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女帝と戦争と死にたがり⑥
しおりを挟むSide ユウィリエ
オリヴァーの自己紹介が終わり、会議が進められたが、私は上の空だった。
はっきり言って、今の私にとって敵地へ向かう際の陣の組み方などどうでもいい事である。
私はチラリとオリヴァーに視線を向けた。
情報部長のセシリオが説明する内容に合わせ、スクリーンに映し出された資料の切り替えを行っている彼の目には、私が思い浮かべている色は無かった。
平然とし過ぎていないか…?
オリヴァーは私よりも年上に見えるが、それでも1、2歳の差のはずだ。
もしも、私が彼の立場なら…少なからず動揺しているだろう。
かなり経験を積んだ戦士でもなさそうなのに…。
「…ウ」
いや…だからこそか?
経験が無いからこそ、事の重大さを理解できていないとでも言うのか?
「お……ウ」
…ありえない。
彼は子供ではないのだ。自身で考え、動く意思を持つ大人だ。
ならば…何故…?
「おい!ユウ!!」
フレデリックが叫んだ。
思わず、耳に手をやりながら私はフレデリックを睨む。
「…うるさいなぁ。なんだよ」
「あのなぁ…。何度も呼んでも反応しなかったのはお前だろ」
どうやら考え事をしていて、呼びかけに気づかなかったようだ。
「…すまん」
「…まぁいいさ。で、どう思う」
とスクリーンを指差す。
そこに映っているのは配置図だった。
これに意見しろと言うことなんだろうが…。
私はチラリとフレデリックを見て、スクリーンにもう一度目線をやり、首をすくめて一言だけ
「お前がいいならいいんじゃね?」
と返した。
「そうか」
フレデリックは頷き、話を進めていく。
MOTHERの戦闘員の推定人数についてや、予想される攻撃パターンなどについて説明がなされた。
私は時折フレデリックから意見を求められながら、適当に返答し、話は進められていく。
そして
♪~
またあの場に合わないメロディが奏でられた。
どうやら私が考え事をしていたときにも一度鳴っていたらしく、12時を時計は指していた。
「それでは、これで会議を終了します。各自仕事に戻ってください」
フレデリックの言葉で会議は終了した。
ゾロゾロと部屋を出ていく大将達の背中を見送り、部屋には私とフレデリックだけが残っていた。
どちらとも何も言わない。
どちら立ち上がろうともしなかった。
部屋の天井付近に作られた窓から明るい日差しが部屋の中に入り、まるで私とフレデリックを分断するかのように、ちょうど間に光の筋が伸びた。
「何故だ?」
と私は口を開いた。
「何が?」
フレデリックは事も無げにそう返してきた。
私は立ち上がり…
「そんな物騒なもん、向けるなよ」
懐から愛用のナイフを取り出し、フレデリックの喉元に突きつけた。
手が揺れようものならナイフの切っ先が喉に食い込むであろう距離にナイフがあるにも関わらず、フレデリックに動揺した様子はない。
「なんだ、あの作戦は!あの説明は!」
「お前も文句を言わなかったじゃないか」
「私は、『お前がいいならいい』と言ったんだ。お前がこんな作戦を良しとするはずないと思って!なのに…!」
フレデリックは落ち着いた瞳で私を見た。
「いいと言うに決まっているだろう。あれは元々俺がたてた作戦で、それをセシリオ達にまとめてもらっただけなんだからな」
私は目を見開いた。
「なんだと?お前がたてただと?ふざけるな」
「ふざけてない。あれは俺がたてた」
「嘘だ!お前があんな作戦たてるわけない。あんな…
国王に危険が及ぶ作戦を!!」
あのとき、スクリーンに映っていた配置図は酷いものだった。
兵士を前線に出しすぎて、後方は初めて銃を握る国民たちしか配置していない、攻め込まれたら太刀打ちや逆転が難しい配置であり、何より、国王のいる城の近くに一小隊足りとも配置されず、あれでは正面から城に入られる。
そうなれば…間違いなく敵の手は国王に伸びるだろう。それは、国王の死を意味する。
「嘘じゃない」
言い切るフレデリックを私は睨みつけた。
「見損なったぞ!フレデリック!」
声を張り上げる。
「私とお前はまるで違う人種だ。相容れない部分も多くあったし、そのせいで幼い頃はお前と何度も衝突してきた。
だが、1つだけお前と私に共通している部分があるとも思っていた。
それは、主を思う思いの強さだ!
誰よりも主に忠誠を誓い、自分の命に変えても主を守る
その思いだけは私と同じだと、そう思っていたのに!!
今回の戦争に私を呼んだのも、お前が自分の主に勝利を捧げるためだと、そう思ったから!私は参加することにしたんだ」
フレデリックは目を閉じ、私の言葉を聞いていた。
しばしの沈黙。
フレデリックは大きく息を吸い、吐き、口を開いた。
「忠誠を誓うからこその決断だ」
「なんだと…?」
フレデリックはゆっくりと説明しだした…
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