Red Crow

紅姫

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女帝と戦争と死にたがり⑱

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Side レジナルド


キンッという音がその場を満たしていた。

自分の持つ愛剣と相手の鎖鎌がぶつかっては、弾き合い、時折バチッと火花を散らしていた。



「アハハ!凄い!凄いよ、おじさん!」

適度に距離をとって剣を構え直した時、相手、マルガリータが言った。

楽しそうに、ニコニコと笑う。
可愛い子供らしい笑顔で。

「はぁ…はぁ…」

それに答えることはできなかった。
息が切れてしまい、まともに話すこともできないのだ。

何なのだ…この子は…。

「あれ?おじさん、疲れちゃった?」

「…」

「ワタシ、まだ遊び足りないよ!ねぇおじさん!まだワタシと遊んでくれる?」

こっちが本気でやっている攻撃は、少女にとってはただの遊びに等しいようだ。

どうにか息を整えて口を開く。

「もちろんですよ、お嬢さん。まだ、戦えます」

愛剣を構えて、マルガリータに接近すべく、地面を蹴った。

「あはは!嬉しいなぁ!こんなに楽しいの、ワタシ初めて!」

勢いをつけてマルガリータが鎖を操る。

カキンッ!

と音がまた響いた。

鎌を弾き、ドンドンと前に進む。

いける!
と思いながら、愛剣を振り下ろす。

「!」

マルガリータは鎖を両手で間を空けて持ち、剣を受け止める。

「っ!」

「あまいよ、おじさん!」

幼児とは思えないほどの力。
剣に力を入れてもビクともしない。


さて…どうしましょうか…。


距離をあけるべく、剣を動かす。
剣先はマルガリータに向けたまま、警戒も怠らない。

その時、








ドッッガアアアアン!!!








マルガリータの遠い後ろからそんな音と、薄黄色の粉塵が立ち上がった。

「あれは…!」

思わず出た声。
あの粉塵は!
あの音は!

マカレナ…!
脳裏に若く気高い女兵士の顔が浮かんでくる。

「おじさん?どうしたの?」

動きか止まった自分に不思議に思ったらしく、首を傾げてマルガリータは言う。
一度頭を振るい、邪念を払う。

「何でもありませんよ」

と剣を構え直しながら言う。








何でもない…なんて言いながらも頭の中では、同じ地位にいた同僚であり、彼女がまだ少女だったときから知っている人物との思い出が浮かんでくる。



『私は強くなれますか!』



まだ自分が兵士長だった時、新人として入ってきた彼女は開口一番に名乗りもせずにそう言った。

本来、新人の育成はその班の班長の仕事なのだが、新人研修で優秀な成績を修めた者が居るから、兵士長直々に教えてやってくれと言われ、兵士長内での話し合い(という名の押し付け合い)によって決まった自分が彼女の教育係になったのだ。

『強く?』

『はい!私は強くなるためにココに来たんです』

真っ直ぐで穢を知らない目が自分を見ていた。
それを見て、


この子は強くなる



と直感的に思った。


それから…色々あった…。
自分が昇進して、彼女も昇進して…同僚になって…。

同僚になれば、堅苦しさがなくなるもので、彼女は同じラルフに対してはズケズケと物を言うのに、自分に対してはいつも敬語で『先輩』とずっと呼んでくれていた。








誰よりも強さを求めた彼女が、勝てないと感じ自殺した…。

それだけの敵がMOTHERにはいる。

ならば…。


他の兵を守るためにも、自分がココで負けるわけにはいかない。


自然と剣を握る手に力が入った。









体力も限界に近い。
動けるのはあと数分だろう。
その間に、決着をつける!



ジャラッ!


と鎖を動かし、マルガリータの鎌が私の方に飛んでくる。

その鎖に剣を当て、押し込む。
勢い良く動いていた鎖はそれによって方向を変え、愛剣に鎖が巻き付く。

「!」

驚くマルガリータ。
その隙を見逃さずに、鎖の巻きついた剣を持ちながら、マルガリータに近づく。

そして、剣をマルガリータの喉めがけて動かした。

鎖の巻きついていない、剣の切っ先がマルガリータの薄い皮膚に突き刺さった。



吹き出す血が服に、剣の柄に降り注ぐ。


「かハッ…」

と空気を求めてパクパクと動いていた口が、音を立てて…動くのをやめた。




「フッ…」


力が抜け、マルガリータの死体と共に地面に倒れた。


サアっと吹いた風が血の匂いを引き連れて、どこかへと運んでいった。


その後…迎えに来てくれた一般兵に連れられて、テントへと戻った。
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