Red Crow

紅姫

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女帝と戦争と死にたがり28

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Side ユウィリエ


「なるほど…黒猫に」

なぜ機械兵が止まったのかを説明するとフレデリックは、動かなくなったソレを見ながら言った。

「教えてくれりゃよかったのに。そうしたら、お前一人でも良かったじゃないか」

「いつ終わるかもわからないのに希望をもたせるのは気が引けてね。一人でどれくらい相手できるかもわからなかったし」

「…その割にもうすぐだと言ってたじゃないか」

「直感だ」

胸を張って応えると、フレデリックはポカンとした顔をして、次いで溜息をついた。

「お前はそういう奴だった…」

その言葉にシシッと笑い、口を開く。

「教えなかった理由はもう一つあってな」

「なんだよ」

「なんだと思う?」

「おい…烏」

「ここでは、烏呼びは禁止だろ、フレディ」

私は笑いながら、ナイフをしまう。
その動きを見て、私が言う気がないことを察したらしいフレデリックはウーンと首を傾げた。

「困ってる様が見たかったとか?」

「私はそこまで性格悪くないぞ」

ひねり出したであろう回答を一蹴し、一度テントへ戻るべく歩く。

その後を歩きながら、未だ考えているフレデリックを見て、私は口元に笑みを浮かべる。


分かるわけない。どんなにフレデリックが頭が良くても





“久々にお前と一緒に戦いたかった”






なんて私の思いは



絶対に言ってやらない。











「この後はどうするつもりなんだ?」

答えを出すのを諦めたらしいフレデリックに私は聞いた。

「MOTHERが一般兵を出さなかったのは機械兵が居たからだろう。その機械兵が動かない今、MOTHERが一般兵を出してくるのは確定事項だ。

こちらも兵を総動員する」

「なるほど。お前も前に出るのか?」

「ヤバイ敵も出てくるだろうからな。お前が言っていたあの5人がそろそろ戦場に現れてもおかしくない」

「それはそうだな」

「お前は?」

「私?私は…」

その場に立ち止まる。隣を歩いていたフレデリックが不思議そうに振り返った。

「もう少ししたら、MOTHERに乗り込む」

「そうか」

一度頷き、フレデリックは首をすくめた。

「何を狙っているかは知らないが頑張れよ」

「頑張れって…普通そこは気をつけろ!とか死ぬなよ!とか言うところじゃないのか?」

「言わなくたって気をつけるし、死なないだろ、お前」

また首をすくめてフレデリックはさっさと歩き出す。


「待てよ」


と私は小走りでフレデリックを追いかけた。















テントへ戻り、フレデリックが他の兵に指示を与えているのを聞き流しながら、私は暫しの休息とばかりに地面に腰を下ろしていた。

カラー武器を使うのは疲れる。
普通の武器とは違うため扱いに気をつかうのだ。
フレデリックも疲れているだろうに…元帥ってのは大変だなぁ。
そんなことを思いながら空を見上げた。

戦い始めたときはまだ青かった空が、今では薄紫色になっていて、もうすぐ夜が来ることを伺わせる。

こうして戦っていると、時間が経つのが速い…。


ピピッ!


「うおっ!」

突然、耳元で聞こえた音に驚く。
気を抜いていた…気を引き締めなければ…。

「インカムから?」

誰だ?いったい…。

「はい?」

『ユウ、僕だよ』

「ルナ!?」

耳元で聞こえたルナの声。

『僕もいますよ~』

「キース?」

次いで聞こえたキースの声。
なんとも珍しい組み合わせだ。

『よかった、ちゃんと繋がったみたいだね』

「どうやって…」

『ルナさんがハッキングしてくれました』

『MOTHERのパソコン、ハッキングするよりも簡単だったよ』

何やってんだ…。

『で、どうなの?進捗は』

「…まだハービニーにいるよ」

『なるほど』

『え、どういう意味ですか?』

『あのユウだよ?普通だったらもうMOTHER内部にいるでしょ』

『あ、そういう意味ですか』

私の言葉の意味を解説してくれたルナに内心で感謝する。
付き合いが長いと色々分かってくれるもんだ。

「そろそろ、乗り込もうと思ってる」

『へー、ユウにしてはやけにのんびりしてるじゃん』

「焦ったってねぇ」

『気をつけてくださいね、ユウさん。ユウさんにもしもの事があったら、リュウさんがどうなるか分かりません』

「肝に銘じておくよ」

『バカだなぁキース。ユウが死ぬわけないし、もし死んだら、総統の命令なくたってゾムあたりがハービニーを壊滅させるよ』

『あ~、それもそうですね』

『骨くらいは僕も拾いに行ってあげるから、死ぬ時には一報寄こしてね』

「死ぬ前提で話すな」

無論、ルナが本気で言ってないことは分かっている。

『ま、頑張ってね~』

『帰ってくるのをミールで待ってます』



ピピッ



通信が切れた。

「全く…なんの為に連絡してきたんだか…」

私は大きく深呼吸し、立ち上がる。

まだ片手で数えられるくらいしか離れていないのに、懐かしく感じた彼らの声。
他国のやつと話している時よりもリラックス出来たのは当たり前のことだろう。






私には帰るべき場所がある。






「さて、行くか」

これからが、正念場だ。

歩きだそうとした私に、

「ユウ、大変だ!」

とフレデリックが焦ったように声をかけてきた。
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