Red Crow

紅姫

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番外編 “友達”

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ルークが城に来て一ヶ月が経ったある日

ー書記長室にて


「ユウ、資料まとめ終わったよ」

「あぁ、ありがとうノア。私ももうすぐ終わるから先に休んでいいぞ」

「そうさせてもらう…」

ノアはソファに腰掛けて、背もたれに体重を預けた。


今日はとても暑い。
外からは虫の鳴き声がする。
太陽の日差しもするどく、もう夏であることを主張していた。

適度に空調のきいた書記長室は暑くはないのだが、日差しなどが入って部屋を照らしているせいか、涼しいとも思えなかった。


「外、暑そうだね…」

「そうだな」

「今日も訓練しようと思ってたのに…」

と呟くとユウは眉をひそめる。

「倒れちゃうぞ。ただでさえ、剣を握ってまだ少ししか経ってないんだ。ゆっくりやろう」

「…」

「それに、今日はゾムもルークも訓練しないようだ。熟練者も避けるような日には訓練するべきじゃないよ」

「そうだよね…」

ふぅと息を吐く。
それに不満の色を感じ取ったのだろう、ユウが言う。

「暇なら出かけてきたらどうだ?どうせ仕事はもう無いし。公園の噴水あたりは涼しいだろうし…この前、パベルさんが来て新作のアイスケーキを作ったと言っていたから食べてきてもいい」

「うーん、そうしようかな…。訓練しないならルーク、誘おうかな…」


ルークなら一緒に来てくれるだろう。
ルークが来てから一緒に出かけることもなかったし、いい機会かも


と考えていると、クスクスという笑い声が聞こえた。


この場には自分の他にもう一人しかいないのだから、声の主は必然的に明らかである。


「なんで笑うの?」

「いや…良かったなぁと思って」

本当に嬉しそうに笑うユウ。
でもなんで嬉しそうなのかさっぱりである。

「良かった?」

「うん、前からちょっと気にしてたんだよ」

「何を?」

ユウは立ち上がって、僕の隣に座った。

「ノアはこの国の幹部の中では最年少でしょ?」

「え、うん。そうだよ」

予想外の問いかけに戸惑いながら答える。

「私はね、君をこの国で引き取ったからには、ヒューズ国でできなかった事を沢山できるようにしてあげたいなって思ってるんだ」

「うん?」

全くもって話の展開が見えない。
僕が最年少なことと、ヒューズ国でできなかった事に何か関連性があるのだろうか。

「この国に来てからノアは明るくなったし、楽しんでくれているのは分かったんだけど…。やっぱり、気になってたんだよ」

「何が?」

ユウが言ったとおり、僕はこの国に来てとても楽しいし、居心地がいい。



「ノアに、“友達”って呼べる人がいないこと」




「へ?」

「普通、ノアくらいの歳の子はさ…友達と出かけたり、遊んだりするものだと思うんだ。

それに、施設にいたときは他の子から避けられてたって言ってたから…ね。

友達っていなかったんじゃない?」

確かに…そういう人はいなかった。
あの頃の僕は心を閉ざしていたし…唯一心を開いていた姉は死んでしまったし…。

「だから、この国に来たら…友達をつくって欲しかったんだ。

城下に行く時には、君を連れて行くことが多かったのも、同年代の国民たちと触れ合ってくれたらと思ってのことだったんだけどね。

でも、君は幹部で、国民たちには『上の人』って印象があるもんだから友達って関係にはなれなかったと思うんだ。

この城の人達は…私やリュウは上司だろうし、マオは歳が上すぎる。ルナやゾムはどこか掴みどころがないし…。1番歳が近いのはキースだけど、キースは友達っていうより『お兄ちゃん』って感じで

友達っていないでしょ?」


僕は一人ひとり頭の中でこの城の人たちを思い浮かべる。

リュウは総統として尊敬している人

ユウは、仕事を教えてくれた上司で、今では僕に戦い方を教えてくれる先生

ルナは、どこか飄々としてるけど…本当は面倒みがいい優しい人

ゾムは、神出鬼没で驚かされることもあるけど、僕が訓練しているのを見てアドバイスをくれるし、何気に僕が怪我をしないように見守ってくれてる、優しい人

マオは、体調とかを気にしてくれて、仕事が終わったあとに会うと頭を撫でて『お疲れさま』と声をかけてくれる人

キースは、ユウが忙しい時に変わって戦い方を教えてくれる第二の先生で、困っていると声をかけてくれて、こちらを気にしてくれる人



確かに、友達と思っている人はいない。


「でも、さっき出かけるならルークも誘おうかなって言ったでしょ。

それを聞いてね。

あぁ、君にも、ふとした時に一緒に出かけたいって思える友達ができたんだなって思ったら嬉しくなってね。

ヒューズ国ではできなかった友達をこの国で作れたんだなって」


ユウは優しく微笑んで僕を見る。


「良かったね、ノア」


なんだか…とても照れくさい。
それに…なんだか…

僕はスッとユウの目線から逃れ、立ち上がる。

「いってらっしゃい」

とどこに行くとも行ってないのにユウが言う。
きっと彼には全て分かってるんだろう。

僕は一度頷いて、書記長室を出た。


そして、廊下を歩く。



なんだか…とても、ルークに会いたくなったのだ




突然訪ねたら彼はどんな顔をするだろう。
驚くだろうなぁ
でも、きっとすぐに笑顔を見せて『どうした?』って聞いてくれるだろう。








僕の足は自然と早足になっていた。
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