Red Crow

紅姫

文字の大きさ
45 / 119

女帝と戦争と死にたがり④

しおりを挟む


Side ??


その人物を見たのはたまたまだった。


明日開催される、対MOTHER戦争の会議の際に、提示する資料について不備がないか確認してもらうため、この戦争の元帥であるフレデリックを探していたのだ。






今日、客人が来るとは知っていた。
フレデリックの友人で今回の戦争に参加するのだと風のうわさで聞いていた。

どんな人物なのか
どれほどの強さなのか

色々な憶測が、ボクが所属する情報部の中を飛び交っていた。

この国の兵よりは弱く、フレデリックの友人ならどちらかと言えば作戦面での援助なのでは、というのが最終的な結論だった。




ボクが彼を見た時、『あ、やっぱり作戦面での援助に来たのか』と思った。
彼が剣を握り戦う姿が想像できなかったのだ。

フレデリックに用があるのに、近づくことができなかった。
フレデリックに萎縮した訳ではない。
その近くにいる彼に近づくことができなかったのだ。

それほどまでに、神聖な存在にボクの目には彼が映っていた。


身につけているのが、自分も身につけている軍服と同じだというのに、彼が身につけたそれは全く違う印象をボクに与えた。

深めにかぶられた軍帽から覗く明るい茶髪。

真っ白な肌が紺色の軍服によく映える。

そして何より、優しくも強い輝きを放つ赤い…ルビーのような瞳に息を呑んだ。


なんて、きれいで優しそうな瞳の人なんだろう…


それが、ボクの彼に対する印象。


しかし、それが一変する。
彼は、あの兵士長ケネス=ボイデルを負かしたのだ。
優しげだったあの瞳に、狂気をまとわせてケネスを見て、剣を目の前に突きつけた彼。



その姿にボクの心の中で何かが弾けた。



やっと
やっと、見つけたんだ。
ボクが探していた存在を
彼ならきっとボクの望みを叶えてくれる



フレデリックと共に城の中へ戻ってくる彼をじっと見つめていると


彼がこちらを見た。


「どうした?」

「今…誰かに見られているような…」

…!
驚いた。
彼はボクの存在に気づいたのだ。



今まで誰にも気に止められず、気づいてもらえずに生きてきたボクを



あぁ
やっぱり
彼はボクの求めていた人だ

フレデリックに確認してもらうはずの資料のことなんて頭から消えていた。

ボクは彼をずっと見つめていた。






あぁ…




早く…






彼に殺されたい…
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...