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番外編 狼の遊び相手
しおりを挟む「暇だなぁ…」
とゾムークはつぶやきながら、城の中を歩いていた。
いつもなら、戦いの練習でもするのだが…
「キースはノアについてるし…ユウは忙しそうだし…」
ノアが戦い方を教わり始めてから、ユウィリエやキースが訓練場である庭に顔を出すようになった。
前までは一人で訓練をしていたのだが…人がいるならとユウィリエとキース、どちらかノアについてない方に相手をお願いしたところ、これがとても面白かった。
キースとはほぼ互角に本気で戦えるし、ユウィリエは、力に差はあるものの適度に力を調整してくれる為本気で戦えた。
よく考えれば、本気で訓練をした事なんてなかった気がする。前いた国では俺と互角に戦えるやつなどいなかった。
その楽しさを知ってしまうと、もう戻れない。今更一人で訓練などしたくもない。
「あ~退屈…」
遊び相手がいない子供になった気分だ。
「あ…」
歩いていたら無意識のうちに庭にやってきていた。
暇になれば、訓練をしていた頃の名残だろう。
シュッ-
何かが風を切る音がした。
「あっちからか?」
なんの音だろうとそちらへ足を運ぶ。
「アイツは…」
そこには、青い双剣を振るう男の姿。
つい2週間前くらいからこの国にやってきた新幹部で戦闘員になった…
「ルークって言ったっけ?」
会う機会はあっても、話す機会はなかった為、同じ戦闘員同士で話すこともなく、剣を持つ姿も初めて見た。
「アイツ…双剣使いなのか…」
まるで舞を踊るかのような剣舞に目を奪われる。
彼はどれくらい強いのだろう
どんな戦い方をするのだろう
好奇心が擽られた。
気がつけば、パーカーの内側に手を入れ、銃を握っていた。
標準を合わせて、引き金を引いた。
消音器によって音を出さずに銃弾は発射された。
「えっ!?」
ルークはその銃弾を避けて、こちらを見ながら声をもらした。
避けた!
避けられた!
死角からの攻撃を!
俺はルークの前に姿を現した。
「あ…ゾムーク」
「ルーク、お前強いんだな!」
「へ?」
「俺と遊ぼう!!」
「はい?」
困惑している彼に一方的に話しかけ、両手で拳銃を持った。
「!」
その様子を見て、ルークの表情が引き締まる。
数秒、見つめ合い、そして…
同時に動き出した。
「はぁ…あ」
一体何分経ったのだろう。
いや、分ではなく時間かもしれないが…
時間の流れもわからないほど真剣に俺達は戦っていた。
まさに竜闘虎争といえる戦いだった。
こちらが撃てば、あちらはそれを避け、攻撃に転じてくる。それを受け流しまた撃つ。
とても楽しい時間だったが…ずっと動き回っていたためどちらも限界で、俺達は同時に地面に腰を下ろしていた。
「ゾムーク…」
「ゾムでいいぞ」
「そうか…。ゾム、楽しかったな」
疲れをにじませた声で、ルークはそう言った。
「ニシシ…」
俺は笑い、スッと手を出した。
「今日は引き分け。次は絶対に勝つ」
一度目を見開いたルークだが、すぐに面白そうに笑い、
「そう簡単に負けないよ」
手を握ってくれた。
それからというもの
「ほら、早く!ほらほら!」
「引っ張らなくても行くったら…」
ルークの腕を引っ張りながら、楽しそうに庭へ向かうゾムの姿が目撃されるようになった。
ゾムにとってルークは、最高の遊び相手である。
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