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女帝と戦争と死にたがり④
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その人物を見たのはたまたまだった。
明日開催される、対MOTHER戦争の会議の際に、提示する資料について不備がないか確認してもらうため、この戦争の元帥であるフレデリックを探していたのだ。
今日、客人が来るとは知っていた。
フレデリックの友人で今回の戦争に参加するのだと風のうわさで聞いていた。
どんな人物なのか
どれほどの強さなのか
色々な憶測が、ボクが所属する情報部の中を飛び交っていた。
この国の兵よりは弱く、フレデリックの友人ならどちらかと言えば作戦面での援助なのでは、というのが最終的な結論だった。
ボクが彼を見た時、『あ、やっぱり作戦面での援助に来たのか』と思った。
彼が剣を握り戦う姿が想像できなかったのだ。
フレデリックに用があるのに、近づくことができなかった。
フレデリックに萎縮した訳ではない。
その近くにいる彼に近づくことができなかったのだ。
それほどまでに、神聖な存在にボクの目には彼が映っていた。
身につけているのが、自分も身につけている軍服と同じだというのに、彼が身につけたそれは全く違う印象をボクに与えた。
深めにかぶられた軍帽から覗く明るい茶髪。
真っ白な肌が紺色の軍服によく映える。
そして何より、優しくも強い輝きを放つ赤い…ルビーのような瞳に息を呑んだ。
なんて、きれいで優しそうな瞳の人なんだろう…
それが、ボクの彼に対する印象。
しかし、それが一変する。
彼は、あの兵士長ケネス=ボイデルを負かしたのだ。
優しげだったあの瞳に、狂気をまとわせてケネスを見て、剣を目の前に突きつけた彼。
その姿にボクの心の中で何かが弾けた。
やっと
やっと、見つけたんだ。
ボクが探していた存在を
彼ならきっとボクの望みを叶えてくれる
フレデリックと共に城の中へ戻ってくる彼をじっと見つめていると
彼がこちらを見た。
「どうした?」
「今…誰かに見られているような…」
…!
驚いた。
彼はボクの存在に気づいたのだ。
今まで誰にも気に止められず、気づいてもらえずに生きてきたボクを
あぁ
やっぱり
彼はボクの求めていた人だ
フレデリックに確認してもらうはずの資料のことなんて頭から消えていた。
ボクは彼をずっと見つめていた。
あぁ…
早く…
彼に殺されたい…
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