Red Crow

紅姫

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女帝と戦争と死にたがり24

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Side ユウィリエ


私は機械兵に向かって、オリヴァーから借りた(奪った)銃を発砲した。

脆いであろう機械兵の首(機械兵であっても首と言うのかは知らない)を狙って撃つが、カキーンと心地よい音をたてて跳ね返された。

「やっぱ、銃は効かないか…」

全弾撃ち終えた銃を地面に捨てる。

「…」

ナイフを取り出す。
新品でまだ輝きを失っていないナイフ。切れ味は抜群なはずだ。

私から一番近くにいた機械兵に向かって、そのナイフを突き刺す。


ピーン


「嘘だろ…」

私は戦場だということを忘れて呟いた。
手にはナイフだったものが握られている。
柄だけになり、ナイフの刃はどこかへ飛んでいった。

「まいったな…」

柄をしまいながら、私は機械兵に目線を向けた。

全ての機械兵の目(目と言っていいのかはやはり知らない)が私を見ていた。



「!?」



1000、2000はいるであろう機械兵の2つの目、全てが私を見る。
4000もの目に見つめられるなど初めてで、私はガラにもなく驚く。
また、機械兵の目は先程は青く光っていたのに、今は赤く光っている。


なんだ…?


と思っていると、機械兵が揃って私に向かって突進してくる。

「な、!?」

近くにいた2、3体の機械兵の攻撃を避け、走り出す。
それを追いかけてくる機械兵。
とある2体の機械兵は自分たち同士でぶつかり、地面に倒れたが、すぐに起き上がって私を追いかけてくる。
少し後ろにいる狙撃兵達には見向きもせずに、私に向かってくる。


なるほど、と私は走りながら結論を出す。
この機械兵は個別に敵を追う能力がないのだろう。
多分だが…攻撃をしてきたものを狙うようにプログラミングされているのだ。
ただ、それだけでは事故で機械兵同士がぶつかり攻撃してしまった際に大変なことになる。
だから…

私はチラリと後ろを見る。赤く光る目。その目の奥にはカメラがあって、そこから誰かが見ているのだろう。

機械兵を通して、この戦場を…。
















Side フレデリック


「な、なんだ?」

テント近くに雪崩れこむようにしてやってきた兵士達に思わず声が漏れた。

「フレデリック元帥…大変です…」

と息をきらして、アティリオが言う。
その隣でパコとエマヌエルがウンウンと頷いているが声は出ないようだ。

「何があった」

「何…あれは、何なんでしょう…。俺はは、初めて…見ました…」

アティリオは困ったように言った。
コレでは状況が分からない。
俺は周りを見渡す。


が、目的の人物の姿が見えない。

「ユウィリエは?」

「え…?」

俺の問いかけに、アティリオ、パコ、エマヌエルがキョロキョロと辺りを見回した。

「ユウィリエさん…もしかして…まだ…!」

アティリオが目を見開いて言う。

「そんな…」

「あんなの…いくらユウィリエさんでも…」

不安そうに顔を見合わせるパコとエマヌエル。


「アイツが死ぬわけ無いだろ」


二人が俺を見上げる。

根拠はないが、確信はある。

アイツがこんなところで死ぬわけない。

「何があったんだ、とにかく説明してくれ」

「フレデリックさん!」

三人に問いかけていると、近くでまた別の声がした。

「オリヴァー?」

身体には土がついていて、銃も持っていない。

「どうした?その格好は?何かあったのか」

「ユウィリエさんが!」

こちらの問いかけには答えず、オリヴァーはハアハアと息をする合間にユウィリエの名を口にした。

「ユウがどうした」

「フレデリックさんに、伝えろって」

「何を」

「機械兵が来た…そう言えって」

「機械兵?」



機械兵?
機械兵…?

機械兵…だと…



突如出された言葉の意味が飲み込め、俺は思わずオリヴァーの方を掴んで問いかける。

「機械兵だと?ユウがそう言ったんだな」

「はい、ユウィリエさん…情報収集するって言って…僕の銃を持って…ソイツらに向かっていって…」

「分かった、ありがとう」

俺は急いでインカムを操作する。


繋ぐのはユウィリエ以外の班のリーダー。

『はい、こちらラルフ』

『レジナルドです』

『ケネス、聞こえてます』

三人の声が聞こえた。俺は矢継ぎ早に言う。

「今すぐ、テントへ戻ってこい」

『無理です』

『すみません、元帥。今動けそうにありません』

『コッチも無理です』

どうやら、連絡するのが遅かったようだ。

『鉛色の機械がコチラに攻撃を仕掛けてきていて、とても動けません』

「すまない、連絡が遅かったようだ」

『これは何なんです!?こちらの攻撃が全く効いていない…』

『レジナルドのところもか。俺のところもだ。武器が使いモンにならなくなっている』


大将二人の会話を聞き流しながら考える。
とにかく、兵を逃さなければ…。

「ラルフ、レジナルド、ケネス。君たち以外の兵だけでもコチラに向かわせて!班長達では太刀打ちできない。狙撃兵ならなおさらだ。そのままでは、死者が出る」

『狙撃兵ならテントへ返せそうですが…班長は既に交戦していて動けません』

『コチラもです』

『同じく』

今はどうにか交戦していても、いずれ限界がくる…。さて、どうしたものか…。



『乱入するぞ、私だ。ユウィリエだ』



耳元で聞こえた落ち着いた声。

「ユウ」

『アニキ!』

『フレディ、焦ってインカムの操作を間違えたようだな。私にまで通信が入っていたぞ』

何時もなら小言の一つ返してやるが、今そんなこと言ってい場合じゃない。

『いいか、お前ら。今から私がお前らの所へ向かって、機械兵をすべて引き連れる。だから、しばらくの間、攻撃せず、逃げてろ』

『引き連れる?』

『そんなこと可能なんですか』

疑問の声が上がるが、ユウィリエは返事をしない。

「皆さん、ユウの言うとおりに」

ユウィリエが無意味にそんなこと頼むわけないのだ。
とりあえず、言われたとおりに動いてもらおう。

『わかりました』

『了解です』

『はい!アニキ、待ってます!』

「ユウ、全員が戻ってきたら連絡する」

『おー』

ユウィリエの声を最後に通信が切れた。
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