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女帝と戦争と死にたがり26
しおりを挟むSide フレデリック
続々と帰ってくる兵達を治療しながら、状況を聞いていく。
死者は多く出ているようだ。
また、機械兵の硬さは尋常じゃないようだ。
対策を練らねば…。
「フレデリック元帥。戻りました」
と最後の班の班長であるレジナルドが言った。
これで、生きている兵…は全員戻ってきたはずだ。
インカムを操作する。
『はい』
「俺だ」
『フレディ。連絡が来たってことは全員戻ったのか』
後ろでガチャガチャと音がする。追いかけられているようだが、ユウィリエ自身疲れを感じさせないし息切れしている様子もない(と言ってもユウィリエが息切れするなど稀なのだが)。
「あぁ、今どこだ」
『えーとね…。MOTHER近くにある森に向かってる』
「なるほど、そこでまくわけか」
『そのつもりだ。15…いや10分もすれば戻れる』
「そうか、待ってるぞ」
『あ、そうだ。お前も戦う準備をしとけ。機械兵は流石に私とお前で相手するぞ』
「わかってる」
ピピッと通信が切れた。
ユウィリエが、俺との共闘を望むなんて…敵はかなりの強さらしい。
数が多いのもあるのだろうが…。
俺は目を閉じて考える。
とりあえず、ユウィリエが戻ってきたら話を聞いて…これからどうするか決めよう。
そう思い、目を開けると、待ってましたとばかりにいろんな方向から声がかけられた。
ユウィリエは宣言通り10分後に戻ってきた。
「おかえり」
とテントの外で迎えると、ユウィリエはコクリと頷いた。
「お前を待っていた奴が大勢いるぞ」
「は?」
何言ってんだ?と首を傾げる彼に苦笑しつつ、
「帰ってきたよ」
とテントの中に声をかけ、俺は避けておく。
「「「「ユウィリエさん!」」」」
「?」
大勢に名前を呼ばれて、彼は何もわからない様子で首を傾げる。
「どうしたの?」
「どうしたの?じゃないっすよ!心配したんすよ!」
とアティリオがユウィリエに抱きつく。
受け止めながらもユウィリエは困惑した顔をする。
「無事でよかった…」
「すみません…俺達…力不足で…」
パコとエマヌエルが頭を下げる。
「気にすんな。あんなの前にして動けるほうがおかしいんだ」
と二人の頭を撫でるユウィリエ。
ガキ扱いしているように見える。
が、ふと考えて思い直す。
多分だが、この行動。ユウィリエが普段ミール国で行っていた行為なのだろう。
確か…19歳くらいの奴もいると言っていたし。あの総統や意外と銀狼なども甘えたなのかもしれない。
となんとなく想像する。
「あの…」
と次に声をかけたのはメアリー。
ポカンとするユウィリエを見るに、多分名前がわかってない。昔から名前を覚えるのが苦手だったっけ。
「メアリー=ホスキンズです」
それを察したメアリーが言った。
「先程は助けていただきありがとうございます」
「…?」
「ワタシも助けていただいたのでお礼が言いたかったの!」
「オレもっす!」
とロベルティナとドミニクが口を挟むが
「…??」
どうやら何を言っているのか分からないようだ。
困惑した顔を俺に向けてくる。
どうやら、そろそろ助け船を出すべきなようだ。
「君たち、もう良いだろ。ユウ、テントに入れ。作編会議だ」
「あぁ」
と、アティリオの手を退けてテントに入るユウィリエ。
俺とすれ違う際に小さく
「ありがとう」
とユウィリエが呟いた。
「アレは何なのです?」
とテント内で待っていたレジナルドが言った。
隣でラルフ、ケネスも頷いている。
「アレは機械兵ってやつだ。聞いたことあるか?」
「機械兵?」
レジナルドはハッとした顔をしてわかっているようだが、ラルフ、ケネスはサッパリ分かっていない様子だ。
ユウィリエが手短にMOTHERで造られた兵器であることを説明する。
「攻撃してみたが、銃弾は通らないし、ナイフもこの通り」
と柄だけになったナイフだったものを地図の上に出す。
「手榴弾も効いてなかった」
「今ソイツ等はどこに?」
「森でまいて、対象が居なくなったからな。またこっちへ向かってるんじゃないかな」
「ここへ来るのも時間の問題ですね。どうしましょうか…」
俺とユウィリエ以外が顔を見合わせる。
「私とフレディで相手する。お前達はココで怪我人の手当でもしてな」
「え?」
端的に伝えるユウィリエにケネスが声を漏らす。
「アニキ、流石にアニキとフレデリックさんでもアレを二人で相手にするのは…無茶ですよ」
「大丈夫」
「でも」
「大丈夫だよ」
頑なに大丈夫と言い張るユウィリエに、何か言いたげな三人。
まぁ実際大丈夫だろう。
「勝算はあるのですか?」
「ある」
「何を根拠に、武器が何も通じないというのに」
「…」
この質問には確かに答えにくい。
「ケネス、ラルフ、レジナルド。俺とユウを信じてくれ。必ず勝つから」
三人は何か言いたげな様子は変わらないが、小さく頷いた。
三人に他の兵のもとへ行くようにいい、俺とユウィリエだけが残る。
「10分後出よう」
「あぁ」
端的にそれだけいうとユウィリエはテントから出ようとして、止まり、こちらを向いた。
「なんだ?」
「2つばかし言い忘れた」
「?」
「アレ忘れるなよ」
何かはわかっているので
「流石に忘れないさ」
「あと、」
「ん?」
「電話貸してくんね?」
「は?」
「電話。あるだろ?」
「城の中にあるよ。自由に使ってくれ」
「分かった」
そう言うと足早に彼は出ていった。
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