Red Crow

紅姫

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優しい鬼でも涙は流す②

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ー幹部集会後、城にて

「なーに見てるの?」

「ん?この前、警察がくれた資料さ」

部屋にノックもせずに乗り込んできたルナに私は言った。まぁ足音でここに来ようとしていることはわかったため、驚きもしないのだが

「あ~、あの白鬼の」

「そう、ココに盗みに入ることはないだろうけど…情報くらいは頭に入れておこうと思ってね」

ルナはおもむろに、書記長机に腰掛ける。
行儀が悪い…。

「なら、面白い情報をあげようか?」

ニコニコと笑いながら、ルナが言う。
仕方ないなぁとでも言いたげな顔をしているが、話す気満々な様子が伺える。

「教えてくれ」

こういう時は、こちらが下手に出るべきなのだ。

「実は、白鬼が盗みを行った後、国では王家に対する国民たちの反乱が起きたみたいなんだ」

「反乱?」

「そ!国民たちが城に乗り込んてきて、『上のやつを呼べ!!』ってさ。んで、文句をいうだけ言って、国から出ると署名された国民たちの名前の書かれた紙を叩きつけて、門から出てったそうだ」

「随分乱暴な国民達だな…」

「まぁ、王で金持ちだから国民達も頭を下げてただけで、それが無くなれば…って事なんだろうね」

そこまで話して、ルナは私を見てニタニタと笑う。

「どうする?この国でも反乱がおきたら」

「え、ありえないだろ…」

「だから、もしもだよ。も・し・も」

「うーん、別に何もしないけど?」

サラリと答えるとルナはつまんなさそうに言う。

「えー、なんかないわけ?反乱の首謀者を暗殺するとか、銃でおどして国を出さないとかさぁ」

「んな事するかよ」

呆れた…。

「私は国民に手は出さないよ」

「ふーん」

ルナは机から降りて、私の背中へ周り覆いかぶさるように抱きついてくる。

「…なんだ?」

「どうする?もし…国民の誰かがこんなふうに抱きついてきて…」

スッと首に手をやり、

「喉を締めてきたら…?」

指を喉に食い込ませてきた。

「別に?」

「なんでだよー!抵抗しろよ!」

私は目線をルナに向けて言う。

「絞殺って意外と難しいんだぜ?」

「へ?」

「初心者は今のルナみたいに、気道を塞ぐように手を食い込ませる。でもコレだと意識を失わせるまで5分くらいかかる。その間に抵抗されれば」

「わっ!」

軽く体を揺らせば、ルナの手が緩む。

「ほら、力が緩むだろ?それだと、駄目だ。意識を失うのにも時間がかかってしまうし、心肺停止に至るのもきちんと締めれて15分。初心者にできるわけない」

「…」

ルナは首をすくめる。

「だから、抵抗しないと」

「あぁ」

「これだからアサシンは…」

「なんだよそれ…」




トントンッ

「失礼します、ユウィリエ書記長」

ルナと話していると従者の一人が部屋へやってきた。

「どうした?」

「それが…城の前に国民たちが」

「へ?」

「上の者に合わせろ…と」

従者の言葉に私とルナは顔を見合わせた。










私とルナは急いで玄関に向かった。

「おまたせしました」

「お!きたきた」

玄関には6人ほどの国民がいた。

「待ってたよ、書記長さん」

「話したいことがあるんだ」

体からさっと血の気が引く感覚。

「あの…何か…?」
ルナも同じのようでおどおどと国民達に声をかける。

「だから、話したいことがあってきたんだ」

こりゃ本格的かもしれない。

「あ、あの…。この国への文句とかなら全て聞きますし、この国を出たいというなら門を潔く開けますから…できればここで暴れるような真似は…」

どうにか説得しようと言葉を紡ぐと、


「「「「「「はあ?」」」」」」


と国民達。
ポカンとルナと二人で国民達を見る。

「なんで、オレらがこの国の文句なんか言うんだよ」

「そうだぜ、書記長!この国に感謝こそしても、文句なんてあるわけないじゃないか!」

「この国を出る気なんてないわよ?ココ、居心地良いし」

と皆がそれぞれ口を開く。
私とルナはその言葉をただただ聞き続けた。











私は一旦落ち着くべく、状況を整理することにした。

まずは国民達。
皆、見知った仲の人ばかりだから名前を聞かなくても全員わかる。

一人目はマノレテ=エッガー、元移民

二人目、イルデフォンソ=クアーク、マノレテと同じ国から来た移民

三人目、トラヴィス=スクリヴン
四人目、エルネスタ=スクリヴン
この二人は夫婦で旅商人をしていてここに定住した。

五人目、シミオン=マカリスター
六人目、フォンス=マカリスター
この二人は親子である。シミオンは元移民でこの国に来て結婚しフォンスを産んだ。

こうして見れば、殆どが自ら望んでこの国に来て、住むことにした人ばかりだ。
文句なんて言うわけないじゃないか…。


「すみません、早とちりを…。で、今日は何用で?」

「あぁ…実は今日、店にある客が来てな」

話し始めてのはトラビィスだった。
大柄で額に傷があり、一見するとヤクザまがいだが、本当は心優しい人物だ。

「客?」

トラビィスはこの国でも商人をしている。
売るだけでなく買い取りもしていたはずだ。
扱うものは、宝石や骨董品である。

ここで、そういえばと思い出す。
ここにいる人物達は皆、宝石などを扱う商売人だ。


「コレを買いとってくれと」

と小さめの麻袋を取り出した。

麻袋を受け取り、開けていいのかと目で問いかければ頷くのを見て、袋を開いた。

「宝石か」

1つを取り出す。
重さ、輝き、ともに中々

エルネスタがすっと渡してくれた拡大鏡を用いて、宝石を見る。

「どうなの?」

「削りの粗さはあるけど、間違いなく本物」

ルナの問いかけに答えていると、トラビィスが

「見てほしいのは、その中に入ってるイヤリングなんだ」

イヤリング?
私は袋の中を探す。

「これ?」

「そう、それ」

私は袋の中から黄色い宝石のついた、古めかしいイヤリングを取り出し、見つめた。

重さを確認し、拡大鏡を使いイヤリングを見る。

「こりゃ…」

思わず声が漏れた。

「何?どうしたの?偽物?」

ルナがイヤリングを見ながら私に聞いた。

「本物だよ。…だからこそ驚いてるんだ」

「本物だから驚いてる?」

「さすがは書記長さんだ!これも見てくれよ!!」

マノレテは麻袋に太い手を入れ、それを取り出した。

「王冠?」

手にのせると中々の重さがある。
少し古めかしいデザイン。
ひときわ輝く中央の宝石。
そして、宝石に刻まれた印。

「嘘だろ…」

私は国民達を見回し

「他の人たちもこういうのを売りに来た奴が居たから知らせに来たのか?」

一同が頷いた。

「マジかよ…本当に来たってのか…」

「え、何、何なの?」

一人何も分かってないルナが私の腕を掴み、揺さぶる。

「この宝石たちは今この場にあってはいけないものばかりなんだ」

「え?」

「このイヤリングに使われている宝石及び枠の部分に使われている鉱石も、もう採取不可能とまで言われているものなんだ」

「は?なんでそんな物が…?てか、ここにあるんだから採取不可能ではないんじゃないの?」

「もう、と言ったろう?昔は取れてた。でも数は少ないし、特定の国でしか採取できなかった。ハガード家がおさめるオクヒ国とかが有名だったな」

「…。その王冠は?」

「宝石に刻まれた印は間違いなくミーガン家の物だ」

そこまで言って、ルナはようやく理解したらしい。

「まさか?」

「多分そのまさかだ」

私は国民達を見る。

「すまないが受け取った宝石は私に預けてくれ。あと、これを売ってきたやつの特徴を覚えていたら教えてほしい」

「イケメンだったわ」

そう言ったのはエルネスタ。顔が良くて

「若かったな、かなり」

イルデフォンソが言う。若くて

「銀っぽい白の髪だったのをよく覚えてるよ」

フォンスが言った。白い髪で

「蒼い目」

ポツリと言ったのはシミオンだ。

「なんていうか…こう飲み込まれるような蒼い目をしてた」

蒼い瞳…。


間違いない。
これを売ってきたのは、白鬼と呼ばれる盗賊だ。

私は国民達にあとは任せるように伝え、一旦家に返した。
さて…どうしようか。



『ユウ!』

インカムから声が聞こえた。

「ノア?」

少し上ずったその声に答える。

『ユウ!白鬼を捕まえた!』


「はぁ!?」

思わず大きな声が出た。
あの盗賊と出会った?
急にノアが心配になる。


「ちょっと大丈夫?白鬼暴れてない?怪我してない?そっちに迎えに行くから何かで縛り上げておけるかい?何だったら蹴りの1つでも急所に…」


『暴れてないよ、それについてきてくれると思うんでこのまま城に行くよ』

「へ?」

『ね、ついてきてくれるでしょ?』

とノアは誰か、多分白鬼に聞く。
いやにフレンドリーである。

『ついてきてくれるって』

「そ、そう。じゃあ、着いたら空き部屋に案内して…私に声をかけてくれ」

『分かった』

ノアの返事を聞き、通信を切る。



「ノアが白鬼を城へ連れてくるらしい」

「へ?」

ポカンとするルナに私は続けた。

「すまないが、マオに私の部屋に来るよう言ってもらっていいか」

「わ、分かった」

走るルナを見送り、私は部屋へ向かいながらこれからどうしようかと考えをめぐらせた。
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