Red Crow

紅姫

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女帝と戦争と死にたがり⑯

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Side ユウィリエ


「クッソ…」

私は小さく言葉をもらした。

「フフッ…さっきまでの威勢はどこへいったのかしら」

余裕そうなドゥルセの言葉に、クッと喉を鳴らした。


私は攻めあぐねていた。

というのも、あのギロチンの刃はかなり厄介で、近づきたくても近づけず、遠くにいても狙われる。

運良く近づけても、ギロチンの刃が以外に厚く。ナイフじゃ太刀打ちできない。おかげで4本もナイフを駄目にしてしまった。

さっきから私は戦場で逃げ回りながら、当たらない攻撃を続けていた。

体力にはまだ余裕がある。
攻撃だって受けていない。
普通の場合なら…適当に攻撃を躱しつつ相手が疲れるのを待てばいい。
相手は女。体力で負けるとは思えないのだから。

だが、今回は違う。
一刻も早く、エマヌエル達の元へ行かねばならない。

30分で行くといったが…もう20分経過してしまっている。





「闇雲な攻撃なんて意味ありませんし、逃げてばかりでは…ワタシに勝てませんよ」

そんな事は私が一番良くわかってる。

あと…少し…。

「お前の言うとおりだよ。そろそろ、終わりにしようか」

私はナイフを握り直し、ドゥルセへと向かって走り出した。

「フ、無駄よ!」

ドゥルセはギロチンの刃を盾のように構える。

私は構わずナイフをギロチンに向かって振るう。


カキンッカキンッ


と乾いた金属音が響く。

「いい加減諦めたらどうかしら」

「…あと少し」

「へ?」

「…あと一撃」


私はすこしだけドゥルセと距離を取り問う。

「降参する気はない?今なら命ら取らないよ」

「どの口が言うの?」

まぁそうだわな…。

「じゃ、これでお終い」

私はナイフをギロチンに向けて突き刺した。






ガッチャン!!






「な!?」

「よし!」

上手くいった。

ギロチンの刃が、勢い良く地面に突き刺さる。
鎖を動かしても、もうギロチンの刃が動くことはない。


ギロチンの刃と鎖の連結部が完全に壊れたからだ。


「どうして!?いきなり壊れるなんて!」

「いきなりじゃないさ」

「!」

声を荒らげるドゥルセに私が言うと驚いた顔をして私を見る。


「お前は自分の武器を信じすぎた」

「何を言って…」

「確かにギロチンの刃は強力な武器だ。厚さもあるし、重量もある。相手に致命傷を与えられる武器だ。だが、お前はそれを過信しすぎた」

「過信?」

「そうさ」


私はニッと笑ってドゥルセに言う。




「私がなんの考えもなしに闇雲に攻撃してるとでも?」




「!」

「お前のギロチンの刃には致命的な弱点がある。それが、鎖との連結部だ。穴が空いている分、その部分は他の部分よりも若干薄くなっている。そこに何度も衝撃をあたえれば自然と壊れる」

「まさか…」

ドゥルセは後ずさりながら私を怯えたような目で見る。

「まさか、闇雲に攻撃するフリをしてずっと同じ場所にナイフを当て続けたというの…?動きながら、ずっと同じ場所に?そんなのありえない」

「ありえない?何故?」

「だって…そんなの…普通に考えてありえない…」

「生憎と普通な生き方してないもんでね」


私は言い捨てナイフを構え直す。


「これで終わりなのね」


自傷的な笑みを浮かべるドゥルセ。
胸元にある十字架を握りしめる。

「やっぱり…代々続いての人殺しなんて神様は護ってくれないわよね…」

「…」

「あぁ…」


ポタッと地面が濡れる。
ドゥルセの涙で…。

「どこで道を間違えたのかしら…」

「…」

私は何も言うことができなかった。

「母に教わって…人を殺して…それが普通だと思って生きてきた…。

でも、それが違うって気づいた…。

ワタシと同い年の子は皆可愛くてキラキラした服を着て、母親と手を繋いで笑いながら歩いているの。
ワタシは、血飛沫のついた洋服を着て、武器を握って、誰かから逃げるように走るの。

ワタシは…ただ…」

ポタポタと涙が落ちる。








「ただ…普通になりたかった…」









「それで、神様に縋ったわけか」

「ええ」

「お前、本当にバカだな」

「フ…酷い人ね」

「普通になりたいなら、そう思ったときに武器を捨てればよかったんだ」

「簡単に言うのね…。ワタシには…コレしか生きる道がなかったのよ」

ドゥルセは、涙を拭い、力強い目で私を見た。

「でも、これでもう終わり。やっと…開放される…」

「そうだな」

私はドゥルセの喉めがけてナイフを動かした。





「あぁ…神様」





ナイフが刺さる時、彼女は天を見上げて言った。









「どうか…









生まれ変わったら、普通の女の子として…生きれますように…」



















ドゥルセの死体からナイフを引き抜き、軽く血を払う。
見開かれた目をスッと閉じてやり、私は手を合わせた。

無神論者だが、今だけは願おう。


『どうか、彼女の最後の望みが叶いますように』



「急ごう…」

誰に言うでもなく呟き、私は走り出した。
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