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女帝と戦争と死にたがり⑦
しおりを挟むSide フレデリック
俺が説明を終えると、ユウィリエはゆっくりとナイフをおろした。
それに内心で安心しつつ、ユウィリエに声をかける。
「分かってくれて何よりだ」
「理解はできないがな」
ユウィリエはそう言い、俺を見る。
その目には先程まであった怒りの色はなく、変わりに憐れみの色が浮かんでいた。
「…今回の戦争」
ユウィリエは静かに語りだす。
「今回の戦争、私は自分の力を存分に使おう。フレデリック、お前が指示したことに従おうじゃないか。
MOTHERに潜入して情報を取ってこいというならそうするし、MOTHERの兵士を皆殺しにしろというならしよう。
だが…お前の…お前達の真の望みには手をかせない。それは、お前が自分の手でやるべき事だと私は思うから」
「そうか」
なんとなく、そう言われることはわかっていた。
だが、やはり少し心に来る。
「当日は状況を見てお前に指示を出す。そのとおりに動いてくれ」
ユウィリエは頷いた。
彼が動いてくれれば、少なくとも国の勝利は揺るがないだろう。
「さて、そろそろ行こうか」
席を立ち、扉へ向かう。
ユウィリエも後に続いて歩き始めた。
「そういえば」
ふとユウィリエが口を開いた。
「どうして教えてくれなかったんだよ、あいつの事」
「あいつ?」
「オリヴァー=ランプリングの事さ」
さて…
「彼がどうかしたのかい?」
「どうかしたのかいって…お前も思いやりがない奴だな。それとも、彼は情報部の人だから戦争と関係ないとでも?」
「いや…情報部も当日は狙撃班として戦争に参加してもらうけど?」
「おいおい、本気か?彼戦えないだろ?」
「オリヴァーは狙撃の成績良いから大丈夫だぞ?」
「そういう意味じゃねぇよ」
先程から話が噛み合わない。
「何をそんなに危惧してしている?」
「何をって…もしかして、知らないのか?オリヴァーから何か言われたりとかしてないのか?」
「いや、何も?」
ユウィリエは目を見開き、
「ヤバい…!」
と呟き、俺を追い越して扉を開け出ていこうとする。
「おい!どうしたんだ!」
「…」
ユウィリエは何も答えない。
「…すぐ戻れよ」
「わかった」
ユウィリエはそう答え、部屋を出た。
すぐ後に、外に出るもユウィリエの姿はなかった。
Side ユウィリエ
とにかく、彼を探さなくては…
私は周りを見ながら城の中を歩く。
情報部に行けば会えるだろうか?
「…」
感じる…。
あの視線…。
イライラするなぁ…。
「おい…」
私は振り向き、誰もいない空間に声をかける。
「昨日から私に用事があるようだが…今私は忙しいんだ」
気配はないが、私の耳は確かに息を呑む誰かの音を聞き取った。
しかし…その視線がなくなることはない。
私はため息をついた。
「全く…この国の奴らはどこかおかしな奴ばかりだ。
すまないが、時間がないんだ。
とにかく…オリヴァーを探さないと…」
「え…?」
その視線の人物が声をもらした。
コツッ…
と足音がした。
響いているわけではないのに、私の耳には大きくこの音が聞こえた。
姿を見せたオリヴァーは、煌々とした笑みを浮かべ、私の目の前まで歩いてきて、
ギュッ
と私の腰に手を回した。
普段なら絶対こんなこと私はさせない。
信頼を置くもの以外にはいつも警戒心をもっているし…近づかれたらそれだけ攻撃を受けやすい。
だが…その時の私は警戒心を何故か解いていた。
それはきっと彼から感じた雰囲気が私を殺そうというものではなかったから。
「やっぱり…!」
オリヴァーは私の胸に顔を埋めながらウットリとしたように呟いた。
「君もボクを探してくれたんだね!やっぱり、君はボクの求めていた人だ!」
嬉しそうに言い、彼は顔を上げ私を見上げる。
「さぁ…早く…」
「ボクを殺して」
彼は確かにそう言った。
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