエかぁ」
「そのとおり」
ルナがパチパチと手を叩いた。
「確かにユーエ、美人だもんなぁ」
日に当たるとキラキラと輝く茶髪。
整った顔立ち。
ルビーのような赤い瞳。
初めてあった時、自分と同じ妖精の一族の子だと思ったものだ。
まあ、現実は人を助ける妖精と違い、殺戮の天使だったわけだが……。
「ホントにね、おまけに高身長で仕事もできるなんて…神様って不公平。無神論者だけど」
ため息まじりに呟くルナ。
『マオ!ルナ知らない!?』
耳元から声がした。
焦ったような話題の人物だ。
「さあ?」
とぼけて答える。インカムからギリッと奥歯を噛みしめる音がした。
『見かけたら、私が探してたって言っといて!』
「りょーかい」
ブチッと通信が途切れた。
「ユーエが探してるみたいだよ」
「あ~サボってるのバレたか」
よっと声を出しながら立ち上がるルナ。
「じゃ、戻るかねぇ」
「今度は怪我したときに呼んでくれよ」
「はーい」
ひらりと手を振って医務室を出ていくルナを見送る。
「さて…」
もう少し、この場に残っていようかな
また呼び出されそうだし
と、本棚から医学書を取り出し、ペラペラめくる。
30分後
「ユウが叩いた~」
と言いながらルナが医務室を訪れるのはまた別の話。
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